Neetel Inside 文芸新都
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ベル詩集
“夜”

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「なにかの重みで」


なにかの重みで、
この夜は圧しひしがれている
冷たい垂れ幕の奥で鳴りひびく、
遠い回想にとりまかれている

すると声がする――いくえにも閉じた窓の向こう、
夜の重みを手に支えながら、
秋の老木のように身を震わせる、
ざわめく声の持ち主たちが、私を呼ばわり戦慄させた
冬は白い、だが記憶の中では、それはつねに仄暗かった

すると声がする――意識をななめに切り裂く声が、
凍える手のひらで踊る声が、
だれか、女が残していった、
恨めし気な口付けの雪のような感触は、
雲の裂け目から漏れくだった、歌のように部屋をとりかこんだ

ベッドスプリングはきしむ
扉はしめやかに秘密を守る
木漏れ日のように舞い下りた鳩は、
まぶたの端で消えていた

すると私の声がする――
なにかの重みで圧しひしがれた、
この夜と地面とにできた隙間に、
わたしは朝日の一筋となって、うずくまりつつ
しのびやかに滑りこんでゆく、
今日という日を眠るために


       

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