Neetel Inside 文芸新都
表紙

仮面ライダー閃光<グランス>
第三話「眩き光」

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一般的な企業なら昼休みの時間となるであろう、正午過ぎ…。
特務四課内にアウターサーチャーの警報音が鳴り響く。
昼休みそっちのけで、アウター5号事件の報告書を作成していた
高梨の手が止まった。
高梨が、席を立つのと同時に、昼食を摂りに部屋を出ようとしていた
朝比奈の動きが止まる。
「まったく…。こっちの都合はお構いなし?
 仕方ないわね、未確認生命体処理班出動!」
愚痴を織り交ぜつつ、出動命令を出す高梨。
「了解。」
短く答えると、ライダーシステムのバックルを装着しながら
朝比奈は警視庁地下に向かって走る。
その後を追って、高梨も走る。
地下の駐車場には、射撃訓練所で射撃訓練をしていたG-6装着員達と
特務武装研究所に居た館塙が既に待機している。
G-6装着員達、館塙、朝比奈、高梨が慌ただしく仮設本部車に乗り込み
仮設本部車が地下駐車場から出動していった。

車内では、アウターサーチャーに表示されたアウター出現予測地点を
参考に、対応策が検討される。
「朝比奈君は、デルタチェイサーで先行。
 出現予測地点到着後は、仮設本部車到着までの間、独自の判断で
 アウターと交戦、場合によっては独自の判断での撃破も許可します。」
「了解!」
高梨の指示を聞き、朝比奈は仮設本部車の後部に搭載された
デルタチェイサーに跨る。
仮設本部車の後部の発進扉が開き、デルタチェイサーの固定された箇所が
道路に向けてスロープの様になる。
「デルタチェイサー射出!」
高梨の号令と同時に、デルタチェイサーを抑えている車止めが解除され
デルタチェイサーが仮設本部車後方の道路に射出される。

射出されたデルタチェイサーで仮設本部車を追い越してから、ハンドルから
離した右手で、バックルに付いたスイッチを押す。
『変身』―――――――「Turn up」
デルタチェイサーの正面に、オリハルコンエレメントが出現し
それをくぐり抜けた朝比奈は、仮面ライダーストームへと姿を変えていた。


仮面ライダー閃光 第三話「眩き光」


真昼のオフィス街に、ビルの影から、地面に湧き出る様に突如現れた全長
5メートル程の紫色のコブラの姿に、付近を歩いていた人々は慌てて逃げ始める。
あっという間に、巨大な蛇の周囲からは人が居なくなる。
人々が居なくなったその場で、自分の影の範囲内にある植木を、自分の影の中に
取り込み始める大蛇。
金属の鎧に身を包み、バイクに乗った戦士が大蛇の前に現れたのは
その時だった。
戦士の被ったヘルメットに内蔵されたカメラに、データが転送される。
アウター4号、巨大なコブラ型の異形で、一月前に出現記録有り。
GX-05-Sで致命傷を負わせたものの、撃破に到らず。
戦士は、データを一通り確認しながらバイクから降りる。
そして、右手に構えた銃<ストームジェネレーター>
に左手に持ったカード<ジェネレートカード>を読み込ませる。
『ナスティベント』
銃から機械的な音声が聞こえ、カードの読みとりを完了した事を告げる。
戦士は、大蛇に向けて銃を構えると、大蛇の影を踏まないように注意して
移動しつつ、銃の引き金を引く。
音速の、目に見えない弾が立て続けに四発、大蛇の体目がけて襲いかかる。
大蛇の体から小さく火花が出るが…大蛇には大して効いていない様だ。
大蛇は、その巨体を戦士目がけて叩き付けようと、戦士の居る地点に向けて
上体を倒れ込ませた。
間一髪で大蛇の攻撃を避けた戦士は、カードの隅に、小さく「2」と数字の
振られたカードを、銃に読み込ませた。
『ソードベント』
上空から降ってきた巨大な槍が、地面に突き刺さる。
戦士は、続けざまにもう一枚、今度は「4」と数字の振られたカードを銃に
読み込ませた。
『ウイングベント』
戦士の背中に、巨大な蝙蝠の羽が生える。
戦士は、銃を右腰に付けると地面に突き刺さった槍を引き抜き、羽を
羽ばたかせ、空中に飛び上がる。

