Neetel Inside ベータマガジン
表紙

ミシュガルド一枚絵文章化企画2
「ミシュガルドファミリー」作:タアアタ

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亜骨大戦期初期、ジリジリと
鳴くのは夏のセミばかりではない
ジリ貧の経済も鳴いていた。

戦中景気を持続させるため
軍需物資を次々と商業船団に乗せ
骨甲皇国とアルフヘイムへと
SHWマネーを流れ込ませる。

同時に両国民にSHWへの入社を
期待させることで人員を確保し
玉石混交の営業を戦時中に行った。


亜骨大戦期中期、キュウキュウが
必要なのは軍人ばかりではない
SHWの経済もキュウキュウ鳴いていた。

投資が回収できない、アルフヘイム・
骨甲皇国両国に派遣した社員の涙
成績が芳しくない現地スタッフの
ストライキ、デモ、革命沙汰。

既に戦中モデル営業は麻薬となって、
SHW本社は大量の不渡りジャンキーを
抱えていつしか商船が海賊船団へと
変貌しつつあった。 奴隷船が続く。


亜骨大戦期末期、魔力タンクの
プラモデルが発売された。
戦争はこれで決着がつくと
アルフヘイム側に大きな投資をした。

英雄という名のお釣りが返ってきた。

だぶついていたマネーが
英雄景気によって導線が引かれ、
見事なまでの名采配に拍手喝采。

アルフヘイム大勝利にベットする
SHWのバイヤーたちの熱量。
クラウス人形の転売ヤーが
SHWの本国からアルフヘイムへ商機を
かけて殴りこむ。

禁忌発動。

終戦。

アルフヘイムへの投資は
禁忌によって焦げ付き
負債付きの汚染地域を
あてがわれたバイヤーたちの悲鳴。
だがそんなものはこの際
どうでもよかった
英雄景気の継続、これを
持続させるために大社長は
SHW企業群末端に至るまでの社長たちへ
即時、資金調達を命じた。

投資先は骨甲皇国でも、
アルフヘイムでもSHWのベンチャー?
そんなものでも駄目だった、
大社長がSHWの社運を賭けた
英雄景気、萌えの覚醒をもう一度。

商機を掛けたその時、
一羽の伝書鳩が舞い降りた。

考古学、魔法の権威、古語話者、
名前を連ねるものたちが発した、
天変地異と重大懸案事項。

それはミシュガルド大陸の発見。

ミシュガルド開拓時代。
SHWの投資先が決まった。

広報、周知、人員確保、移民船団。
大挙して押し寄せる時代の波、
だがまだ足りない、
あと一押しがアルフヘイムびとを
動かす理由が足りない、
同時に骨甲皇国も厭戦気分が
染み付いて、あと一歩、
貧民階級が命をベットするだけに
足りる信用担保が存在していなかった。

ミシュガルド大陸開拓時代の
幕開けを告げるイメージモデル。
それはSHWの農機具や重機、
耕作機械の優秀性では足りなかった。
人々は欲していた、
足りない頭でも分かりやすい
移住モデルのマスターピース。

アルフヘイムの英雄の死は、
クラウス人形の転売ヤーの死であった。
在庫処分で売り切ってしまったあと。

なんとかありつけた仕事は、
穴の開いた革靴と一張羅のスーツ、
てんで売れない
ミシュガルド聖典の複写本を
セールスマンとして売り込みに
玄関からアルフヘイムの
エルフ一家の茶会を眺めていた時だ。

「あらクラウス」
「ただいまミーたん」

エルフの娘さんの人形劇には、
親が作ってくれたミニチュアの
ウッドハウスにクラウス人形。

「あの人形はどこで?」
「あら、この前の蚤の市で
 あの子ったらクラウスが
 かわいそうだからって
 家族をこさえてあげてって
 ついでにあの人まで
 その気になってお家を
 まったくどうしてかしら、ね?
 英雄クラウスには似つかわしく
 ないですわよね」

話半分、ただ頭の中では
すでに出来上がってしまっていた。
数日後、SHW企業群に頭を下げ
大社長の送迎日を知り、大社長
御前で膝をついて土下座をし
報告したい旨を。

「なにかね、君は?」

「英雄景気、萌えの覚醒
 なら決まりきってますよね?
 クラウスです!」

一枚のイメージボードには
こう題されていた。
「ミシュガルドファミリー」
そこにはミシュガルドの辺境に暮らす
のどかな家族の一日があった。
そして在りし日の英雄のもとに
集う愉快な仲間たち。

大社長は一言
「やってみたまえ」

その日からクラウス人形の
ラインナップはミリタリーの
ジャンルから大きく転向した。
ミシュガルド開拓時代にあった
クラウスと仲間たちの
戦後を謳歌する
牧歌的なミシュガルド開拓
ミニチュアモデル。

家族連れを中心に大きな話題を
呼んだ、またかつての英雄が
ミシュガルドで平和に暮らしている
というイメージの定着は
ミシュガルドへの移住を
渋っていた下層民の意識に
分かりやすく刷り込みを
行うことも可能とした。

かつての英雄が今は
妻を持ち子を授かり仲間と一緒に
ミシュガルドの大地に
根付いている。

それが事実であれ
ミニチュアであれ
アルフヘイムびとには十分すぎる
期待へとつながった。

それに呼応するように
骨甲皇国は、上層部をあげて
全階層の市民に約束をした。
ミシュガルドの大地は
開拓者に開拓した分だけ開かれる、
あのクラウスを見よ
我らがクラウスに後れを取ることが
果たして許されるだろうか?
断じて許されるものではない!
我々はミニチュアに収まらない!
ミシュガルド開拓は
骨甲皇国民の手によって
成し遂げられるべきなのだ!
立て! 今こそその時だ!

軍部と足並みをそろえて向かう
骨甲皇国国民。

この先の顛末は
ミシュガルドファミリーの
ようにはいかないのかもしれない、
だがクラウスと仲間たちの
売れ行きに伴って徐々に
人々の新しい商実態が形成され
ミシュガルドで家族となり
結ばれた人々が増えるにつれ
そのミニチュアセットの理想は
ミシュガルド大陸に具現化した。

真にたたえるべきが何であれ
伝統のミニチュアセットが
末永く家族の中で引き継がれて
ミシュガルド開拓史とともに
いきづいている。

もはや
戦後ではないのかもしれない。

英雄の所在は分からないが
いまでもクラウスは
ミシュガルドファミリーとして
すべての種族の家庭に
深く迎え入れられている。

       

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