Neetel Inside 文芸新都
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(ちゅうい ! この おはなし は たしょう じゅうはっさい みまん に
そぐわない ないよう が あります !  みるひと は かくご を もって
よんで ください !)




 世界を二元化することは出来ないけれど、それでもわかりやすく説明するときはそれを余儀なくされることが多々ある。それは極論とも言われるが、それでも“善い”・“悪い”の二種類で考えることは決して間違ったことじゃない……基準さえ誤らなければ。
 自分を基準にすると、社会に反してしまう場合が多い。それは自己中心的と言われたり、刹那的な快楽を求めていると言われたり。つまりは、あまり推奨されない基準である。
 いつか説明した群れ。群れは少数の反分子を除くことで均衡を保っているといえる。とどのつまり、群れで生活しているからには“群れの基準”に則って行動しなければならないということになる。しかし、それは人間以外での話だ。
 人間は高次に位置する存在じゃないにもかかわらず、無視できない程の知性を持ってしまった。十人十色の考え方、個性、行動がある。そこに生まれる基準とは、はたして如何様なものなのだろうか。異端を排除するか、純粋なる弱肉強食か。愚かにも人間という種は他の動物と変わらない、規律で支配する群れを選択してしまった。結果、知性があるゆえに生まれる数々の磨耗と葛藤。
 どのような基準を寄り代にしていいかわからない人々。それらの人は大抵、受動的に定められた規律に従ってしまう。……この世は受動的な人々で満ちているからこそ機能しているといえる。
 じゃあ、その規律に反すると判断された人はどうすればいいのだろうか。それは、無い。“どうすればいい”、なんていう模擬的な例は規律に反していないからこそ与えられるものであって、反分子にそもそもの社会的人権は皆無に等しいだろう。
 世界を二元化することは難しい。善し悪しで計ったとしても容易いことではないということを、僕は理解しているつもりだった。――その少女に会うまでは。




