「風がすべりこむ」
風がすべりこむナイフのように
おまえの肌に切りこむために
おまえの血と肉 肉と皮とを
切りわけ峻別するつもりのように
ヨハネの首と胴体のように
光と闇とが別れ別れなように
少女の赤いくちびるの
上と下とが出会わないように
すべりこむナイフ空を引きつれて
おまえと地上を押しつぶすように
土から生まれた肉なるものを
大地に還すつもりのように
おまえを地面にくっつけるように
庭のキャベツを踏みにじるように
犬と猫とをぺったんこにし
なにもかも地上の汚点にするかのように
降りそそぐナイフ光をまとい
おまえの耳を突きさすように
おまえの過去を照らし出すように
おまえを鋭く問いつめるように
おまえのいや人間すべての
つたない抗弁を弄ぶように