Neetel Inside 文芸新都
表紙

仮面ライダー閃光<グランス>
第四話「仮面ライダーの資格」

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アウター7号の鋏と、仮面ライダーストームの槍が、両者の間で何度も何度も
斬り結ばれ、火花が飛び散る。
両者の周囲を囲んだG-6装着員の持つGM-01-R(※1)から、アウター7号目がけて
弾が乱射される。
アウター7号の背中に火花が巻き起こる。
一瞬、動きが怯んだアウター7号目がけて、仮面ライダーストームが、上段に構えた
槍を振り下ろす。
アウター7号の左肩から右腰に、火花の帯が走り…。
よろめきながら後方に下がるアウター7号。
仮面ライダーストームは、その隙にストームジェネレーターに「K」のカードを読み込ませる。
『ファイナルベント』
機械的な音声がカードの効果を告げ、仮面ライダーストームの背中に蝙蝠の羽が生える。
その羽に導かれるまま、高さ5メートル程の位置まで飛翔し、そこで動きを止める。
背中の羽の角度が変わり。
「ライダ―――ッ、キ――――――ック!!!!」
仮面ライダーストームは、必殺技の名前を叫びながらアウター7号の頭上に急降下する。
アウター7号の身体が縦に二つに裂け、二つの青白い炎の塊となって、地面に崩れ落ちる。
崩れ落ちた青白い炎の塊は、次の瞬間には硝子の破片の様に細かい粒に砕け散り
空気中に溶け込んでいった。
ヘルメットに内蔵された通信機を通して、仮設本部車の中に居る高梨から指示が入る。
「アウター7号の撃破を確認、急いで次の現場に向かうわよ。
 仮面ライダーストームは、デルタチェイサーで先行して。」
言われるままにデルタチェイサーに跨ると、もう一カ所のアウター出現予測地点のデータが
ヘルメットに内蔵されたカメラに地図として映される。
その地図の通りに、アウター出現予測地点へ向かって、デルタチェイサーが走り出した。
G-6装着員を収容した仮設本部車も、後を追う様にアウター出現予測地点へ向けて走り出す。
 
同じ頃、廃工場で全長5メートル程の巨大なコブラ――アウター4号――と戦っている
異形の戦士が居た。
上体を、異形の戦士目がけて叩き付けようと倒してくる。
その攻撃を何度かかわしながら、アウター4号の腹部に蹴りを入れる。
しかし、巨大なコブラの異形には、その攻撃では大きなダメージは与えられない。
「ちっ」
異形の戦士は軽く舌打ちした。
警視庁特務四課…未確認生命体処理班が開発したライダーシステムの装着者なら、背中に
羽を生やす事で、相手よりも高く飛び上がり、そこから相手目がけて急降下する事で
大きなダメージを与える事ができた。
だが、自分には背中に羽があるわけでも、垂直跳びで10メートル近く飛び上がれる程の
ジャンプ力も無い。
せいぜい、垂直跳びで相手の頭の位置ぐらいの高さまで飛べる程度だろう。
決め手に欠ける…そう考え、どう仕留めるか対処法に悩んでいた時に、それは現れた。
デルタチェイサーに乗った、銀色の戦士。
「ライダーシステム装着者………朝比奈か。」
異形の戦士は小さく呟く。

デルタチェイサーから降りた銀色の戦士は、アウター4号と、異形の戦士を見て一瞬
何が起こっているのか解らず戸惑う。
だが、異形の戦士がアウター4号と戦っているらしい事だけを理解し、ストームジェネレーター
を構えながら名乗った。
「仮面ライダーストーム」
と―――。


