トマト君の友達のパイナップルは従兄弟のチョコレート君と些細なことで喧嘩を始めてからずっと仲が悪いが、同じ母方の従兄弟の豚バラさんとはとても親密であり、しかしながら、かいわれ大根の叔父さんはそのことを好ましく思ってなく、豚バラばっかりでチョコレート君が可哀想だと彼を責めており、このことについて叔父の崇拝者であったパイナップルは反省はしているが、わずかな自尊心からチョコレート君に謝ることができず、逆になんだって俺があいつに謝ったりしなければならないと苛立ち、そのせいで持病の癲癇を発症してしまい、学校を一週間も休む破目になり、ベッドの上で数日の間、泣き言をしくしくと呟いていて嘆いていたが、それを知ったトマト君が放課後に心配して、すぐに彼の家に行ったが、またまた凝り固まった自尊心のせいで彼はトマト君を家に入れさせてあげず、とはいえ、帰るのも許さないと怒鳴ってしまい、これに困ったトマト君は悲しそうではあるものの、生来から弱者に対して感じてしまう一種の特別な愛情から怒るこもなく、彼の家の窓の側に立つと、彼の話を長々と聞きながら、たまに親切な助言をしてやっていたが、その度に実際的な助言など求めてなく、ただ自分の話を誰かに聞いてもらいたいだけのパイナップルはぶち切れてしまい、窓をぱりんと拳で割ってしまうと、あろうことにその破片がトマト君の頭に刺さり、そのせいで血をたらたらと顎まで垂らし、それが彼の足元の土に落ちてしまい、その過程を眺めながらさすがの温厚な彼も、この気狂いが、と叫んで、意味もなく両腕を振り回すと、中腰になって、また奇声を発して叫んだと思うと、ぷつんとラジオが切れたように黙り込んで後ろを向いて歩き出して帰ろうとし、ところがパイナップルの視界の隅まで移動すると、首から上だけで不気味に振り返り、パイナップルをじっと見つめ、にやにやと気味悪く笑い声をあげてそのまま消えてしまい、これにパイナップルは、てめえの方が狂ってんじゃねえか、と言ったが、それはトマト君が完全に目の前からいなくなってからで、その後は壊した窓を母親にどうやって誤魔化そうかと考えて一日を費やし、というかトマト君のことを思い出したくないがためにそうしているところもあり、どうやら俺はあいつを怖がっているみたいだぞ、とびくびくしながら、こういうときにチョコレート君がいたら頼もしいと思っていたが、やはりチョコレートなんざ知るものかと思い直し、あんな奴ら、いや、それどころかみんな揃って死んでしまえと考えて、夜の天井に向かってひひひと笑っていたが、なぜか急に悲しくなって胸を守るように腕を組んで泣き始めると、また例の癲癇が発症し、ぜえぜえとなりながら胸を掻き毟るように指を動かしていると、これにすぐ気づいた犬の散歩をしていた小学生が不審に思いつつも、それと同じぐらいの好奇心から近づくと、壊れた窓から見えたパイナップルの異常な表情に驚愕し、速やかに救急車を呼んだことでパイナップルの命は何とか保たれ、後に病院で目が覚め、この一連の話を聞いて彼は小学生にお礼の電話をしたいと思ったが、逆になんだって生かしやがったんだと腹が立ち、その小学生のおかげであなたは助かったんだ、あの子の視力はとても良くて米粒に書いた文字までちゃんと読めるらしいんだよ、という医者の言葉に、今度ばったり会ったら二度と米粒を見えなくしてやると喚いて、医者を病室からすぐに追い出すと、一人になってまたしくしく泣いていたが、その夜に、どうしてこんなみじめで生きなきゃならんのだと思って、俺はついにやってやるぞと意気込んで立ち上がると、窓の白いカーテンを手で引き裂き、縄状にして自殺を試みたが、巡回中の警備員に見つかって死ぬ一歩手前で失敗してしまった。
sage