Neetel Inside 文芸新都
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トウカの唇から紫煙が淀む。
黄緑が映えるハイライトはまだ明けられて間もなかった。
「あれ? サエキくんって喫煙者じゃなかったっけ?」
「……吸うよ、べつに」
トウカから唆されているかのようにぼくは煙草の火をつけた。
「セブンスターって、ヤンキーっぽいねー」
「銘柄なんてどうでもいいだろ」
「そう? 俺、銘柄で人を見ちゃうね」
「そしたら、ぼくは数日前までメビウスを吸っていた、って言ったら?」
「それは……、浮気性じゃない?」
「へー、そうなるんだぁ」
「まぁまず、予備生が親の金使ってまで煙草吸ってるなんて、論外だけどね」
「あは」冬可は違和感のある笑みを浮かべる。
「あはは」ぼくも冬可と一緒に笑う。
「君とは仲良くなれそうだ! サエキくん!」
手を差し伸べられる。煙草を持った手で掴んじゃったから、煙草が落ちた。ボトリ。気にするな。気にするな。気にしちゃーぁ、ダメ。紫煙が足からモクモくと沸き上がっている。トウカ、きみは、だれ? 気にしちゃーぁ、だめ、ダメダメダメダメ、サエキクン! サエキハルキ、ハルキ、トウカ、トウカ、その煙草、誰の? 誰の物? だれ? 気にしちゃーぁ、ダメ、ダレ、ダメ、ダレ、ダ、だ。だ。
「サエキクン!」
サエキクン!
サエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクンサエキクン――――――。

       

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