「あら、一昨日に続いて今日もお客さん? ……こんばんは、おにいさん。今夜はいい新月ね」
 そう言うと彼女はワンピースの裾を持ち上げ、映画の中でしか見たことが無いような挨拶を僕に向けた。
「あ……」
 言葉が出ない。普通ならばここでパニックに陥ることが正解なんだと思う。しかし、彼女の“瞳”を見てしまった。いつか見ることを焦がれていたその色に、僕は感動とも言える感情を感じている。
 金色の髪が地面まで垂らされ、かといってそれが汚れているわけでもなく。山の中だというのに靴を履かず、かといって汚れているわけでもなく。……そう、彼女は美しい。その言葉が自然と浮かび上がるほどの神々しさを辺りに放ち続けていた。
「なぁに、怖すぎて声も出ない? これだから人間って愚かしい。不条理に恐怖を感じるなんて」
 機嫌が悪そうな口調なのに、顔は少しも不機嫌さを見せない。見るからに幼い容姿だというのに、その表情はある種の妖艶さを秘めている。
「……ちょっと、ほんとに私が怖いだなんて言わないわよね?」
 その妖艶さがふっと消え、途端に年相応の雰囲気になる。
 なんなんだ、この子は。落ち着け、落ち着け僕。確かに彼女の瞳は気になるけれど、それよりも気にしなきゃいけないことがあるだろう。例えば、彼女の素性とか。
「君は、その、誰ですか?」
「誰……と言われてもねぇ。なにを以って誰とするのかがわからないわ。強いて言うなら、人間じゃないことは確かねぇ」
「人間じゃ、ない? 何をふざけて」
「何をふざけたこと、ね。これを真実と取るか虚偽と取るかあなたにまかせるけど、私、嘘は嫌いなの」
 素性を知ろうとして、ますますわけがわからなくなってしまった。
 何を言っても理解が出来そうにないと思えてしまうこの空間、あぁ、確かにTPOを考えると人間とはとても思えない。しかし。
「あらあら、もっと怖がらせちゃったかしら。そうよねぇ、こんな山奥で人間以外のものと出会ったら怖いわよねぇ」
「その、別に怖くはないんです。どうでもいい理由でびっくりしちゃっただけで。人間じゃない、と言うけどそれはどうでもいいことなんです」
 そう言いながら、僕はまだ彼女の瞳に見入っていた。深い悲しみを湛えているようで、それでいて悲壮感を表すことなく。一目見て美しい色だと感じた。
 そんな僕に不信感を抱いたのか、彼女の顔が若干険しくなる。
「あなた、なに?」
「なに……と言われても。それこそ何を以ってなにとするのかわからない。強いて言うなら、人間だということは確かです」
「へぇ」
 先程のまでのからかうような仕草から一転、探るように僕の体を視線が嘗め回す。その目は肉食獣を思わせるかのように、爛々と輝いている。
「あなた……気は狂っていないようね。中々どうして、世の中は不条理だらけってことか」
「初対面の人に気が狂っていると言われる道理はないですね。それはそうと、君は何故ここに? 君みたいな子がこんな山奥でうろついていい程、この時間の山は優しくないですよ」
 素性を知ることは最早諦め、この場に収拾をつけようと図る。確かに彼女と話し続けることは魅力的だが、それでもこの体が……あれ。この体が、そう、この体だ。
「何故、はお互い禁句としましょうよ。答えが返ってくる気がしないわ。私も含めて、ね」
 やはり、味がしない。無味の声。これが当たり前なのだろうとは思う。しかし、そうかんたんに受け止められる事実ではない。
「君の髪は金色かい?」
「な、なによ急に。疑問に思えるほどの金髪だと言いたいわけ? さすがにそれはレディに対して失礼だと……」
 あぁ、なるほど。確かに僕は気が狂っている。僕が見えている彼女の“色”は、正真正銘の真実、つまりは一般常識に当てはまる感覚を僕は感じてしまっているらしい。
 それはありえないこと。そう、ありえない。非常識の中で生きてきた僕にとって、常識である彼女こそが異端。
「君はおかしい存在だね。僕にはそれがわかってしまった」
 その異端がゆえに、彼女が言う“人間じゃない”という言葉が真実味を増す。
 疲労した果てに見た幻だろうとなんだろうと、この状況はまずいと言える。幻覚だったとしたら僕は既に末期状態だ、衰弱死してもおかしくない。反対にこれが現実だったとしたら、だったとしたら……。
 じっと、彼女を正面から見据える。僕の言葉に返答するわけでもなく、ただ僕と同じように真っ直ぐ視線を向けてきている。
 彼女がもし僕に害をなすとして、それで僕はどうするというんだ。肩に下げた猟銃で撃つ? 馬鹿馬鹿しい。これでも社会的な常識、真っ当な倫理観は備えているつもりだ。……だから、如何するという話。
「どうして、そう思ったのかしら」
 悶々と思考しているうちに、彼女が口を開いた。感情を感じられない声色。その表情は先程から変わらず、僕を正面に捕らえている。“逃がさない”という意味にも取れるし、“真摯に話し合い”をしているとも取れる。……思考の堂々巡りだよ。
 意を決して、僕は初対面の彼女に“初めて”口を開いた。
「――共感覚って、知っていますか?」



 長々とどこの箇所を省くわけでもなく、自分の人生を話し終えた。何故と聞かれても答えようのない、強いて言えば話したくなった。ただそれだけ。
「これで僕の話はおしまい。何故かわからないけど、話したくなったんだ。最後まで聞いてくれてありがとう」
 嘘偽りのない素直な気持ち。思えば、他人に対して自分の本質を話したのはこれが初めてかもしれない。
「そう。病気についての知識は持ち合わせていないから理解は出来ない。でも、なるほどねぇ。その“共感覚”とやらが私を見透かしたってわけ、か」
「あらためて聞くけど、君は本当に人間じゃないのかい? 見ている限りじゃ、どう頑張っても幼い女の子にしか見えないよ」
「えぇ、こちらこそ何度も言うけど、本当の話。こう見えて、あなたよりも確実に長生きしていると思うわ」
「ちなみに、何歳?」
「89歳」
 …………油断した。てっきり常識の範疇に収まる範囲だと思っていたのに対して、彼女の返事はそれを逸脱していた。なんてことはない、そんな感じでその幼い外見が89年の時を過ごしていると言ってのけたのだ。
「そ、そう。僕は14歳」
「14歳……随分大人びた印象を受けたけど、へぇ。それにしては中々にいい男じゃない」
 どう見ても年齢一桁台にしか見えない彼女にそんなことを言われる。特に嬉しいという感情が湧き上がらない以上、僕はまだ一線を越えてはいないように思えてホッとする。
「いい男は置いといて。自分でも驚くほどに楽しく会話できたのは嬉しかったけど、僕はそろそろ家に帰りたい。でも帰れない。この状況について何か知ってることがあったら教えてくれないか?」
「知ってるも何も、この状況は私が創り出しているのよ」
「……」
 またもや、なんてことはないといった風に彼女は言う。続いてどこかのお嬢様よろしく、手櫛で自慢の金髪を梳いたかと思うと、なにやら挑戦的な視線でこちらを見てきた。
「あなた、帰りたいのね。でも残念、私、この結界に迷い込んだ人を逃す気はないのよ」
「は、はぁ。つまりどういうことですか」




