Neetel Inside 文芸新都
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要するに短い話なんだよ
なん……だと……?

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 俺は今スーパーに来ている。住宅地に近い、小さなスーパーだ。外を見れば日が暮れようとして何……だと……? そう、既に晩飯の時間となっている。つまり、俺は今とてつもなく急いでいるわけだ。
 急いで食材を買い、急いで飯を作り、家で腹を空かせて待っているであろう家族に飯を何……だと……ッ! そうなのだ、腹を空かせて待っているのだ。だから急がなくてはならないのに、なのに、何を作るのか全く考えないで来てしまった……何、だと? 急がなくてはならない。

「何……だと……? バナナが一房九円……だと……!?」

 それはともかく、無難な線として俺はカレーを作ることにした。何、だと……ッ!? ならば何故俺の買い物かごにバナナが入っているのだ。
 色々と違和感を感じなくも無いが、今はスピードを重視しなければならない。売れ残りを狙うパワフルなおばさんの波に逆らうほど、時間に余裕は無い。
 何、だと……? いや、なんでもない。とりあえずルーを入手。玉ねぎとニンジン、ジャガイモは既に買い物籠の中にある。何、だと……ッ!? そうだ、肉を買わなければ。

「なん……だ、と? 挽肉しか、ない……だと……? しかも牛豚合挽ではなく、鳥の挽肉だと……? カレー……だぞ……?」

 どこをどう見ても俺の目の前には鳥の挽肉しかなん……だと……? たった今鳥挽肉すらもおばちゃんが持っていってしまった。
 仕方なく俺は急遽シーフードに移行した……だと……? うん。

 
 次のターゲットは肉の代わりになるものだ。焼くのなら畑のステーキなんぞで代用してもいいのだが、残念ながら今回は煮て煮て煮まくるつもり、だと……? だから無理だろう。
 そこで選択肢に挙げられるものはイカやエビ……だと……? 他の素材は生臭いんだ。夏場で生臭いものを煮込むと大変なことになるだと……? なるんだ。

「なん……だと……? 地球温暖化で魚介類が激減……だと……?」

 俺の目の前にはそんなことを書かれた紙が一枚。魚介類がいつも置いてある場所には、物悲しい雰囲気を放つ氷があるだけ。
 いや、なんだと……? ブリの頭だけが転がっている。カレーにはどこをどうしたって使えそうにはない。
 色々と悩んでいる内に、いつの間にやら店内では蛍の光が流れ始めた……だと……?

 それはともかく、俺は肉じゃがを作ることにした。


おわり     だと……?

       

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