Neetel Inside 文芸新都
表紙

要するに短い話なんだよ
「S・B・W・W」

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 ――――わたしはこのうつくしい世界がだいすきです。




Erst Tag



 朝、とてもきもちのいいめざめ。お日様のひざしがわたしをつつみこむように、やさしくふりそそいでいる。
 どうやら、わたしは草のうえでねむってしまっていたみたい。夏だもん、そとでねていてもかぜをひくことはないよね。
 うーんとのびをして、草のべっどになごりおしみながらも、わたしはにほんのあしでたつ。ほおをなでる風がきもちいい。


 森のなかをゆっくりあるいていると、なにかをわすれているかんじがした。……そうだ、のどがかわいていたんだ。それにかおもあらいたい。
 いちどたちどまってあたりにみみをかたむける。木がざわめくかんじ、ちいさなどうぶつがはしりまわる音、川のせせらぎ。
 わたしは川のせせらぎがきこえてきたほうへと、またゆっくりあるきはじめた。


 じゃぶじゃぶとかおをあらう。森にながれている川の水はとてもつめたくて、いまという夏にはぴったりだ。それにとてもきれいで、のむとすごくおいしい。
 おおきな石がたくさんころがってる。ここのかわらには、たまにくまさんがやってくるんだ。くまさんは川でおよいでるおさかなを、とてもじょうずにとるんだよ。
 水をのんだら、こんどはおなかがすいてきた。きのうの夜はきゅうにねむくなっちゃって、なにもたべなかったからだとおもいだす。


 なにかたべるものがないか、また森のなかをあるきながらさがしていると、みちのまんなかにおおきなおにくがおちていた。
 そのおにくはとてもおおきくて、わたしひとりではとてもたべきれないくらい。さわるとつめたくて、しんじゃってるってわかる。……まわりをみても、おおきなどうぶつさんはいないみたいだ。
 わたしはすごくおなかがすいていたので、がまんしきれなくなっておちていたおにくにがぶりとかじりついた。
 みためはかたそうにみえたけど、たべてみるとやわらかい。なによりも、すごくおいしい。……だれかのおとしものだったらどうしようとおもったけど、わたしはじぶんのいえにもちかえることにした。


 わたしのいえはおおきい木にあいていたあな。おもいっきりからだをのばしても、まだひろくかんじるくらいにおおきいんだよ。
 お日様がとおくにしずんじゃって、お空があかくなっちゃったころ、わたしはじぶんのいえにとうちゃくした。
 おおきいおにくというにもつがあったので、おもっていたよりもじかんがかかっちゃった。……せおうようにしてもってきたおにくを、わたしのいえのなかにいれる。
 それにつづくように、わたしもいえのなかにはいると、きゅうにねむくなってきた。たぶんおもいものをはこんできたせいだとおもっているうちに、わたしはねむりにおちた。



Zweit Tag



 ――がたん!
 きゅうにものおとがしたので、わたしはびっくりしてめをさました。まだそとはくらくて、よくみえない。
 お月様が雲からかおをだしたのか、すこしだけまわりがみえるようになる。……めをこらすと、いえのいりぐちにみたこともないどうぶつさんがいた。
 よくみると、わたしとおなじでにほんのあしでたってる。なきごえもだしてるんだけど、わたしはどうぶつさんのことばがわからないので、なにをいってるのかよくわからない。
 わたしがおきあがってちかづくと、どうぶつさんもそれにあわせてわたしからはなれる。もういちどわたしがちかづくと、またどうぶつさんもはなれる。
 なんだかおもしろくなってきたので、わたしがもっとはやくちかづくと、どうぶつさんはうしろをむいてはしりはじめた。
 なるほど、あのどうぶつさんはわたしとおいかけっこをしにあそびにきたんだ。まだ夜だけど、さいきんはおいかけっこをしていなかったので、うれしくなりながらわたしもはしりはじめる。


 お空がすこしあかるくなってきたころ、わたしはどうぶつさんをみうしなっていた。おいかけっこにあきたのかな。どうぶつさんはかくれちゃってでてこないみたい。
 しばらくさがしていたけど、わたしはあまりかくれんぼがとくいじゃないので、みつかるまえにあきてしまった。
 ほっとひといきついて、お空をみあげる。どうやら朝になっちゃったみたいなので、わたしはきのうとおなじように川のせせらぎをたよりに水をさがす。


 川のせせらぎがきこえてそこにきてみると、きのうとおんなじ川だった。
 とうめいな水をりょうてですくって、おもいっきりかおにかける。きのうとおなじ、すごくきもちいい。もういちどすくって、こんどはおくちにはこぶ。うん、やっぱりおいしい。
 でも、どうしてだろう。ぜんぶきのうとおなじはずなのに。かおをあげて、川のむこうぎしをみると、くまさんがたおれていた。
 すこしとおいからめをこらさなきゃみえないけど、くまさんのちかくにある石には、血がべっとりとついている。…………くまさんは、しんじゃっていた。