『最終回にて』




「ここで新展開、実は私って吸血鬼だったのよ~。ご愁傷様、ここは虫で言う蜘蛛の巣のような場所よ。運悪く迷い込んだ人を、私が食べちゃうわけ」
 もはや驚くまい。同じように彼女はなんてことはないと言わんばかりに、僕に向かってその言葉を述べた。……つまり、僕は蜘蛛の巣に引っかかった蝶の如く、いわゆるエサ的な立場というわけだ。
 全く以って、非常識。しかし、非常識だからこそ僕はその事実を受け入れる。
「吸血鬼云々はともかくとして。僕を食べるとは、やはり、その」
「心臓取り出して食べちゃう」
「そ、そうですか」
 一応僕も年頃の育ち盛りな男の子。女事やこんなことにも興味を持っちゃったりなんだりして、この“食べる”という意味は、実はトンでもなくアレな方法で僕の股間に位置する聖剣エクスカリパーからほとばしる光波を摂取することが彼女の“食事”なのだろうかとか何とか考えちゃったりして。
「でも……んふふ、あなたみたいな若い子って、凄く珍しいのよねぇ。ちょっと味見しちゃおうかしら……」
 なんという空想具現化能力。間違いなくこの不条理な状況で僕の特殊能力が目覚めたに違いない。心なしか共感覚も治っているようだ。間違いない、これは主人公にのみ与えられる特権、第一インフレーションだ。
「ど、どうするつもりだ」
「いやねぇ、お姉さんの口からそんなこと言わせないでぇ」
 彼女は撫で声で僕を挑発するかのように近付くと、有無を言わさず僕の頑丈に着込まれたジーンズを剥いでしまった。
「な、なにをするだーッ!」
「あらあらぁ。あなた、いまだにブリーフなのね。その少年から脱し切れてない感じ、好みよ」
 そんなことを言いながら、その手が僕の性器に位置する部分をブリーフ越しに撫ぜる。丁寧なようで力強いその動き、僕の聖剣を隆起させるのは時間の問題と言えた。
 沸き上げるものを押さえ込むのに必死な僕がそんなに可笑しいのか、彼女は目を細め、視線を僕の顔に向けながら笑みを浮かべている。
「我慢する気ぃ? 駄目よう、年下の男の子がお姉さんに逆らうだなん、て!」
「あうっ」
 ゆるやかに擦る動きから急に、ブリーフ越しながらも僕の聖剣が?まれる。急な感覚に僕の聖剣は隆起を余儀なくされた。
 彼女はと言うと、聖剣の影響で発生した山を見て恍惚としている。
「う~ん、いいわねぇ。ブリーフに作られるテントを見て恥じる少年の図、これほどそそるものはないわ。……と言うわけで、そろそろご対面といきましょう。えいっ」
 年相応とはとてもじゃないが言い難い、その小さな体が僕のお腹の上に飛び乗る。ちょっと苦しかったけど、聖剣が外の冷たい外気に触れたことによって拭われる。
 白いワンピースに透けて見える健康的な体躯。それにどうやら、彼女は下着を着用していないらしい。……それが僕の素っ裸となった下腹部に乗せられている。……僕は既に一線を越えていたらしい。
「あはっ、よかったぁ。まだ剥けてないのねぇ。痛がる男の子のそれを無理やり剥いちゃうなんて、考えただけでも濡れてきちゃうわぁ……」
「そ、そうですか……」
 事実、彼女はその未踏の地と思われるクレパスを濡らしていた。地球温暖化による弊害なのか、クレパスも例外ではなかったらしい。……それが僕の下腹部に乗っている。だ、だめだ、考えるな。
「ん~、んん~? おかしいわね、さっきよりも大きくなってるわ」
「気のせいですよ。そんなわけないじゃないですか。言いがかりは止めてください」
 これも事実、僕の聖剣は立派に成長していた。触られてもいないというのに、考えただけで僕の聖剣は成長してしまったのだ。これで触られたとしたら……。
「じゃ、握っちゃいましょう」
「うぁあ!?」
「んぁ~ん、この寒空の下じゃ暖かいというより熱いって感じねぇ。中々どうして、口調とは違ってこっちは熱いじゃないの」
 くにくにと最初は何かを確かめるかのように柔らかく、そして徐々に力を込めて。他人に扱かれると言うのはこうも刺激的だったのかと思い知らされる。
 彼女は僕に背を向けるようにして聖剣を弄っているため、表情は確認できない。ただ、依然クレパスからは環境的に重大であろう量が濡れており、僕の下腹部をこれでもかとぬるぬる擦ってくる。
 そんな図らずとも二回攻撃スキルを発揮されている僕が喘ぎ始めるのは必然といえよう。
「う、ぁ……気持ちいい……」
「そ~お? あっと、忘れてた。久しぶりに弄ったから夢中になってたけど、剥き剥きしなきゃいけないわよねぇ、ふふっ」
