Neetel Inside ニートノベル
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SIGURE The 1st Opera
散華の章

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 闇と夜の間に生まれたその子は、櫂を持ち、襤褸を着て、波止場に立っている。



 彼は昼夜を問わず、獣皮と縫い合わせた小舟で、死者の霊を彼岸へと運んでいた。



 憎悪と悲嘆に荒れた暗き河を、妖しく光る眼が照らす。



 銀貨一枚の報酬を得る為に、彼は何度も暗黒の河を往復する。



 ところがある日、彼は突然取り乱し始めた。



 狂乱した混沌が吼え猛り、下界に渦巻く因果によって河が氾濫を起こすという。



 当初、神々は信じなかった。だが、オリュンポスの宮殿に黒き水が染み出したとき、神々は嘆息した。それは哀悼の為でも、同情の為でもない。天罰を与える為だ。



 七日と七夜、下界に放流された黒き水は、世界を洗い流した。

       

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