第四話「仮面ライダーの資格」


「仮面ライダーストーム…?」
異形の戦士は、銀色の戦士の名乗った名前に戸惑う。確か、あいつの名前は朝比奈じゃ
なかったのか?
仮面ライダーストームと言うのは、ライダーシステム装着時のコードネームか何かなのか?
異形の戦士が戸惑っている間に、仮面ライダーストームはストームジェネレーターに「3」
「4」「6」のカードを読みとらせる。
『ナスティベント』『ウイングベント』『トリックベント』
仮面ライダーストームが二人に分身し、両方の背中に蝙蝠の羽が生える。
二人になった仮面ライダーストームは、背中の羽を羽ばたかせ空中に飛翔すると
ストームジェネレーターをアウター4号に向け、前後から挟み込むように位置を取ると
最大出力で引き金を引く。
音波と音波がぶつかり合う、硝子を爪で引っ掻いた時の様な音が轟く様に周囲に響き
その不協和音に、異形の戦士は耳を塞ぐ。
アウター4号の全身に大きな火花が生じ、アウター4号の巨体がその場に轟音と共に倒れる。
正面でストームジェネレーターの引き金を引いていた銀色の戦士の姿が消え
アウター4号の背後からストームジェネレーターの引き金を引いていた銀色の戦士が、右腕でガッツポーズを
作りながら、異形の戦士に向かって叫ぶ。
「今だっ!!」
目の前に倒れているアウター4号の巨体を見て、言われた事の意味を理解した異形の戦士は
その場で構えを取る。
異形の戦士の足下に、金色の紋章が浮かぶ。
そして、飛び上がった異形の戦士は………アウター4号の巨体目がけて落下する。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
アウター4号の巨体目がけて跳び蹴りを放ちながら、異形の戦士は叫んだ。
異形の戦士の跳び蹴りをくらったアウター4号の身体が、青白い炎に包まれる。
その、青白い炎の真ん中に立つ異形の戦士。
青白い炎が、硝子の破片の様に細かい粒に砕け散り空気中に溶け込んでいく。
その真ん中に立ち、駆け寄ってくる銀色の戦士の姿を見つめる異形の戦士。
「やったな。」
銀色の戦士は、異形の戦士に駆け寄ると力一杯叫んだ。
「ところで、お前………誰なんだ?」
銀色の戦士が口にした疑問に答えずに、異形の戦士は雲の少ない空を見上げた。

サイレンを鳴らしながら、一台の巨大なトレーラーがその場に割り込んでくる。
未確認生命体処理班の仮設本部車だ。
仮設本部車が、廃工場内の空き地に停車すると中から二人の人物が降りてきた。

「高梨さん、館塙さん…。」
二人を呼びながら、仮面ライダーストームが変身を解くのと同時に、異形の戦士も
人間の形へと姿を変える。
その人間の姿に驚く朝比奈、険しい表情になる高梨、顔色一つ変えずにその人物を
見つめる館塙。
「お前は……さっきの。」「何故、貴方がここに?」「約、二ヶ月半ぶり…ですね。」
三人が、ほぼ同時に口を開き
「………」
先程まで異形の戦士だった人間―――真節 輝次(まぶし てるつぐ)は小さく頷いた。
「何故貴方がここにいるの?
 さっきの貴方の姿は何?
 どういう事か、説明してもらいたいんだけど…。」
高梨は、真節に近付くと鋭い目つきで彼を睨み、鋭い口調で問う。
「それは、任意か強制どっちだ?」
真節は、冷めた目で高梨を見て答えた。
「任意よ。私達に、貴方に事情を説明する様に強制する権利は…無い…わ。」
そう言うと、真節と交わった視線を逸らそうとする高梨。

「任意なら、拒否させてもらう。」
真節は、高梨の返答を聞くと、そう答えてから近くに置いてあったバイクに乗り
何処かへ走り去ってしまった。

地面に視線を落とし、無言になる高梨。
朝比奈には、そんな高梨の後ろ姿が何故か泣いている様に見えた。
「今は、そっとしておいてあげましょう。」
朝比奈の耳元で、館塙が囁く。
「あの、どういう事なんですか………。知り合い、なんですか?」
小声で問う朝比奈の耳元で
「どうしても知りたくなったら、特務武装研究所に来て下さい。」
とだけ囁いた。

     

三日後…警視庁地下の射撃訓練場で射撃の訓練をする朝比奈の姿があった。
「お前が射撃訓練なんて珍しいな…。昨日のが、理由か?」
隣で射撃訓練をしていた元原が、朝比奈に問う。
「ああっ。」
元原と視線を合わさずに、的を見据えたまま、朝比奈は答えた。
「俺も、強くならなきゃ。…せめて、狙った所に当てられる程度には。」
的の中心に照準を合わせながら、何かに追われているかの様な表情で呟く。

