「空の片隅が」
空の片隅が、その瞼を大儀そうにもちあげると、
薄明かりは濃紺の目となって、街の細部をとらえる
どうにか今、生まれたばかりの大気の下で、
風は安らぎ、涙のように冷ややかだった
時間は、私がはっと息を呑む、
その瞬間に停止する
凍った時間の感触をたよりに、
止まった川をさかのぼる
街は、夜であった時よりも、
ずっとゆっくりと、厳かに眠って、
うずくまる家々の、ちぢこまる部屋々々は、
もはや息ひとつしていない
やがて囁きが飛び交うのだろう、
小鳥の目を覚ますに十分な声で、
芝生をそよがせるに十分な声で、
時間の秘密を十分に含んだ声で
彼らは何が言いたいのだろう、
あるいは言葉にならないのだろうか、
新たに迎えた夜の終わりと、
はじめて立ち会う《時》の誕生を