Neetel Inside 文芸新都
表紙

ザ・ワールド
第壱話「邂逅」

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僕の名前は神崎一九、大学生、19歳、でもほとんど大学には行ってない。

まぁ世間一般で言う引き篭もりってやつだ。
いや別にニートとかそういうのじゃない、ちゃんとバイトはしてるし、あ・・これじゃあ引き篭もりにはならないか。

ただ面倒くさいだけ。

中学三年の時にクラス全体からいじめを受けてから僕はそうやって現実から目を背けてきた。

「良い大学にいけば、良い会社に就職できて、良い人生を送れる」
そんな親の敷いたレールの上をひたすら走っていたら、いつの間にか全国で1,2位を争う大学に入っていた。
親は泣いて喜んだ、でも僕は―何も感じなかった。

いじめは僕の心の奥底まで浸透していたのだ。
気がついたら上靴が無くなっていたり、授業をサボってトイレで本を読んでる時も
いきなり上から水やトイレットペーパー、モップが落ちてきた事もあった。


しかし僕は我慢した。
親にも言わなかった先生もあてにならない誰にも助けを求めなかった。

僕は――そろそろ限界だった。


それで何故中学三年でいじめが終わったかというと、
高校一年の初めに事件が起きた。
トイレで用を足していると三人がかりでいきなり殴られた。
まぁこれはいつもの事だったし、僕はいつもの様に我慢しようとしていた。

が、

1人が僕のポケットから落ちた一枚の写真を手にとった。
それは昔死んだ妹との思い出の写真だ。
僕のたった一つの宝物。

「なにこれぇーまぢでお前ロリコンやろ?
 こんなん持ってっからいじめられんだよォ」

そう言ってそいつは僕の目の前で写真を――破いた。


そして僕はその時、自分の中で何かが弾けた様な気がした。
気がついたらそいつを睨み付けていた。

「アァ?てめぇ何ガンくれてんだコラァ!」

僕は一瞬、目の前が真っ暗になった。
そして目を覚ますとそこには

三人の屍があった。

何が起こったか分からない、何をしたのか分からない。
僕はその場から逃げ出した。
そして教室に戻ると 


クラス全員の憐れな屍があった。


皆、何かに押しつぶされた様に死んでいた。



「何が、何が、起きたんだ・・・」
僕はそう小声でつぶやき家へと走った。
布団に篭もり、ただひたすら震えていた。

そして数日後警察から事情聴取を何度か受け、僕は転校する事になった。
犯人は誰か分からぬまま・・・


新しい学校では何事も起こらず、平穏な日々を過ごしていた。
そして高校を卒業し、大学に入って今に至るという訳だ。

このまま普通に生きて、普通に死にたかった。
結婚もしなくていい一人でいいから桜の花びらが散るように静かに死にたかった。


どうやら神様はそれを許してはくれなったらしい。
残念ながら。

     


今僕は東京都千代田区神田のとあるコンビニのバイトの帰りだ。
そして目の前には桃色の髪をした少女が一人、キツイ目つきで僕を睨み付けて言う。

「私と一緒に来なさい、神崎一九」
「は?あ・あのーどこかでお会いしましたっけ?」
「そんな事はどうでもいい、来いお前は神に選ばれし能力者だ」
「あのー僕宗教とかそういうの信じてないんで・・結構です」
僕はとにかく丸く事を収めようとした、しかし少女は
「我ら『白』は、お前の存在を待っている―今選べ私について来るか、そのまま生涯を遂げるか」

「ちょ・ちょっとアンタ何言ってんすか、さっきから『白』だとか『神』だとか」
「そうか・・残念だ、じゃあ死ねッ!」
突然目の前から少女が消えた、

次の瞬間腹に激痛が走った、しかし誰もいない。
何故か血が出ている―どうなってんだ?

僕は意識が遠のいていくのを感じた。


「あれ?僕死んだのか・・・」
周りを見渡してみるとなんらさっきと変わらない世界、
変わっている点と言えば目の前には桃色の髪の、そこらのアイドルじゃ足元にも及ばない女性が立っていた。
これだけなら「ウホッ・・」って思うかもしれないがこの女性、腕が無い。

「へぇーそれがあんたのコッチでの姿?」
・・何言ってんだこの人僕はなにも変わっちゃ・・・

!?

さっきまで着ていたユニクロで買った上下は黒のスーツとなっている。
僕は状況を把握できないまま、呆然と立ち尽くしていた。


「まぁいいわ、死になさい」

その瞬間目の前にいきなり腕が現れた。
そして僕の頬にめり込む。
痛み、というより恐怖の方が勝っていた。

「痛くないように逝かせてあげる、英雄さん♪」
そう言って微笑み、消え、目の前に突然現れ、僕の事を、殺そうとした


次の瞬間


燃え盛る炎のような髪色の女が突如として現れ、
一瞬で僕の目の前の化け物を細切れにした。

「待たせたね♪」
誰も待っちゃいないが僕の命が助かったんなら有難い。
「あの・・アナタ達、何者ですか?」

(この子、まだ能力がはっきりと発現していないようね。
 その証拠に服は変わっているけど、まだ「もう一人の自分」を抑え込んでいる)
「えーと、とりあえずこいつとあたいを一緒にしないで、
 こいつは『白』の奴、あたいは『黒』の藤崎紀伊よろしくね。」
「ハァ・・ところでさっきの奴も言ってたんですけど『黒』とか『白』とかなんなんですか?」
「えーとね、今君のいる世界は「ザ・メンタル」精神上に存在する世界よ。
 そして君の姿は現実世界とは違うでしょ?それは能力者の証なの。
 その能力者の集まりが『黒』と『白』。今戦争してるわ。
 そこであたいに命じられた使命が『能力者』を探してくる事、だからアナタ一緒に来て」

「え・でも・・僕帰りたいんですけど」」
「来ないと死ぬよ、絶対。
 またあんなのにボコボコにされれちゃうよ?」
「えッ・・じゃあ行きますッ、行かせて下さいッ!」
「ハイハイ、じゃあついてきて」(ッたくこんなのが本当に英雄なのかよ・・)

着いた場所は寂びれた廃ビル
こんなのが本当にいわゆる「黒」の本拠地なのか?と疑わざるを得なかった。

奥に一人の白髪の男の人がいる。
いかにも怖そうな感じの人だ、そしてその男はゆっくりの口を開いた。

「待っていたよ。私の名は内藤白秋、この『黒』の指導者とでもいっておこうか。」
「は、はい初めまして、ぼ・僕は神崎一九と申します」
なんで僕こんなにペコペコしてるんだ、やってて嫌になった。
「君の力を貸して欲しい、答えがNoなら世界は終わるがな・・・多分」
「はぁ?」


僕は目の前が真っ白になった。


次回「第弐話 能力」


あとがき
コメント、有難く読まさせて頂きました。
非常に参考になります、ありがとうございますorz
今回は、この物語の主人公にあたる「神崎一九」にまつわるエピソードと、
その能力の片鱗を前半に、
後半は「白」が一九を先に奪おうとした所を
前回の赤髪の女が助けてくれるというのを中心に書いてみました。
何かご指摘あればコメントからお願いしますorz
それでは次回もお楽しみに~♪

       

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