Neetel Inside 文芸新都
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 鉄格子の奥のエリアには何十人かの患者さんがいた。60〜70代くらいの人が多そうだ。大半の人が上体を腰から折り曲げ、額を床につけてへたり込んでいる。掃除をしている人もいた。
膝を抱えてうつろな目でずっとちっちゃく揺れてる女の子…彼女が一番若そう。二十歳位かな。 
「あんた、今日初めて来たの?なんにも持ってないでしょう?これあげるわ」そう言ってポケットから乱雑に折りたたんだチリ紙の束をよこしてくるオバちゃん…「あぁありがとぉございますぅ・・・」と受け取ったけど精神病なんだろうなぁ・・・こんな気の狂った人たちと一緒にされるなんて・・・正直、そう思った。

 看護師が左手にあるナースセンターの前で「私達ここにいるから、何かあったら言ってね。」と言って去った。この鎖された空間の中には・・・わたしの記憶では病室が4つあった。すべて畳の敷いてある和室で、ベットが2つ置いてある部屋が一箇所ある。
入って一番手前右側の部屋が私が居て良い場所らしい。たたみ十数畳ぐらいの和室に、10名ほどの患者さんがいる。
古びた大型のエアコンが備えてあるが稼働してないのか、とても寒い。特に足元が。私は、着ていたパーカーを脱ぎ、袖部分に足を突っ込んで丸まった。
「リョーさん、私が初めてココに来た時と同じことしてる〜」部屋にいた同世代くらいの女性がそう言って笑った。名乗った覚えはないが、なぜか私の名前を知っていた。
「今日来たんじゃーなんにもないよね。これ、私のだから使っていいよ。」パラソルハンガーに掛かった“まなみ”と書いたフェイスタオルを指差して彼女が言う。まなみさんは夜になった時も「わたしの隣で寝る?」とか、やたらと世話を焼いてくれていたので、本当に隣で就寝するまで実は職員なんじゃないかと思っていた。私の名前も最初から知ってたし。

 ベッドでおばあちゃんが「ちょっとアンタ〜、トイレ連れてってー!」と叫んでる。ナースセンターを覗くと、3人でお茶を飲んでいる。
「呼ばれてますよ」と、声をかけると、一人の看護師に「・・・…今、休憩中ー」と、憮然とした口調で言われた。数秒無視された後に。
    ーーー何かあったら言ってねって言われたんですけど…。
別の看護師が出てきてベットのある部屋へ。
「オムツしてるからいいのよーしちゃって。ここですればいいから〜」寝たきり老人のようだった。もう1台のベットにも高齢者が寝ていた。
さっきの車いすの人といい、寝たきり老人といい、こんな厳重に鍵のかかったスペースに閉じ込めておく必要なんてないのに・・・。
「ここは家族に捨てられた人たちが来る場所なんだよ」ある看護師がポツンと言った。
「こんなトコに居たら誰でもおかしくなるわ」と、言葉を続ける。
ここでは患者さんを人道的に扱ってないと感じる看護師を彼女を含めて2、3人見た。自分たちのことを言ったのかな・・・。

       

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