イザヤはいつも通り饒舌だった。

 まるでツァラトゥストラのように、時に自問自答し、時に詩を歌い、予言とも虚妄ともつかない言葉を情熱的に話し続けている。

 午後二時頃にシグレがイザヤの元に訪れてから、既に四時間が経っていた。

 辺りはすでに暗くなり、昼に買ったハンバーガーもすっかり冷えてしまっていた。自分は世界一の聞き上手とも言われてもよいとシグレは思った。

「よいですか。自分の宿命に敏感な者は、その宿命をどう表現するかに関心を持っています。死活を賭けた選択問題が自分において発生するように、自分の生を追い込んでいくのです。」
「まるで、自然に死ぬことを嫌がっているみたいだな。」

「その通りです。自然な死の一本道に入ってしまったとき、既にそれは死といえるのです」
「ふむ。少し話を戻すが、その宿命を自覚するときはいつだ。」

「一つは自分の精神の展開力が限界を迎えたときです。その際に、自分の精神は軌跡を辿った末に終わらざるを得ないと了解したという意味で宿命を自覚します。二つ目は肉体が死に直面する場合です。どういう形態の死を選び取るかという決断の中に宿命を自覚するのです。」
「死の選択が宿命を形容している、ということだな。」

 シグレは、紙袋から冷えきったハンバーガーを取り出すと、イザヤに向けて放った。
「イザヤ、まだまだ話足りなさそうだが、そろそろ時間だ。」

 相変わらずイザヤの姿は見えないが、受け取ったハンバーガーにすごい勢いでかぶりついている様子だった。
「今日もまた、売春婦が消えた。それも未成年だ。所在が知りたい。」
「承りました。」

 イザヤはごくん、と喉を鳴らした。

「拒否され、ざらついた言葉の真実に直面させられ、赤い屍は彼女にはないものを贈るでしょう。鳥像の近く、青々とした風蝶木の蕾の壁で。」

「柏松公園か。だが、彼女は生きているのか、それとも死んでいるのか。」

「貴方のご判断次第でしょう。」

「解った。急ぎ向かうことにする。」

 消えた少女は、まだ未成年だったらしい。

 十五歳のときに両親と絶縁して仙台から上京し、「職場」で寝泊まりをしていたと聞いた。

 自分にはどうでもよかった。被害者を救うことなんて微塵も考えていない。だが、シグレには会いたい男がいた。彼はそういった現場に来る。

「いってくる。イザヤ。」
 イザヤは、もういなかった。