虚無

 病院スタッフたちは、鉄格子の扉の解錠→扉開け出る→扉閉める→鉄格子施錠→鉄の扉を解錠→扉を開け出る→扉閉める→扉の施錠
という手順でみな出入りしていた。この出入りの瞬間にだけ少し閉鎖エリア外のエレベーターホールが見える。
出入りできるのはこの扉だけかと思っていたが、食事の配膳で使っている大きなワゴンをこの方法でこのエリアに入れるのは不可能だと思う。
縦3メートル以上はありそうな大きなワゴンだった。
鉄格子の先は病室4つ、診察室、ナースセンター、トイレ洗面台スペースだけでつきあたって全てだと思っていたが、ほかにもあるかもしれない。特に入って左手の方はよく覚えてないし・・・曲がって入る廊下があったかも。
皆がどこでお風呂に入ってきているのかも謎だ。
 病院スタッフの出入りの瞬間にだけ少し鉄格子越しに閉鎖エリア外のエレベーターホールが見えた。この瞬間、外の世界への憧れが強く沸き起こった。
何が欲しいとか、何が食べたいとかは一切思わない。
ただ、この“檻”から出たい・・・。
エレベーターホールを歩いている人たちがとてつもなくうらやましい・・・

 精神病とは全く思えない人たちまでもがたくさん閉じ込められて暮らすこの世界。私はここで不当に虐げられながら一生暮らすのか・・・?
ーーーせっちゃんが洗濯した服を干す時に 見えた窓の隙間の外の世界は 輝かしすぎて・・・宇 宙 の よ う に 思 え たーーー
 眠りたくても夜9時の就寝時間になるまでここでは布団を敷いてはいけないことになっている。
入院二日目の夜は8時頃から眠くて仕方がなかったが布団を出すのを許してくれない。必死に眠りたいのを訴える。
9時15分前位になると根負けしたのか、「まぁいいやー・・、もうすぐ9時だしぃー・・。」
と言って許しえもらえた。
 ここへ来て2回就寝した記憶があるが、起床した記憶は1回しかない。2度目に私が“目覚めた”と認識しているのは・・・・・。


sage