「常に酔っていなければならない。

それこそは一切、それこそ唯一の問題である。

汝の両肩を圧し砕き、汝を地面の方へと圧し屈める。

怖るべき時間の主に感じまいとならば

絶えず汝を酔わしめてあれ。

さらば何によってか?

酒に酔って、詩によって、はた徳によって、

そは汝の好むがままに。

もし時として、

宮殿の石階の上に、濠端の緑草の上に、或いは室内の陰鬱なる孤独の中に、

汝が目覚め、既にして陶酔の去って消えゆく時、

かのすべて過ぎゆくもの、嘆息するもの、流転するもの、歌うもの、語るもの、

風に、浪に、星に、鳥に、大時計に、問え、

今は何時であるかと。

その時、風と浪と星と鳥と大時計とは汝に答えるであろう。

今こそ酔うべき時なれ!

虐げらるる奴隷となって、時間の手中に堕ちらざるために、

酒に酔って、はた徳によって、

そは汝の好むがままに、酔え、絶えず汝を酔わしめてあれ。」


 数えきれない星の下で、イザヤは詩っていた。

 薄汚く狭い路地の奥、影の間の影にイザヤはいる。

 北の空に赤く光る凶星が、南へ一直線に流れていくのが見える。

「酒に対しては当に歌うべし、とあるが、酔うほど楽しいことでもあったか?」

 旧友の男が話しかけてきた。イザヤは酒瓶を地に置くと、闇の中から現れ出でた。男は以前より太っているように見えた。

「酔わずにはいられない。そして、貴方もまた美酒に酔っている。」

「イザヤよ。我は昨夜星を見た。すると、北に赤き凶星は瞬き、銀の虹が掛かっている。西に白き星が生まれ、東の碧き星は死んだ。我にとって、これは吉となるかを知りたい。」
「貴方にとっては関わりのないことでしょう。それに、貴方の星は、他の群星と群がらない。貴方は貴方自身の手で天に輝く。」

「ああ、お陰で安心した。」
 男はふふっと笑うと、胸から純金製のネクタイピンを外し、イザヤに向けて放った。

「また、来てもよいか?」
「来ないで戴きたい。私には新しい主人がおりますから。」

「我はお前を捨てた訳ではない。あれはほんの行き違いだ。我には、お前が必要だ。」
「帰ってください。今の主人に見られては、私は仕置きを受けてしまいます。」

 男は微笑んだようだった。そして背を向けると、言った。
「聞け、イザヤ。お前が言った通り、我は我自身の手で事を成し遂げるつもりだ。そして、光を照らし、闇を消し去る。我が望む世界はお前のような者の類が生きられぬ世界だ。」

 旧友は去った。イザヤは酒瓶を片手に詩いだした。


「ご覧、その時が来る。
茎を震わせて香炉の中で花たちは芳香に変化する。

音と薫りが夕暮れの空気の中で回る憂鬱なワルツと憔悴の眩暈となって。

香炉の中で花たちは芳香に変化する。

ビオロンは苦しむ心のように震える。

憂鬱なワルツと憔悴の眩暈となって。

空は巨大祭壇のように悲しく美しい。

ビオロンは苦しむ心のように震える。

柔らかな心は広大な虚無と夜を嫌い、空は巨大祭壇のように悲しく美しい。

そして太陽は血の中に溺れて固まる。

柔らかな心は広大な虚無と夜を嫌い、まばゆい過去が全ての足跡を集める

そして太陽は血の中に溺れて固まる。

僕の中の君の記憶は聖体の皿のよう。」