 扱く動きを止めたかと思うと、一瞬で僕の聖剣は強制的に脱皮させられてしまった。
「い、いたっ、いたいよ!」
「ごめんねぇ。でも、一瞬だったでしょ? ……じゃぁ、とりあえず綺麗にしましょうか」
「え?」
 僕の戸惑いに答えることなく彼女の柔らかそうな尻、略して柔尻が濡れそぼったクレパスを従えてどんどん僕の顔に近付いてくる。
 ちょうど彼女の伐採跡地とも言える股間部が目と鼻の先に位置した時、形容しがたい快楽が僕を襲った。
「うわっ、あっ、熱い」
「んむ、ん、じゅぷ……ぷぁっ。どう、お口の中は気に入ったかしらん?」
「……」
 脱皮したばかりの敏感な聖剣に、この刺激は強すぎた。ただでさえ聖剣を鞘に収めたことは無かったというのに。脱皮後と初体験という二つの要素が相乗効果を生み出し、僕の頭は真っ白同然となっていた。
「そ、応えられないくらい良かったのね。それじゃ……あむ、ちゅっ」
 鞘が僕の聖剣を咥え込むだけでなく、やわやわと持ち手の部分を扱かれている。
「すごく……気持ちいいです…・・・」
「あぁ……なら次はお前、俺のクレパスを弄ってみろ」
 言われた通りに朦朧とした意識の中、彼女のクレパスに下を突き入れる。
「ん……ちゅぷ……んんっ、ぷあっ…あんっ、いいわぁ……もっと深く入れてもいいのよ……」
 深く、穿る様に舌をグラインドさせる。その度に彼女の体がびくんと痙攣して、ちょっとした優越感に浸れる。……そんな僕を見透かしているかのように、鞘の動きが激しくなる。
「はぷっ……ちゅっ……じゅるるっ……くぷっ」
「うぁ、あぁ……そろそろ……」
 初めてにしてはよく耐えた方だろう、聖剣の必殺技ゲージは既に振り切っており、いつ光波を噴出してもおかしくない状態だ。
「んふっ……んっ……んんっ」
「ほんとに、もう」
「んっ……じゅっ……んう!」
「うぁあ!」
 ドクッ……ドクッ……
 僕の制止も聞かず咥え続けた鞘に、聖剣からの光波が勢いよく放たれる。鞘を離すかと思いきや、ずっと銜え続けているどころか光波を吸収しているようだ。
「んっむ……ん…………はぁ。ご馳走様」
 仕事を終えた土方のおじさんよろしく、一仕事終えたような顔で僕の方に振り向く。見れば彼女のクレパスは手に負えないほど濡れており、それがまだ満足していないと強調している。
「それじゃ、そろそろ本番といきましょうか。よかったわねぇ、私のようなお姉さんに筆卸ししてもらえて。こんな幸運滅多にないわよぉ」
「は、はぁ」
 一ゲージ消費して光波を出したにもかかわらず、僕の聖剣はいまだ衰える素振りを見せない。
 そんな僕を他所に、彼女は僕の上、馬乗りになる形で僕に跨ぐ。その顔は妖艶な笑みで染まっており、否応無しにこの先に期待させる。
「さぁて、君の初めてを奪っちゃうんだけど……何か言うことはある~?」
「その……出来れば優しく……」
 彼女はその言葉に満足したのか、右手で自らのクレパスを広げてみせる。真っ直ぐ腰を下ろすと、僕の聖剣が突き刺さる位置だ。
 そのまま彼女は何も言わず、僕の聖剣をクレパスで包み込みながら腰を下ろした。
「ん……あぁんっ……中々、どうして……加え甲斐のあるもの、持ってるじゃないのよ」
「うぅ」
 姿にたがわぬその狭さ。明らかに許容範囲外である僕の聖剣を咥え込むクレパスが、強引に上下し始める。
「はあ、っ……んっ、いい……やっぱり、久しぶりだと感じ方も……くうっ、強烈なのねぇ」
 僕の目の前で、彼女が跳ねる。太腿まで届くその髪は乱れ、青い瞳は虚空を彷徨い、幼い体躯が快感に打ち震えている。そんな僕も感じたことのない快感に身を震わせ、気付けば彼女の腰に手を添えて自ら率先して腰を動かしている。
「――っ、はぁっ、はあっ、はあっ……うぁっ、や、はうっ……ッ」
 じゅぷじゅぷと淫猥な音が森の中へ溶けてゆく。お互い玉のような汗を振りまきながら、一心に繋がり続ける。……ゲージMAX。
「――――――ッああああっ! あぁっ、う、ぁあああっ!!」
「く、うっ……出…………っ!」
「ああっ、うあああっ……! ―――――――ぁ…………」
 ゲージ最大まで溜めた光波が、クレパスの最奥で放たれる。どくどくと脈打ちながら放たれたそれは量が多すぎたのか、結合部から次々に溢れ出てくる。
「………ん、ふふっ。よくもまぁ、出したものねぇ」
 そう言うと彼女は、腰を浮かして立ち上がった。



