Neetel Inside ニートノベル
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妄言ドッヂ
1話 霊感ごっこ

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ある朝、彼女は言った
「自慢ですが私は幽霊がみえるんです」
「めっちゃスピリチュアルだ」
僕は全力で相槌を打った

10月22日午前4時校門はまだ開かない
この季節の明方は夜とも変わらない暗さ
校門が開くのをダラダラと待っている

天才的にも早起きしてしすぎてしまった僕は
奇跡的に同じく早起きしすぎてしまった不思議ちゃんと運命的な出会いをした
つまり僕は少し浮かれていた。



「じゃあ今、ここに幽霊はいるの?」
「たくさんいますよ」
「幽霊って朝にもいるんだね」
「ええ、いま幽霊達のあいだでは朝活が流行っているんですよ…実は」
まさかの幽霊も健康を意識する時代か

「たくさんってどのくらい」
「いま私たちの周りを10霊くらいで囲んでますよ」
「幽霊って何霊ってカウントするんだ…」
「ええ、これは平安時代に定めらました」
「平安時代ってソレっぽいね」
「…」
「……」
無言だ

「それで?幽霊達はなんで僕等を囲んでいるんだい?」
「輪を作ってます」
「以外にも平和…霊同士から喧嘩や祟り合いでも起きそうなんだけどな」
「手をつないで輪を作って囲んでます」
「…?…かごめかごめ?」
「…ええ、私達を軸にかごめかごめってますね」
「なんか…なんかヤバそうだね」
「朝活ですね、呪殺儀式の」
「時代だねぇ…」

まさかの呪いの中心で話していたようだ
どうりで肌寒いわけだ

「…」
「…?」
「……レイワです…」
「は?」
僕の頭上で?マークが回った

「…だから、霊が輪でレイワ」
「…つまり?」
「いや、時代だねぇ…ってだから」
「??だから?」
「レイワです…」
「…なるほどね」

ソレは随分と前振りの長くて
ソレは笑処が不明確なまま
僕達の妄言は終わった

それから体感数十年、実質数十分
そんな無を経験し僕は少しだけ
大人になった気がした

朝日が横から校舎を照らし
逆光で真っ黒に描写された彼女を見た
用務員が僕達の後を通り過ぎ
校門はガラガラと鳴り、今日が始まった

「私は一一三、いちいちさんとかいてヒトミ」

僕達は儀式中の悪霊を放置して
それぞれの教室に向かった
少しのニヤケ面を隠して


       

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