 どうぶつさんがしんじゃっているところをみたことないわけじゃないよ? おにくをたべるときとか、そういうときはいつもみてるもん。
 でも、くまさんをおもいだす。……うん、くまさんはびょうきでしんじゃったんじゃない。ほかのどうぶつさんにころされちゃったんだ。
 あのくまさんはとてもおおきくて、とてもつよくて、なによりも、とてもやさしかった。おなかをすかせているとき、よくわたしにおさかなをとってくれた、やさしいくまさん。
 どうぶつさんはしんじゃう。森のなかではあたりまえのことだとわかってるのに、わたしはすごくかなしいきもちになった。ぽたぽたと、じめんに涙がおちる。
 しんじゃったことがかなしいんじゃなくて、おさかなをくれないことがかなしいんじゃなくて。……もうにどとくまさんにあえない、それをかんがえただけで、わたしの涙はとまらなくなってしまった。


 お日様が森にかくれちゃって、お空がおこっちゃったようにまっかっか。
 ずっとないていたら、おなかからぐーっておとがきこえた。まだかなしいけど、おなかもすいたので、わたしはたちあがる。……そしたら、森のおくのほうから光がみえてきた。
 みたことがない光で、お日様とすこしにているかんじがする。ちがうのは、それがゆらゆらしているくらい。
 いっぱいないちゃったし、おなかもすいちゃってるけど、みたことない光はすごくきになる。うーんとうなりながらかんがえて、わたしは光をおいかけることにした。


 ちかづいてみるとわかったけど、光のちかくはすごくへんなにおいがする。でも、どこかでかいだことがあるなぁ、と思ったら、おいかけっこしてたどうぶつさんもおなじようなにおいがしていた。
 だったら光のちかくにいるのは、あのどうぶつさんのともだちかもしれない。……さっきまですこしこわかったけど、わたしはきゅうにあんしんした。
 あんしんしたとたん、わたしはうれしくなってはしりだす。木でときどきみえなくなるけど、ずいぶん光のちかくにきたはず。

 ――ターン。

 きいたことない音が、森にひびく。すごくおおきな音だったので、わたしはびっくりしてたちどまる。……と、おもった。
 ふとわたしはじぶんのおなかをみる。そこにはちいさなあながあいていて、そこからくまさんとおなじいろの血がながれていた。
 それをみたとたんに、わたしはじめんにすわりこんでしまう。さっきまでげんきだったのに、なんだかちからがはいらないよ。
 あしにさわる草がやわらかいからなのか、ねむくなってくる。うとうとしていると、まえのほうからあのどうぶつさんとおなじすがたをしたどうぶつさんがでてきた。
 それがいっぱいいっぱいでてきて、なーんだ、かくれてたのはわたしなのかぁ、と。

 ――わたしは、ねむりについた。またあしたも、きのうやきょうみたいな、すてきないちにちになりますようにとおもいながら。



Letzt Tag



「や、やったんか……?」
「あほう! まだ近寄るんじゃね! ゆだんすっとると、お前さんも食われちまうかも知れねえぞ」

 数人の、もう老人に近い男達が、先程撃った標的に集まっている。老人達の視線を追うと、地面。そこには、一言では形容しがたい生き物が果てていた。
 半透明で、個体に似た液体で、幼い女の子を模していて……ゼラチン質の物体としか言いようがない。そのゼラチンが、先程まで走っていたのだ。人間と同じく、二本足で。

「そんれにしても、あんま気分のいいもんじゃないの。こぉんな子供を……」
「馬鹿言うんじゃね、コイツぁ村のもんを一人食っとるんやぞ。んなこと死んじまった太助の嫁さんの前で言ってみい、反対にお前さんが殺されちまう」
「そやけども、うぅん」

 この、さっきまで生きていた生き物は、寒村で暮らしていた内の一人を殺していた。
 行方不明になっていた太助を探していた村民の一人が、この生物を発見した際に、無残にも食い散らかされた太助を見つけ、襲われそうになったところを命からがらに逃げてきたのだ。
 それを聞いた村の人々は、即座に山狩りをすることにする。……結果として、向こうから現れたところを一人の猟師が仕留めた。
 この生き物の死体は村に持ち帰られたのだが、夜が更けると、まるで最初から何も無かったかのように、姿を消していた。村の人々は気味悪がったが、生き物は二度とその姿を現さなかったという。


     


       

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