「で、感想はどうだったのよ。私? よかったわぁ」
「…………」
 ひどく、後悔。僕の聖剣エクスカリパーに無言の非難を送る。返事が返ってくるわけも無く、事後の虚しさだけが僕を包む。
「さて、それじゃ食事タイムね」
「え? 本当に食べちゃうの?」
「当たり前じゃない。最初に言ったわよ、ちゃんと。久しぶりのエサを目の前にして、ただでさえお預けを食らってるというのに、そんな状態であ~んなことをしてあげたんだから。文句はないわよねぇ?」
「大ありだ」
 たとえ僕が受け入れていたとしても、強制されたことは事実なんだ。むざむざ死ぬわけにも行かない。……死にたくない、その気持ちが強まるにつれて、僕の体が輝き始める。
「うぉぉおおぉお!!」
「な、なんなのっ!? ……まさか、そんなことって……戦闘力が…10000…15000……30000……! ば、馬鹿な! まだ上がっている!?」
 ボフン、彼女のスカウターが爆発する。それもその筈だ。今の僕は聖剣エクスカリパーの力を借りて非常にパワーアップした状態だからだ。吸血鬼だろうがなんだろうが、負ける気がしない。
「もう終わりだ。既に貴様の負けは決定している。……せめてもの情けだ、塵も残さず消し飛ばしてやろう」
 どかーん
「やった! 勝った!!」








 ちゅん……ちゅちゅん……
 早朝、太陽が昇り始めるその時。眠り静まっていた草木は呼吸を始め、風は冷たい空気を運ぶ。徐々に上へと昇る太陽の日差しが、木々の葉から差し込む。
 地面に横たわる一人の少年。その顔は安らかな表情で満ちており、一目見るだけでは死んでいるようには見えない。……そう、少年は横たわりながら死んでいた。楽しい、楽しい夢を見ながら――。



 完

       

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Neetsha