空中を舞いながら、大蛇に槍で斬り付ける銀色の戦士。
その光景を、近くのビルの屋上から見つめている一人の人影があった。
「なるほど…飛び道具では効果が薄いと判断して、羽の機動力を利用し
 接近戦…ヒットアンドアウェー戦法に切り替えたか。」
銀色の戦士の戦い方を、冷静に分析する男の腰には、幾何学的な模様の
ついたベルトが巻かれていた。

銀色の戦士は、大蛇の正面、大蛇の頭より少し高い位置に自らの身を
滞空させ、槍を大蛇に向かって投げつけると、再び銃を右手に構え
「K」の文字の刻印されたカードを銃に読みとらせようとした。
大蛇の背後に子供が現れたのは、その時だった。
大蛇の出現の際の騒ぎで逃げている内に親とはぐれてしまい
親を捜して居る内に道に迷ってしまったのだろう。
「マ~~~~マ~~~」と叫びながら泣いている。
戦士は、暫し躊躇し…「K」の文字の刻印されたカードを銃に付いた
ホルダーに仕舞うと、背中の羽を勢いよく羽ばたかせ、大蛇の背後に
回る。

「……………。」
ビルの屋上から、戦士の様子を見つめていた男の表情が険しくなる。

戦士は、子供の目の前に着地すると、子供の身体を抱える。
「へ?誰?」
子供が驚いて問う。
「ここに居たら危ない、逃げるよ。」
戦士は、子供を安心させようと声をかけ、子供の身体を抱えたまま
背中の羽を羽ばたかせ飛び上がった。

     

「朝比奈君、何をしてるの!」
ヘルメットに内蔵された通信機を通して、高梨課長の叱責の声が響く。
「あの位置からファイナルベントを放てば、この子供が巻き添えに
 なっていました。」
ファイナルベント…ライダーキックは、ライダーシステム装着時の
蹴りの威力に、上空からの急降下による威力の加わる必殺技だ。
それを、あの位置から放てば、アウター4号の身体を貫通する事は
勿論、アウター4号の身体を貫通した後の着地の位置が、子供の
居た位置の側になり、着地点を中心に、軽い衝撃波が発生して
いただろう。
その衝撃波は、子供の身体程度なら軽く数メートル吹き飛ばせる
程度の威力になる。
朝比奈の予測は、そういう意味では間違っていなかった。
しかし、アウター撃破を優先事項として活動する特務四課の
判断としては………。

大蛇の居る場所から離れ、子供を安全な所で降ろすと、再び
大蛇の居る場所へ戻る朝比奈。

大蛇の所へ戻った時には、現場に仮設本部車が到着し
G-6装着部隊が、GX-05-Sの集中砲火をアウター4号に浴びせていた。
集中砲火に耐えきれなくなったアウター4号が影の中に
潜り込み、姿を消した。

「……奴があの場所を離れた時点で、俺が戦っておけば良かったな。」
ビルの屋上から一部始終を見ていた男は、そう呟くと踵を返した。

「逃げられたな…。どこかの誰かさんがトドメを刺さないからだ。」
仮設本部車の中で、G-6システムを解除しながら、G-6装着部隊の隊長
元原勘助(もとはらかんすけ)が忌々しそうに呟く。
ライダーシステムを解除し、バックルを懐にしまった朝比奈が
元原に近づき、そして…。
「何が言いたいんだ………。」
言いながら、元原の服の襟首を掴む朝比奈。
その表情には、怒りが浮かんでいる。
次の瞬間、元原の右拳が勢いよく朝比奈の左頬を殴りつける。
「何のためのライダーシステムだ?
 敵を確実に撃破する事を目的として作られたシステムじゃないのか?」
殴られ、その場に思い切り身体を打ち付けた朝比奈が、身体を震わせ
ながら立ち上がり、反論する。
「違う、アウターをに襲われている人を一人でも救うための…。
 アウターに殺されそうな命を一つでも多く救う為の…ライダーシステムだ。
 その、ライダーシステムが人を傷つけたら本末転倒じゃないか!」
朝比奈の反論を聞き、元原が冷たく言い放つ。
「なら、あの時ファイナルベントを放っておくべきだったんじゃ
 ないのか?
 逃げたアウターは、再び何処かで人を襲う。
 その時、命を落とさない人が居ないとは限らないぞ。」
確かにその通りだ。
言われて、朝比奈は視線を足下に向ける。
しかし、あの時ファイナルベントを放っていれば、間違いなくあの子供は
衝撃波で数メートル吹き飛ばされていただろう。
朝比奈達の様に、そうなった時受け身を取る訓練を受けている者ならいいが
そうでない子供だ…。
吹き飛ばされて着地する際、打ち所が悪ければ骨折か…又は死ぬ可能性も
ある。
その可能性を考えると、あの位置からファイナルベントを放てる筈が
無かった。