その前の日…つまり、アウター4号を撃破した二日後、未確認生命体処理班に
上から一つの命令が下された。
『アウター4号を撃破した異形の戦士の真意を確認せよ。
 真意の確認が不可能な場合は、捕獲若しくは抹殺せよ。』
高梨は、アウター4号に関する報告書に、アウター4号を撃破した異形の戦士の事を
当然書かなければならなかった。
しかし、それでも異形の戦士の正体が真節であった事実を報告書に記載する事は、躊躇われた。
記載してしまえば、彼―真節 輝次―を未確認生命体関連の事件に再び巻き込んでしまう。
それは明らかだった。
だから、未確認生命体処理班の面々にも、アウター4号を撃破した現場で、真節輝次を
目撃した事は"無かった事"にする様にと内々に指示を出した。
しかし、その報告書を見た上層部が出した指示は、真節輝次の真意の確認又は捕獲か抹殺。
朝会で、その命令が全員に伝えられた瞬間、四課の室内に朝比奈の怒号が響き渡った。
「どういう事ですか、真意を聞く必要があるんですか?
 あの異形の戦士は…アウター4号と戦ってたんですよ。」
感情に任せて叫んだ朝比奈に、高梨は淡々と答えた。
「私達の敵を倒したからと言って、味方だとは限らないわ。
 あの異形の戦士にとって、アウターが敵だったから倒したと言う事実があるだけで
 敵の敵は必ずしも味方とは限らないのよ。
 それに、あの異形の戦士にとって、アウターが敵だったからと仮定したけれど
 私達は、あの異形の戦士がアウター4号を倒した現場に"偶然"居合わせたに過ぎないの。
 あの異形の戦士にとって、アウター4号だけが敵で、実は他のアウターは仲間だったとしたら?
 残酷な話だけど、未確認生命体関連の事例には、仮面ライダー同士が目的の違いから
 戦わざるを得なくなった前例(※2)もあるのよ。」
朝比奈は、言い返せなかった。未確認生命体対策班から引き継いだ資料及び、人類基盤史研究所
から未確認生命体処理班に提供された資料の中には、確かにそういった前例があった。
そして、朝比奈も当然それらの資料には目を通している。
高梨は、朝比奈が納得したものとして言葉を続ける。
「おそらく、上層部の狙いは…味方であれば協力を要請。
 敵であれば、抹殺だと思うけれど………。」
「抹殺なんてさせない…。例え、敵だったとしても。
 敵だったとしても、俺はあいつを止めてみせます。」
そこまで聞くと、朝比奈はそう吐き捨てて四課本部から飛び出した。

そして、それからずっと射撃訓練を続けていた。
ナスティベントを使っている時は、多少狙いが逸れてもダメージを与える事は可能だ。
だが、ストームジェネレーターを通常の銃として使う場合は、素早く正確な狙撃…
つまり、狙った所にピンポイントで当てつつ連射ができるのが理想だ。
時間をかけて照準を定めれば、初撃だけなら狙った所に当てる事はできる。
しかし、ストームジェネレーターは、狙撃用の銃ではなく、連射を前提に開発
されている銃なのだから、二発目三発目と間髪無く狙った所に当てるのは高度な技術が
要求される。
実際、動かない的を相手にしても連射で全てど真ん中に当てる事は朝比奈の銃の腕では
不可能と言わざるを得ない。
「俺は思うんだけどよ…。あの異形の戦士はきっと味方だぜ。
 …だから、無理して強くなる事を考えるよりも、あいつが味方だって信じて
 今、自分にできる事"だけ"をする方が、お前さんには向いてると思うぜ。」
左手をズボンのポケットに入れ、右手に持った銃を連射しながら、元原が呟いた。
元原の撃った弾は、全て的の中心付近に当たっている。
「俺に、できる事?」
朝比奈の銃を撃つ手が止まる。
「お前さんの銃の腕じゃ、限界は知れてる。
 俺みたいな狙撃のプロには決して及ばない。
 それよりは、筋力トレーニングとか…持久力をつけるとか、基礎体力向上のとか
 ライダーシステム装着時の基礎攻撃力を上げる訓練をする方が、お前さんにできる事
 なんじゃないか?」
銃に弾を込めながら、元原は続けた。
「………。」
朝比奈は、元原の言葉を聞くとその場に銃を置き、射撃訓練場を出た。

