荒れ狂う風雨の中で、自分に名前がない、と泣き叫ぶ幼子がいた。
創造神と暁紅の女神の間に産み落とされた子で、憤怒相と多腕を持ち、その咆哮は、まるで吹き荒ぶ風の轟音の様だった。
周囲を暗褐色の肌をした野獣達に囲まれ、幼子は、一層大きな泣き声を上げた。
その声は天と地の間、果てしなく広がる山河に響き渡り、万物を破壊した。
その声を、人々は畏れ、または敬った。
そして、自らの破滅を避ける為に、その幼子に名を与えた。
吼える者、と。
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