「二人とも、ちょっと来なさい。」
特務四課捜査室に戻るなり、高梨が、朝比奈と元原に声をかけた。

特務四課の部屋から5分程、警視庁の建物内を移動した所に、長椅子と
自販機の置かれた休憩所がある。
「確かに、未確認生命体を確実に撃破するのが、未確認生命体処理班の目的で
 ライダーシステムは、その為に作られた物よ。」
長椅子に座り、自販機から出てきた、ココアの入ったコップを持った高梨は
二人の言い分を聞いてから答える。
高梨の目の前には、元原と朝比奈が立っている。
「………」
割り切れない表情を浮かべる朝比奈。
高梨は、言葉を続けた。
「特務四課の目的に照らし合わせれば、朝比奈君の判断は間違ってたわ。」
その言葉に、無言で頷く元原。
「でも、朝比奈君の判断は、人としては間違ってない……そうでしょ?
 未確認生命体の撃破とアウターに理不尽に命を奪われる人を、一人でも
 救う事が、同時にできれば……理想だけどね。」
再び、無言で頷く元原。
「解ってるなら良し、二人とも…明日から二日間、特殊謹慎処分を科します。」
立ち上がると、二人にきつい口調で言い放つ高梨。
「特殊謹慎処分?」「解りました。」
朝比奈と元原が、同時に答える。
「明日から二日間、二人とも、特務四課捜査室への立ち入りは禁止。
 アウター出現の際は、私から連絡を入れるので常に連絡を取れる状態は
 維持しておく事。
 それから、連絡が入ったら迅速に行動する事。
 …謹慎とは言っても、連絡が付く範囲内への外出なら自由よ。
 気持ちの切り替えに、軽い休暇をもらった程度に考えなさい。」
「「解りました。」」
高梨の説明を聞き、二人が敬礼しながら同時に答えた。

     


翌日、いつも通りに起きた俺は、昼前まで軽く部屋の掃除をしていた。
折角気持ちの切り替えのためにもらった休暇だが、何をして時間を潰せばいいのか
色々考えてもなかなか思い浮かばない。
結局、神奈川県警から警視庁に配属変更の為に引っ越して以来部屋の中に
置きっぱなしだった、生活必需品の入ったダンボールを開けて中身を
片付ける事ぐらいしか、やる事が思いつかなかった。
とは言え、その荷物もそんなに多く無く、昼前にはほぼ全て片付いてしまった。
「……何、しよっかなあ………。」
部屋の隅のベッドに仰向けに寝転がり、昼から何をするかを少し考えていた。

昼過ぎ、一人の男がラーメン屋の扉を開ける。
「へい、らっしゃい!」
店内に、店主の威勢の良い声が響く。
「久しぶりだな。」
ふて腐れた表情を浮かべながら答えた男に対し
「おっ、久しぶりだねい……どうした、何かあったか?」
店主は明るく話しかける。
「まあ、色々とな。」
狭い店内には、2~3人先客が席に着いている。
皆、テーブル席ばかりで、カウンター席には誰も座っていない。
男は、カウンター席に座ると
「醤油叉焼(しょうゆチャーシュー)ねぎ盛りで」
と、注文する。
「へいっ、醤油叉焼ねぎ盛りね。」
店主が注文を明るい声で復唱し、注文されたメニューを作り始めた。
「一ヶ月ぶりか…仕事で何かあったのか」
メニューを作りながら、男に話しかける店主。
陽気な店主に対して、男は答えた。
「新しく入ってきた同僚と…少し喧嘩をして…な。
 同じ職場で働いていても、目的や理想まで同じとは
 限らないんだな。」
出された水を飲みながら話す男に
「よくわからねーけど大変なんだな。」
チャーシューを少し焦げる程度に焼きながら、店主が答える。
「そいつの持つ、青臭い理想は、俺だってできる事なら実現させたい理想なんだ。
 だけど、それを実現するのはとても難しいんだ。」
言葉を続ける男…。
「なら、そいつの理想を実現できるように、お前さんがバックアップしてやれば
 いいんじゃないか?
 お前さんには、お前さんにしかできない事がある。
 そいつにはそいつしかできない事がある。
 そいつの目的や理想が、お前さんも『できる事なら実現させたい』物なんだったら
 力を合わせれば良いじゃないか。
 ………へいっ、醤油叉焼ねぎ盛りお待ちぃ。
 叉焼一枚多めに入れといたから元気出せよ。」
できあがったメニューを、男の前に置きながら答える店主。
「力を…合わせる?」
男は、驚いた表情で店主の顔を見上げる
自分にそいつと同じ力があれば…そいつとと同じ事をしてたかも知れない。
そいつの力は、自分の力とは違う。
自分が、憧れていた力だった。
詰まる所、自分はなりたかったのだ。G-6装着員ではなく、仮面ライダーに。
そして、人を救い、人に危害を加えようとする異形を倒すその両方を
やってのけられる戦士になりたかった…。
自分はライダーシステムの適合者ではなかった、でも自分には自分にできる事がある。
「お前は、お前のできる事をやったらどうよ?」
店主が、屈託のない笑顔を店ながら言葉を続ける。
「その内、その同僚を店に連れて来いよ、元原。…早く食わねーとのびるぞ。」
元原は、言われてハッと気付くと醤油叉焼ラーメンを食べ始めた。