射撃訓練場の前の廊下を歩いていた館塙は、射撃訓練場から出てきた後ろ姿に声を掛けた。
「おやっ、朝比奈君。射撃訓練でもしていたんですか?」
名前を呼ばれ、ハッとして館塙の方に振り向く朝比奈。腕に、何かの資料の束を抱えた
館塙が、そこに立っていた。
「例の、異形の戦士と高梨課長がどういう関係か…知りたくないんですか?」
「アウターとのファーストコンタクト(初遭遇)の時の…犠牲者の兄………らしいですね。」
アウター4号撃破の後、四課本部に戻った際に、高梨から説明は受けた。
だから、特務武装研究所までわざわざ出向く必要も無い、と考え…特務武装研究所には
行かなかった。
「ええ、しかし…高梨課長が知っていたのはそれだけでした。
 彼が、異形の戦士に"変身"する力を持っている事と、何故"変身"できるかの二点を
 彼女は知らなかったし、知るべきでは無かった。」
意味ありげな言葉を発して、館塙は朝比奈に歩み寄る。
「課長に話したんですか?
 何故、"変身"できるかを。」
「まだです。
 ただ、時が来れば話しますし、貴方は先にそれを知っておくべきだと思います。
 彼もきっと、貴方と同じ"仮面ライダーの資格"を持つ存在だから。」
すれ違いざまに、朝比奈と館塙は、そう言葉を交わしていた。
「仮面ライダーの………資格?」
それが、自分にはあったのだろうか…?
そもそも、何故自分がライダーシステムの適合者だったのだろうか?
ライダーシステムの適合者とは、その資格を持った者の事なのだろうか?
その資格がある人間に、ライダーシステムが使えるとすれば…真節にも
ライダーシステムは使えるのだろうか?
その資格とは、一体何なのだろうか?
頭の中を様々な疑問が行き交う。
朝比奈は、廊下の奥にある特務武装研究所に入っていく館塙の後ろ姿を、そんな疑問を
抱えたまま見つめていた。

     

バイクを走らせていた真節は、道端にバイクを停めると、耳の奥から聞こえる(雑音)に
意識を集中させる。
音がいつもより大きい、近くだ。
腰に力を込めるように意識を集中させると、真節の腰に幾何学模様が施され、中央に
赤い宝玉のはめ込まれたベルトが出現する。
それに合わせて、真節の乗っていたバイクが赤い光に包まれ、市販のバイクから
生物的な赤いバイクへと変化する。
真節は、生物的な姿へと変化したバイクに乗ると、耳の奥から聞こえる音が示す位置を
目指して走り出した。

アウターサーチャーの警報を聞き、警視庁の地下駐車場に高梨が駆け付けた時には
G-6装着員、朝比奈、館塙は既に地下駐車場に揃っていた。
「未確認生命体処理班出動…と言いたい所だけど、その前に。」
高梨は、仮設本部車の前に並んだ皆の前で咳払いを一つして
「以前より上層部に申請していた、仮設本部車の正式コードが認可されました。
 以降、仮設本部車は、登録コード ライドベース と呼称します。」
未確認生命体処理班の面々が乗り込んだライドベースが地下駐車場から出発した。

ライドベースの中で、いつもの様にベルトを装着し、デルタチェイサーに跨る朝比奈。
「デルタチェイサー射出。」
高梨の指示に従い射出されたデルタチェイサーが、いつも通りライドベースに先行し
朝比奈が仮面ライダーストームへと姿を変える。

その頃、アウターサーチャーに示されたアウター出現予測地点には、真節が到着していた。
出現予測地点は、大きなターミナル駅の近くの陸橋の上…。
陸橋の柱の影から、二足歩行のネズミの異形が姿を現す。
突如現れた異形に驚き周囲に人々が逃げ出す中、じっと立ちつくす真節のベルトに付いた
赤い宝玉が光り、真節の姿を異形の戦士へと変化させる。

