Neetel Inside ベータマガジン
表紙

ミシュガルド聖典~仰~
ククイとカデンツァの三国共同平和式典

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「平和式典?」
「三国共同のですよ新聞はお取りにならない?」
「乙家は現実がわかっていない」
「襲撃の前から予定されてましたよ?」
「そうですとも、むしろ取りやめることが」
「及び腰でしょう、そうでしょう?」

三国共同の平和式典は、
ミシュガルドにおける多くの課題を
孕んだまま取り行われることになった。

事の中心である乙家にとっては
このイベントは強い意味を持つと
日程通りに行う意味があったが、
ただ襲撃から人々が立ち直れていない内には、
規模は縮小され乙家からの出席も
また各国の代表がミシュガルド開拓前線での
緊急会談を優先する中で
あわただしくするのは巡視隊や青い隊服の
ものが多くとなった。

乙家は安全圏に留まっている
そのイメージは、民心に影響を及ぼす。

「ククイ様、あまり無理をなさらないよう」

ククイは式典を広場で行うべく
設営のチェックを行っている。

「みてください! みなさん! みなさん!」
「来てくださいましたよ!」
「信じられない!」

カデンツァがククイのいる
三大国合同の大交易所にて

『カデンツァである!』

突如、街宣告知をする

『骨甲皇国の進退は
 ミシュガルド攻略
 ただこの一点のみで
 決定づけられる!
 カデンツァとともに
 進むものは前へ!』

武装親衛隊の再建ともなる足掛かりとして
市民に資金拠出を求めるのと同時に
圧倒的な声量によって
甲皇国の機械兵の指揮権を自らのものにして
ミシュガルドにおける地位を確かなものに
しようと乗り出したのだ!

「カデンツァ! カデンツァ万歳! ボーンダウ!」

「さすがカデンツァ様
 圧倒的な説得力」

パシフィカは心酔しきって
周りの賛同者たちを

「いいですか!
 カデンツァ様の言うことは絶対です
 ミシュガルド攻略は
 カデンツァ様の力なしにはありえないのです!」

平和式典の会場になだれ込むカデンツァが
率いる一派に熱狂する骨甲皇国民!

カデンツァの護りを固める一団が
壇上を占拠しようというこの時、
対するククイに手はあるのか?

「ククイ様、乙家の守りは」
「そうね、この状況では」

乙家の青い制服をしたものは、
式典会場に入れず妨害を受けていた。
もとより平和式典において
組織だった警備を行うにして
骨甲皇国に属するものが大勢を占めることは
三国協調路線をかえって刺激する可能性から
数を揃えること自体が出来ていなかった
そこにつけて
機械兵のセキュリティーホールともなる
より強い骨甲皇国の血筋を引くものの
声に従順であるという性質から、
この式典会場からスピーカーを通じて
発せられるカデンツァの怒声ともなう
数々の宣告が会場の外側にいる機械兵を引きつけて

「ダーク隊長! 駄目です!
 平和式典会場への経路はどこも!
 聞いてますか?!」
「我々は元より会場外警備を任されている
 今は市民を落ち着かせることを最優先に」
「それでは!? ククイ様はどうなるのです!?」
「カデンツァ殿も甲家の血筋
 ククイ様にうかつに手出しができるものでもない
 急ぎ会場外での手筈通りに!」
「は、はい!」
(ラライラは、位置についたか?)

ラライラが狙っているものとは?

「あらククイ様?
 壇上にはいつ上がるのかしら?」
「ちょうど式典にふさわしい随伴者を
 探していたところです、メフエ・マナカマ」

単眼の異種族である女魔法使いは笑みを

「フフフ! 多種族相互理解、素敵な理想ね!
 さあ替わって、わたしがククイ様を
 お連れするわ!」
「ク、ククイ様、このような面妖な!?」
「よいのです
 ここまでご苦労でした」

カデンツァが広場の真ん中に
設営された式典用の壇上を独占してる状態で
武装した甲皇国の賛同者と
統率を奪われた機械兵が守ってる中に

「フフフ! どいてどいて!
   ククイ様のお通りよ!」

ククイは新装された車椅子で
壇上にたどり着くべく

「カデンツァ様を前にして無礼な!
 乙家のものを上がらせるな!
 あのような一つ目と共謀するなど!」
「了解!」
市民を装った元武装親衛隊の面々が
パシフィカに呼応してククイを妨害するも
「メフエ! 投げてください!」
「アハハハ! それぇっ!」

「くそ! そんな手が」

メフエ・マナカマと一時的に協力関係となり
カデンツァの立つ壇上に降り立った車椅子のククイ
ただいわばそこは乙家にとっての墓場
今や壇上はカデンツァのものであった。

「よくも来れたものだな
 老いぼれどもにそそのかされた
 あわれなククイ、ついに亜人に身売りか」
「だれもがあなたの野心ほど若くはないわ
 カデンツァ」
「聞け! 甲皇国の獅子達よ!
 この女こそが! ぅぐ!?」