俺は、バイクを走らせていた。
何をするか、あの後色々と考えている内に思いついたのは
気分転換に山に登ろうという考えだった。
東京郊外の山中の登山用自動車道をバイクで登る。
もう少し登った所に、東京を一望できる休憩所兼展望台がある。
神奈川県警に居た頃から、何度かその展望台には来た事があった。
そこから東京湾の景色を見ていると、色々と嫌な事を忘れられる。
雲の少ない青空が、登山道の右手に見える東京の景色を映えさせる
演出の様に感じられた。

程なく、登山用自動車道から突き出た形に作られた展望台に着く。
展望台には、一台のバイクが停まっていた。
「先客、かな…?」
思った事をそのまま口にして、展望台の縁に木材で作られた柵の方に
目をやると、そのバイクの持ち主らしき人物が立っていた。
柵に近寄る俺の足音に気付いたのか、その人物が振り向く。
「……良い景色だろ。」
少し無愛想な感じに見える、その人物に声をかける。
「そうだな。」
眼下に広がる、東京の景色に目をやりながら"彼"は答えた。
声をかけられたのが気に入らなかったんだろうか…機嫌の悪そうな声だ。
柵に両手を乗せ、眼下に広がる東京の景色に目をやる。
東京都庁や東京タワーも小さく見える。
「こうして見ると…俺達の世界なんて、小さな物なんだなって思うよ。」
思った事が素直に口をついて出た。
「だが、その小さな世界で皆必死で生きている。」
先に展望台に来ていた"彼"が、反応する。
そうだ、…必死で生きている人達の生命を理不尽に奪おうとする未確認生命体
から、人々を守るために作られたのがライダーシステムなんじゃないのか?
未確認生命体を倒す事だけが、人の命を守る方法だとは、俺には思えない。
そんな事を考えていると、柵に乗せている自然と力が入る。
「もっと、肩の力を抜いたらどうだ?」
その様子に気付いたのか、"彼"が呟いた。
「えっ?」
何を言われたのかと一瞬、俺は戸惑う。
「お前一人じゃないんだ、一人ではできない事も…力を合わせれば
 できるかも知れない。」
何故、俺が思っていた事が"彼"に解ったのか解らず、俺の頭の中で一つの疑問が浮かぶ。
「お前は………。」
俺の質問に答えず、"彼"が口元を歪めた。
不敵な笑み、俺には"彼"の表情が、そんな表情に見えた。

     

"彼"の不敵な笑みに、全身がゾクッとした様な気がした。
その時、不意に携帯の着信音が鳴る。
特務四課に配属された時に支給された携帯だ。
「はいっ、朝比奈です。」
「朝比奈君……アウター出現よ。場所は…。」
電話の相手は、高梨課長だった。
「朝比奈君が今居る場所からだと…。
 移動手段はバイク?」
どうやら、俺の居る位置は把握されている様だ。
そう言えば、支給された携帯は特務四課の端末へ常時持ち主の位置を報せる仕組みに
なっていると説明された様な…。
「なら、合流地点は………で。」
高梨課長が、合流地点を指示する。
先に仮設本部車で出動し、合流地点で俺を拾って現場へ移動すると言う事だろう。
「了解。」
俺は、携帯を切ると
「悪い、急用だ…。」
と言い残し、バイクに乗る。

その場に一人残された男…真節 輝次は、少し苦笑すると
「朝比奈光一…か、ライダーシステムの適合者、面白い男だ。」
そう呟きながら自らもバイクに乗り、エンジンを回し始めた。
「もう一体………来るな。」
そう呟くと、朝比奈がバイクで走っていった道を、同じ様に走り出した。

