Neetel Inside 文芸新都
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脳内麻薬が氾濫したら・・・
投薬治療

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 父が亡くなってから2回目の春が訪れていた。
抗うつ剤を飲みだしてからは…気分は良くならないが、生きてはいられるような感じくらいにはなった。
手のしびれは治まったが、顔先のしびれはまだ残っている。しゃべりにくくて、会話も楽しくない。
食べづらいので食事も苦痛だ。でも、ピークの頃よりかは、はるかに食べられるようになっていた。
去年の病前の3分の1くらいは食べることができていたと思う。

1日1錠のサインバルタで1〜2ヶ月後、ここまで回復できた。
元気になるまでこの薬の量を徐々に増やしていくものらしいが、そうしてしまうと止めるのがとても難しくなりそう。
「最初は1錠からで、良くならなかったら2錠・3錠まで数ヶ月かけて増やしますね」そう医者に言われていた。
1日1錠から服用して、だんだん増やしていきますと、リーフレットにも説明書きがあった。

     

 元気は出ないが、生きていられそうな感じにはなったので、「1錠のままで大丈夫です」と、診察の時に申し出た。
安定した軽いうつ状態……この感じのうちに、また仕事を始めようと思った。
一生抗うつ剤を飲みながら生活するのは嫌だったので、生き甲斐や楽しみを作って断薬ができるようにしたかった。
仕事があれば気を張っていられるので、鬱々としてもいられないだろうと思う。

     

 以前やったことのある仕事が安心なので、一番経験の多い飲食業にした。
近所のこじんまりとした店。
料理を作る店長と、運ぶ私の二人でまわる小さい店で、ランチタイムの3時間くらいの勤務だった。

それなりに疲れはするが、この仕事は続いた。
出勤時間までの数時間を生き潰すことがまだ苦痛な感じではあったが、以前みたいにたまらず首吊る程ではない。

テレビは相変わらず見られないが、生きることは我慢できた。
出勤時間までは、横になって目を閉じて耐え忍んだ。

       

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