Neetel Inside 文芸新都
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どこにもいかない
【20年9月号】淡路島編(2020/12/27)

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 9月19日、土曜日。
 門司港。
 九州の門司と大阪の南港を繋ぐ名門大洋フェリーの乗り場に自前のスーパーカブで辿り着いたのは、出港の一時間前のことだった。
 ターミナルの入り口で検温、カウンターまでの動線の間にGOTOトラベルの事務処理を行う簡易の窓口が設けられてあり、それが終わって乗船手続きとなった。
 船に乗り込むと、一番安いクラスで予約した大部屋へと向かう。突き当りの部屋で、中に入ったときに一組の年配の夫婦がいるだけだった。
 どうやらコロナのせいらしく、いつもなら間隔なく畳まれて置かれている布団類も、等間隔に置かれていた。
 部屋に荷物を置いて、デッキへと出る。
 山際に沈んでいく夕日を見ながら、出港の時を待った。汽笛が数度鳴り、じわじわと岸壁から離れていく。蒸し暑い風に当たりながら、程なくして、大浴場へと向かった。
 
 9月20日。
 名門大洋フェリー1便の朝は早い。
 5時半には大阪南港に到着するので、4時半には朝食の案内が館内放送で流れてくる。うつらうつらとした足取りで、レストランへと向かっていく。夕食のバイキングには手を出せなくとも、朝食は五百円でパンやコーヒー、ゆで卵、サラダがお腹いっぱい食べられることもあって、まだ目覚めていない胃に活を入れるように定量以上を流し込んでいく。


 秋の四連休ということもあって、下船の際に10台のバイクと数台の自転車が居合わせていた。作業員の案内に従って、パレードランのように一列縦隊で陸へと誘導され、公道に出て、最初の交差点に差し掛かると、名もしれぬライダー達は三々五々の方角へと散っていった。
 自分も目指す場所へ行かなければならない。兎にも角にも、西へ。淡路島の方へ。
 埋立地を繋ぐ、阪神高速五号湾岸線に乗れたらどんなにいいかと思いながら、国道43号線へと大迂回する。少しお金に余裕があるなら、阪九フェリーに乗って神戸港から淡路島へ向かうのが最適解に思われるが、そちらは入港が八時半なので、大阪南港から自走すれば、安く、速く、神戸を通り過ぎることができる気がした。疲れるけれど。
 その思惑通りに、八時を過ぎた頃には明石大橋の直下に辿り着いていた。
 空は曇り。雨は降りそうにもないが、どんよりした雲が意固地になって動きそうにもない。
 一時間ほどで明石市にある、本州と淡路島を繋ぐジェノバラインの乗り場に到着した。海苔のように真っ黒で四角い建物に、淡路ジェノバライン・岩屋行のりばと書かれてある。券売機で大人530円、小型自動二輪480円を現金で支払った。
 フロートの船着き場から小さな待合室に至る通路に、ママチャリからロードバイクまで、色々な自転車を手にした大勢の老若男女が、船を今かと待っている。バイク置き場はまた別の場所にあり、そこにはすでに16台のバイクがあった。……時間が経過するにつれて、小型船にバイクを積んで航行する、ジェノバラインというものがどういうものなのかが分かり始めてきた。
 この航路には3隻の船があり、「まりん・あわじ」という船だけが、125CC以下の原動機付自転車を積載できるということ。そしてこの船は、一時間に一往復だということ。
 そして問題なのが、一度に載せられる原付の数は8台までらしい。
 係員が前の8台を10時半、そして後の8台を11時40分の便に乗せるように割り振り始めていた。
 ということは、自分が淡路行きの船に乗れるのは12時30分ということになるのだろうか……。3時間後じゃないか……。
 日帰りで淡路島を巡る予定にしていたので、13時に岩屋に到着して、夕暮れまでに見て回ることができるのか不安になってしまった。
 (続く)
 

       

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