俺は、仮設本部車に合流すると車内にバイクを運び入れ、ベルトを装着し
デルタチェイサーに乗り換える。
G-6システムを装着しながら、元原が呟いた。
「お前一人で戦ってると思うな。到着は遅れるが、俺達も居る…忘れるな。」
一瞬、元原の言葉の意図を計りかねたが、その意味を察し
「解った。」
俺は、そう答えてデルタチェイサーを発進させた。

仮設本部車を追い越し、ハンドルから離した右手でバックルに付いたスイッチを押す。
『変身』―――――――「Turn up」
オリハルコンエレメントをくぐり抜け、仮面ライダーストームに変身すると
俺は、デルタチェイサーの速度を上げた。
アウター出現予測地点は、都心から少し離れたオフィス街…。
できる限り早く行って、アウターを引きつけなければ。

先行するデルタチェイサーの後を追って、アウター出現予測地点に向かう仮設本部車の中で
高梨は呟いた。
「嘘でしょ…。」
アウターサーチャーにもう一カ所、アウター出現予測地点が表示されたのだ。
二つの出現予測地点は遠くもないが、近くも無い程度に離れている。
仮設本部車を、後から表示された方の出現予測地点に向かわせる手もある。
しかし、その場合、先に表示された出現予測地点では、仮面ライダーストームが
一人で戦わなければならなくなる。
高梨は、どうするべきか暫し迷った。
そして………。
「私達は、仮面ライダーストームを"全力で"援護します。」
高梨が出した結論は、先に表示された出現予測地点のアウターを速やかに処理し
後から表示された出現予測地点に向かう、そういう選択だった。

アウター出現予測地点に着いた仮面ライダーストームは、バイクから降りると銃を構えた。
アウターは、まだ出現していない。
出現よりも先に到着した、後は、出現を待つだけだ。
ストームジェネレーターに「3」のカードを読みとらせる。
『ナスティベント』
機械的な音声が、カードを読みとった事を告げる。
程なく、ビルの影から、両腕の先に巨大な鋏の付いた二足歩行のアウターが出現した。
今までのデータに無いアウター、アウター7号(※1)だ。

突如出現した異形の姿に、周りに居た人々が逃げまどう。

仮面ライダーストームは、ストームジェネレーターの銃口をアウター7号に向け
引き金を引いた。
人々が逃げる間アウターを自分に引きつけておくために、音波の出力を絞ってある。
アウター7号の腹部から胸部で、三度火花が起きる。
ナスティベント―――音波弾が、アウター7号の身体に着弾した証拠だ。
しかし、効いていない。アウター7号は音波弾が当たったのを意に介さず
仮面ライダーストーム目がけて、走り出す。
足が遅い…、アウター5号に比べてだが。
仮面ライダーストームは、ストームジェネレーターに「1」のカードを読みとらせる。
『ソードベント』
機械的な音声がカードの効果を告げ、上空から巨大な槍が、仮面ライダーストームの
目の前に落ちてくる。
アウター7号の振り上げた右腕の鋏が、仮面ライダーストーム目がけて
振り下ろされたのと、仮面ライダーストームが目の前の地面に突き刺さった槍を
引き抜き、アウター7号の鋏目がけて振り上げたのは同時だった。
人々が逃げまどう中、アウター7号の鋏と仮面ライダーストームの槍が何度もぶつかり
火花を散らす。

仮設本部車が現場に着いたのはその時だった。
仮設本部車から降りたG-6装着員達は、すぐさま仮面ライダーストームと
アウター7号の周囲を取り囲む。
仮面ライダーストームと、アウター7号の戦ってる場に、逃げまどう人々が間違って
近付かない様にしながら、アウター7号に攻撃するためだ。

同じ頃、もう一カ所のアウター出現予測地点である廃工場に、一台のバイクが到着した。
バイクから降りた男の腰には、幾何学模様の入ったベルトが巻かれている。
男の目の前、廃材の影から巨大な蛇が出現する。
「あいつが逃がした奴か…。」
アウター4号。仮面ライダーストームが戦い、逃げられたアウター。
大蛇が、目の前に立っている男に気付く。
「………いくぞっ!!」
ベルトの中心に付いた赤い宝玉が眩しく光り………男は、異形へと姿を変えた。
男の名は、真節 輝次――――――。

第三話「眩き光」END

       

表紙

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Neetsha