Neetel Inside ニートノベル
表紙

革命のライトノベル
第一話

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俺の名前は「蛾安生 烏城」(があせうい うじょう)。
ウィングガルド王国最強の殺し屋であり、めちゃうまスイーツ開発研究部の所長もやっている。
めちゃうまスイーツ開発研究部はウィングガルド城下街にあるおいしいおいしいスイーツ屋さんだ。

俺はこのあまあまスイーツで、世界中のみんなを笑顔にしたいと思っているしこの国のみんなもきっとそう思ってる。
「烏城。依頼だ!」
僕がめちゃうまスイーツ開発研究部のレジカウンターで店番をしていると、マジ半端ないくらいのガタイのいいムキムキおじさんが店に入ってきてそう言った。
「なんの依頼だ?日替わりおいしいショートケーキなら、もう売り切れだぜ?」
「そうではない。貴様の本業の話だ。」
おっと、はやとちり。
俺は頬杖を直し、だらしなく腰掛けていたパイプ椅子から立ち上がると同時にすごい剣幕でムキムキおじさんに睨みかかった。
「俺の本業はあまあまらぶらぶスイーツだ。殺(あやめ)からは足を洗った。」
たてつづけに「糖尿病になりたかねぇなら、帰んな。」と付け加えておく。

しかし、ムキムキおじさんは口元がニヤリ。
何か企みを企てている感じだった。
「この企画書をみても、そういえるかな?」
「はあ?」
チラッと見てやると、おどろいた!
「これは……おい!!殺害対象って……」
ムキムキおじさんは、また、ニヤリ。
「そうだ。お前さんにゃあ、コイツを殺(あやめ)ってほしい……。」

俺はマジでおどろいた。
殺害対象は……
「この国の主、蛾安生(があせうい)・フジヤマ・ウィングガルド。」

ウィングガルド国王であり、俺の、父。
ムキムキおじさんは俺に〝革命・親父殺〟(かくめい・おやじあやめ)を依頼してきたのだ。

「くっ……!」
俺は正直迷っていた。
俺は親父が嫌いだった。
親父はマジでこの国の食べ物とかを独り占めしたがる。
あと親父はくしゃみがめっちゃ臭い。
だから嫌いだった。

「おやじ殺しが、そんなにこわいか?」
ムキムキおじさんが煽ってくる。
「こわくないさ。だが……」

だが、親父は……強い。
俺は正直こわかったが、我慢して言ってみた。

するとムキムキおじさんが
「まあいい。明日までに考えておいてくれ。企画書にも目を通しておくように。これは完璧な計画だ。この国は腐敗している。俺らのようなリベラル派が、レジスタンスとなりて牙を向かねば奴のような富を貪る腐れ豚にこの国を、資源を、民を喰らい尽くされる。俺はそれがたまらなく悔しい。憎い、俺たち民が血と肉で創り上げたこの国の隆盛をたったひとりの傍若無人に討ち滅ぼされてなるものか!俺は立つぞ!お前など居なくともな。俺はお前の親父をなぶり殺しにしてくれよう。城下の大広間にて彼奴の首を担ぎあげ、こう叫んでやるのだ。今日この日から、この国の王は俺だ。と。」

立て続けにこう言ってきた
「ひとつ聞くぞ。烏城。お前は、そこに居ないのか?」
俺……!?
「俺は……俺だって……」
親父が、憎い。だが、
「親父は、強いぞ。この国の誰よりも。だ。」
「ああ、知っているさ。だから、仲間がいる。」
「お前は何も分かっちゃいない。なぜ親父が、たった1人で1000石の困窮の限りであったこの国を1000万石もの大国へと築き上げることが出来たのかを。」
俺は、全身が震えるのを抑えきれなかった。

「なぜだ?言ってみろ。」
「親父は、この国の主は、〝龍の者〟(ドラゴウン)だ。」
「!?」
流石に、ムキムキおじさんもびびっていた。
それもそのはずだ。俺たち〝普通の者〟(フツノウン)では例え1000万人集まっても〝龍の者〟(ドラゴウン)1人にすら敵わないのだから。

――なのに
「フハハ!」
笑っていた。ムキムキおじさんは。
「気でも触れたか。」
「ばあか、望むところってんだよ。」
はあ?コイツ、命知らずか?

「俺らにはな、戦力がある。今は丁度、1000万人なんだ。」
「今のままじゃあ、確かに勝てねぇ。けどな」
「1000万人と〝半分龍の者〟(ハーフドラゴウン)が1人いたら?」
ムキムキおじさんはニヤリと口元とかを緩ませる。

「バカな‼そんな人数どうやって!?」
「この国の民は、みな国王に迎合する気がねぇみたいだ。」
「王国騎士団や国王直近の武士団、シェフや大奥まで、皆が名を挙げた。国民全員で、一揆を起こす。」
ムキムキおじさんは、口元は笑っているようにみせかけて目は笑っていない。
「この国の1000万人は、ウィングガルドを〝普通の者〟の物にしたいみたいだ……。お前は、どうするつもりだ?」


「俺は……」
震えていた。でもこの震えは恐怖からくるものではない。
「俺もだ。俺は、親父を殺す。息子でも、殺し屋としてでもない。この国の民として。この地に生きる1人の〝普通の者〟(フツノウン)として、贅沢に溺れ、民への慈悲を忘れた王に、我が意志を。金剛すらも穿ち‼いかなる古強者(ふるつわもの)も恐れ慄いたこの爪牙(そうが)で‼俺は殺(あやめ)なければならぬ、我が王を、わが父であった〝龍の者〟(ドラゴウン)を。それが民の定め。それが息子の定め。それが殺し屋の定め。それが俺の定め。わが友よ、俺も立つぞ‼我らの憎き者を共に討たねば、この国に民に未来など訪れぬ。俺は守りたい。この店を、このスイーツを。そしてスイーツを愛するすべての民を。俺の身が震えている。だが、これは武者の震えだ。王を殺す、器の憎しみの雫が溢れんばかりに湧き出してくるのだ。王を殺すのだ。今すぐにだ、民を呼べわが友よ。この怒りの静まらぬうちに、真の平和を勝ち取らねばならん。」

ムキムキおじさんは笑った。
「民はもう居る。店の前だ。」
ずらりと、店の前に1000万の行列が出来上がっていた。
「お前はこの国の王子。王を討ち、お前が王となれ。民は皆、お前の意志に住まうのだ。」

店を出て、俺は怒号を谺(こだま)した。

ウィングガルド革命の、はじまりだ。

第1話完




       

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