Neetel Inside 文芸新都
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【18禁】ちんちん小説集
カフカ的なペニス

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 目が覚めるとちんちんがなくなっていた。「今トイレに行ってますよ」と妻が教えてくれた。しかしトイレに行くとそこにちんちんの姿はなく、仕方なく私は歯を磨きに洗面所に行った。先に起きていた息子が「ベランダに出ていった」と教えてくれた。ベランダに向かうもやはりそこには既にいなかった。猫が威嚇している声が聞こえてきた。探すことを諦めて歯を磨き、朝食を食べて出社した。

 会社でトイレに行く際にはちんちんが行方不明になっていることを隠すために、個室に入ってチャックを下ろした。同じタイミングでちんちんも放尿しているようで、尿意は去った。

 ちんちんのない状態の股間は「あったもの」がないだけなのに、何もない状態以上にへこんでいる気がした。穴が空いているように思えた。

 家族の誰かが「どこそこにいた」と教えてはくれるのだが、追いかけても追いかけてもちんちんに巡り合えず、私は諦めて寝ることにした。

 目が覚めると巨大なザムザ虫が枕元にいた。巨大なダンゴムシのような図体であるが、丸まることはできない。蹴り転がすと無数の足をばたつかせた。「リンゴをぶつけるといいんだって」と妻はいうが、虫一匹潰すのにリンゴ一つでは対価が大きすぎた。蹴って蹴ってベランダから外に落とした。地面の上で起き上がってザムザ虫は林に消えていった。
「ちんちんが帰ってきたよ!」と娘が大きな声で教えてくれた。年頃の娘がちんちんなんて大声で言うもんじゃない、と今更思ったがどうせ聞きやしない。しかし広くもない家の中で私はちんちんとすれ違い続けて、結局この日もちんちんなしで会社へと向かった。

 子どもたちはどんどん大きくなり、妻は私のちんちんと戯れている気配がある。私もちんちんのいない生活に慣れてしまい、股間は生まれてこの方ずっとそうでしたよ、みたいな顔をして平らになっている。ちんちんを失って穴ぼこになった気がしていた股間は、ちんちんに振り回されない生活が穴埋めしていった。

 ちんちんも老いたのか、逃げきれずに視界の端に入ることがある。一度だけ真正面で相対したことすらある。お互い何だか気まずくなって、会釈一つして通り過ぎた。

 大きくなった子どもたちがそれぞれ家を出た後、私は妻とちんちんの気配のする家で過ごしている。時々ザムザ虫が入り込んでくる。リンゴは投げずに蹴って追い出している。

       

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