異形の戦士へと変化した真節は、ベルトの宝玉の前に両手を構え、意識を集中させる。
赤い宝玉が光り、異形の戦士の両手に、真紅の刀身を持つ半月型の短刀(※3)が現れる。
ネズミの異形は、両手の爪を細長い剣の様に伸ばし、異形の戦士に向けて構えをとる。
異形の戦士が、同じ種族では無い事―敵―である事を相手の動きから認識したからだ。
異形の戦士も、短刀を構えたまま暫くネズミの異形と向き合い、間合いを計っている。

先に動いたのは、ネズミの異形の方だった。
ジリジリと短刀を構えたまま詰め寄る異形の戦士。飛び上がり、異形の戦士の
背後に着地するネズミの異形。
異形の戦士の背後に着地したネズミの異形は、瞬時に向きを変え、剣の様な爪で
異形の戦士の背中に斬りつける。
「ぐあっ」
異形の戦士の背中に火花が飛び散り、異形の戦士はネズミの異形の爪を避ける為
足に力を込め軽くステップを踏む。
ネズミの異形の爪の間合いから離れながらネズミの異形の方へ身体の向きを変える。
ネズミの異形の爪の長さは約1メートル。それが、相手の間合いだ。
躊躇せずに、相手の間合いに飛び込む異形の戦士。
ネズミの異形は、左右から斬りつける様に爪を動かす。短刀で、左右から迫る爪を
防ぎ、爪のに短刀を滑らせながらネズミの異形との距離を詰め、ネズミの異形の
腹に軽く跳び蹴りを食らわせる。
蹴りを受け、よろめいたネズミの異形の身体に両手の短刀を上段から交差する様に
斜めに斬りつける。
ネズミの異形の身体に、X字の形に火花が走る。
その場に膝を突くネズミの異形。
異形の戦士はネズミの異形から2~3メートル離れた所まで下がり、構えをとる。
異形の戦士の足下に金色の紋章が浮かぶ。

「真節―――。」

銀色の鎧を装着した戦士が、戦いの場に到着したのはその時だった。
名前を呼ばれて、声のした方を振り向く異形の戦士。
銀色の戦士は、異形の戦士に軽く頷く。
異形の戦士も銀色の戦士に対して軽く頷き、飛び上がった。
「うぉおおおおおおっ!」
空中で、身体を一回転させ、ネズミの異形目がけて蹴りを放つ異形の戦士。
ネズミの異形は、爪を身体の前方で交差させ蹴りを防ごうとするが、蹴りの
威力は強く、ネズミの異形の爪を砕き、ネズミの異形の腹部に異形の戦士の
蹴りが命中する。
ネズミの異形の腹部、蹴りが命中した箇所に、異形の戦士が構えを取った時に
異形の戦士の足下に浮かんでいたのと同じ、金色の紋章が刻まれ………。
金色の紋章が浮かび上がった箇所から発生した青白い炎が、ネズミの異形の身体を
瞬時に包む。
ネズミの異形の身体を包んだ青白い炎が、ネズミの異形の身体を灰に変え
灰が、硝子の破片の様に細かい粒に砕け散り空気中に溶け込んでいく。
「アウター8号撃破確認。」
銀色の戦士のヘルメットに内蔵された通信機を通して、高梨課長の声が
朝比奈に伝わる。

     

