Neetel Inside 文芸新都
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ベル詩集
"人"

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「殻」


ある朝、わたしの部屋のまわりを、
流砂が雨と降りそそいでいた
黄色い雨は殻となった
雨がわたしの殻となった

いじけた殻
無精卵の殻
居心地のいい殻
冷ややかで固い殻
決して誰にも破られず、
傷つけられることもない殻
わたしの頭蓋骨に似た殻
無益なことばでいっぱいな殻
殻のための殻
空っぽの殻

誰もわたしの殻をこじ開けには来ない
そんなこと望まない、望むだけむだ
なぜって、この殻はわたしにしか見えないんだから
わたしにしか見えない絵、
わたしにしか見えない文字、
わたしにしか見えない自画像を描くための殻なんだから

ああ、それにしてもなんて立派な殻だろう
わたしはただ一人うっとりとなって、
この流砂で包まれた果てしなく広い部屋のなか、
得意になって散歩しながら、
叩くと心地好い音をひびかせる、
わたし自身の殻になりたいと願う



       

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