月光を浴びながら、彼は左手に鍵を、右手に笏を持ち、深い谷の門を守護する。
過去と未来。
理と情。
愛と憎悪。
そして、始まりは訪れ、終わりがやってくる。
永劫回帰の中、廻り続ける歯車はやがて錆びて朽ちる。
現在も未来も過去と一緒くたになって、混沌としたマトリクスに堕ちる。
ゆえに、前向きの貌と、後ろ向きの貌を持ちながら、彼は正面を見ようとしない。
反転するのではないかという不穏さを漂わせながら、彼は変わらず境界に居続ける。
まもなく月が隠れ、始まりが訪れる。
彼の貌には狂気が息づき、そのときを待つ。