影より出でた
メフエはカデンツァのみぞおちに一撃をいれる

「カデンツァ様!? ちっ!
 暗殺者め!」

パシフィカはメフエに攻撃を入れようとするが
一瞬のち回避され逃げられてしまう

カデンツァは壇上でみぞおちをおさえて
怒声が一時失われたところで姿勢を正そうという間に

「お集りの皆様」

広場の拡声器を使って
ククイは声を届ける

「争う必要はありません
 機械兵の皆様方は
 警備に戻ってください」

(くっククイか)
しかしカデンツァは内蔵を機械化している
メフエの一撃だけでは完全に制止するには
至らなかった、再び大声を張り上げて

「笑止!
 乙家こそが
 ミシュガルド攻略における戦犯!
 獣神帝の襲撃を忘れたか!?」

「そうですねカデンツァ様」

ククイは車椅子で
カデンツァの前に

「話をしましょう」

ふたりを差し置いて壇上に上がるものはいなかった
カデンツァを信じる者は車椅子に乗った
ククイ、一人の娘にどんな力があるというのか?
もはやカデンツァの意向一つで決定が下される
その状況で策があるものとも思えず、
せいぜいの泣き言を聴いて嘲笑ってやろうとも
考えるだけの余裕が会場内の空気を留まらせていた。

「ミシュガルドにおける人々の困窮は
 獣神帝の襲撃により戻ることのできない
 立ち位置にあります、我々は
 立ち向かわねばなりません
 カデンツァ様を今日、
 平和式典にお招きしたのは
 他ならぬ、新たに計画されている
 ミシュガルドの警備隊の中心として
 立ってもらうために他なりません
 乙家もこれを全面的に支持し支援します」

「?!」

ククイはカデンツァに対して
ミシュガルドにおける警備隊の必要と
自衛の拡充のために組織を作る素案を通そうと
乙家がカデンツァを支援をすると
約束したのだ!

「見返りもなく私を助けると?」
「カデンツァ様
 ここに約束していただきたく」

「約束! 約束だと!?」

「ミシュガルドの礎として
 働いてきた開拓者たちの
 助けになると」
「当然だ!
 わたしカデンツァは
 ミシュガルドを開拓するものを
 脅威より死守する!」

会場には割れんばかりの拍手と
カデンツァを称賛する声が響く!

(今ですね)

ラライラは狙撃した
カデンツァの声を響かせる
拡声器という拡声器を破壊した!

「わたしは甲皇国に
 さらなる飛躍をもたらす!
 甲皇国民は立てよ! むっ!?」

ククイの声は会場外を広く響く
準備は整っていた。

「プリンセス・カデンツァの
 ミシュガルド警備隊創設を
 祝して!」

空砲が鳴り響く
白い鳩が飛び交い
数多くの旗がはためく
三国合同の

(三国の民が揃って
 くそっククイめ、ミシュガルドに
 わたしを縛り付けるつもりか!?)

楽隊の演奏が鳴り響き

「皆聞け!
 甲皇国が切り開き
 甲皇国が手にする富を
 なぜ、SHWやアルフヘイムに
 みすみす手渡す意味があるのか!
 むっ!?
 聞け! 私の話を!
 パシフィカどうなってる?!」
「か、カデンツァさま!?
 だめです!
 機械の故障です
 こちらの声は通りません!」

「く、ククイ!!!!!」

「カデンツァ様は
 三国の護りとして
 ミシュガルドの脅威から
 自ら盾となるご覚悟です」

「きさま!」

「三国の協調のもと
 ミシュガルドの平和と
 発展を祝して」

「おのれええええ!!」

「ボーン・ダウ!!」
砲兵がいっそう大きな空砲を
打ち鳴らし
この一幕は引く

歓声に沸く人々は
カデンツァの野心よりも
献身に対し感謝し
新たな時代に熱狂していた。

亜骨大戦期、それよりも古から根差す
甲皇国主体の軍備拡張の意図からは
大きく乖離していた。

後日
カデンツァはミシュガルド警備隊の創立の
中心的人物として
そして三国の協調の証として
大々的に報道された。

新聞社や報道機関に
乙家が根回ししていたのは
このククイからしては
たやすいことだったのだろうと
考えられる_

「と、こんなところでよかったのかい?」
「この書き方だと」
「武勇伝にはなる」
「またそういう恣意的に」

縦に開けたガラス窓から入る日差しと対照的な、
コントラストの深い色をした木目の家具の照り返し
いつものような足取りで
軍服をして車椅子の後ろから新聞記事を覗き込む

「手を回す側の気持ちを考えたことあるかい?
 ククイ」
オオカミがククイの前を右往左往する。
「アッダ?」
「市民の皮を被った狼は何も
 ゲームの中だけの話じゃないんだよ」
「そうね」
「鼻が効くからね
 こちらの持つ人員リストと照合して
 巡視隊のほうに渡しておいたよ」

慣れた手つきでアッダを制止させるが
アッダの眼孔はククイを映したまま対照的に
ほんのすこしの笑みも逃さない、むしろ
すこし悲しげな表情をして帽子を直す主に
動きを止めることで何かを問うようにしている。

「そういえば、カデンツァに対する暴行容疑で
 追ってるのは理由があるのかい?」
「レエルから話を?」
「話しやすいよね、あの子」
「パシフィカの誤解を解くため、というのは」
「カデンツァが欲してるから、無理筋とは思う」

仮にも甲皇国に属しているという立場で

「彼女の初仕事になるのかしら」
「誘いに乗ると見たね」

カデンツァに歯向かうということは

「ククイは少し休むと良い、あとのことは」
「そうね」

車椅子を押す主を追う足音も気にならない
ただ窓辺から見えたほんのつかの間の
日の明るさが少し遠のく音がした。

     

ククイ
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カデンツァ
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パシフィカ
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ダーク・ジリノフスキー
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オツシア・ラヤジェッタ(ラライラ)
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メフエ・マナカマ
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アドルファ(アッダ)
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レエル
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カール
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