「月と少女のポルカ」


ささくれた夜の表面をすべる
銀色の舌、名は月明かり
または砕かれた太陽のひとかけら
昨日のまなざし、すぼめた唇の中心に向かって
暗い炎の粉(こ)がつどう

星の回転に置きざりにされた
眠れぬ観衆のうちあげた気球が
社交欄記者についばまれるうち、あれよという間に
三日月となる。ネズミたちは踊り
酒盛りに向かう蛇どもの列が
いつしか夜明けを指し示す

いいじゃない、だってインドではまだ夜なんだもの
と、ひねもす舞踏会気分のご令嬢
秋波と旋律にゆれるステップを見事お披露目あそばせる
もういいじゃないか、やめにしないか
とおかんむりな父君、皮肉な笑みはケイレンギミ
眉間の谷のそこしれぬ深みに
空のグラスが投げこまれる

果実酒に漬かった会場をぬけだして、
流し目のみちびく川に辿りつき、
紙細工の小舟にあわ食って乗りこんで、
きらめくカミソリに指を這わせたら、
もう準備は万端ととのった!――あの男ったら、
青ざめた唇びくびくいわせて、こう言ったわ
――ああ、これでやっと二人きりになれたんだね、
 ぼくたち永遠に一緒にいられるんだね、
 この夜の川の温もりに安らってさえいれば、
 あの月を羨むこともなくなるんだね

――だめよ、あんたみたいにギラギラした人は、
 ちょっと望みが高すぎるかんじ、
 あたしがあの空で浮かれてるあいだ、あんたこの星の裏側で
 おとなしく指でもしゃぶってなさいな

ささくれた夜の表面ではねる
銀色にまたたくステップをごらん!
プライドを砕かれた太陽のひとかけら――昨日のまなざしは今いずこ?
意地悪な唇のかたちづくる言葉は
今夜はだれに向けられる?
さあ、次なる踊り手は? 次なる男女の狂騒は?
うかうかしてると、妬みぶかいお陽さまに踏み込まれてしまいますよ、
夜は一瞬なのですよ!

――よろしいかな?
 お手を拝借、死をも厭わざるこのマドモワゼル。
――お手柔らかにね。
 蝋人形でも扱うみたいに。
まわる、すべる、暦が変わる、
一年とは月の百面相、
百年とは跳ねまわる弦楽奏、
あたし、踊るわ、いついつまでも
この足が骨みたいになっちゃうまで
ねえ、人生ってあっというまじゃない?
このポルカよりずっと短いじゃない!