朝比奈は変身を解くと、異形の戦士に駆け寄り疑問を口にする。
「お前は………何のために、何の目的でアウターと戦ってるんだ?」
「俺は……彩菜を殺した蜘蛛のアウターを、俺の手で倒したい。」
暫しの沈黙の後、異形の戦士が答え。
「その為に、俺に……俺達、警視庁特務四課に何かできる事は無いか?
 勿論、タダってわけじゃない。お互いに協力する…ギブアンドテイクって事だ。
 人を救う為に、一緒にアウターと戦ってくれ。俺達が蜘蛛のアウターに関する情報を
 得たら、その情報をお前に伝える。それが、条件だ。」
朝比奈が、異形の戦士―――真節に問う。
異形の戦士は、そこで変身を解き真節輝次の姿になると
「人を救う為…か、いいだろう。この力、仇を討つ為だけに使うのは勿体無い。
 …但し、一つだけ教えろ。」
朝比奈の提案に乗る旨を伝え、言葉を続ける。
「仮面ライダーと言うのは何なんだ?」
朝比奈は、館塙から教えられた事を簡潔に伝える。
「人々が異形の脅威に曝された時、風のように現れ嵐の様に戦い、朝日と共に
 帰っていく、そんな戦士達が居るっていう…都市伝説だ。
 俺のコードネーム、仮面ライダー嵐<ストーム>は、その都市伝説を知って
 嵐のように人々の為に戦う戦士、と言う想いを込めて付けた。」
朝比奈の答えを聞き、真節は空を見上げて軽く笑う。
「………俺も、その都市伝説に出てくる一人の戦士になろう。
 閃光の様に力強く輝く戦士………仮面ライダー閃光<グランス>に。」

真節がその場から去った後、朝比奈はライドベースが現場に到着するのを
待っていた。
ターミナル駅のロータリーにライドベースを停車させ、高梨と館塙が
現場に来る。
「おいしい所、あの異形の戦士に持って行かれちゃったわね。」
悔しそうに呟く高梨。
「で、どうでした…?彼と話したんでしょ?」
朝比奈の顔を見れば、答えは聞かなくても解っている。
しかし、敢えてその答えを問う館塙。
「アウター1号に関する情報…それと引き替えに一緒に戦ってくれる。
 そう、答えてました。それから…あの異形の戦士<彼>の登録コードは
 仮面ライダー閃光<グランス>にしておいて下さい。」
仮面ライダー…その単語を聞いて苦笑いする館塙に、朝比奈の問いが突き刺さった。
「館塙さん、"仮面ライダーの資格"って何なんですか?」
一瞬、暗い表情になる館塙。朝比奈は、その暗い表情を見逃さなかった。
しかし、次の瞬間には館塙は普段通りの表情になり。
「『自らが人の道を踏み外さない範囲で、人の為に戦う気持ち』です。
 それが無い人が、どんな力を持っても…それは仮面ライダーとは呼べません。
 貴方にも、彼にも、その気持ちがあるから、貴方達は仮面ライダーなんですよ。」
そう答えて、朝比奈から視線を逸らす様に空を見上げる館塙。
何、クサいセリフ吐いてるんだ…。人間を救う為に人の道を踏み外してるのは
自分自身じゃないか…。そう、自分で言うのも何だが、自分には仮面ライダーと名乗る
資格はない。だから、そう名乗る資格のある者に…いや、者達に人間の未来を託し
自分は、彼らを自分のやり方で全力でサポートする…。そう、決めたんじゃないか。
人の道を踏み外している自分には、この青空は似合わない。
館塙は、雲の少ない晴れやかな空を見つめそんな風に思っていた。

道路の真ん中で子猫が一匹震えていた。
動こうとしても、車が行き交っていて下手に動けば轢かれる。
動かないでいても、いずれは轢かれるかも知れない。
偶々、その光景を見かけたその少女は、車の切れ目を見計らい道路に飛び出した。
しかし、少女は気付いていなかった。
バイクが近付いてきている事に。

バイクに乗っていた男…真節は、飛び出してきた少女の姿に急ブレーキをかける。
「危ないだろ、急に飛び出しちゃ。怪我はないか?」
バイクは少女の手前で停まり、事故を免れた。
「あっ………ごめんなさい。」
震える子猫を抱えて、しゃがみ込んでいる少女。
「………」
「あの、どうかしましたか?」
昔、妹が猫を助けるため道路に飛び出した事があった…。
子猫を抱えた少女を見て、真節はその時に事を思いだした。
まるで、彩菜みたいな事をする…今時珍しい変わった子だ。
そんな想いが頭の中を駆けめぐり、真節は思い浮かんだ言葉を口にしていた。
「………君は………。」
真節の言葉に応えるように、猫を抱えた少女は立ち上がり、自らの名前を口にした。
「……小波です、………倉角 小波<くらかど こなみ>…。」

第四話「仮面ライダーの資格」END

       

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