ゆるっと原作おきば
分岐点/やさい大豆
※セリフ、登場人物、結末など、自由に変更OKです
タイトル「分岐点」
登場人物
・私(女子高生)
・母親
11月、天気晴れ
私は下校している
私は暗い顔で一人ぼっちで歩いている(友達いないかんじ)
周囲には談笑する生徒たち
家に近づくにつれて周りの景色も変わってくる
私は一人、田んぼと家が入り混じるあたりを歩いていた
ふと田んぼの真ん中くらいに黒い猫がいるのに気が付いた
なんとなく猫と目が合った気がした
私に気づいたのか猫がニャーンと鳴いた
まるで私を呼んでいるようだった
周りに人がいないのを確認して田んぼの中に入っていく
稲刈り後とはいえ、人の田んぼに勝手に入ることに罪悪感と緊張と興奮を感じた
普段の私からは想像できないほど大胆な行動だった
つまらない日常に突然現れた面白イベントを逃したくなかった
近づくと猫の後ろ足がぺちゃんこにつぶれていることに気が付く
さらに腰が曲がって骨が見えていた
一瞬で血の気が引き、一気に現実に引き戻されてしまった
軽い気持ちで猫に近づいてしまったことを後悔する
私はしばらくその場から動けずにいた
(きっと車に轢かれて、ここで動けなくなったんだ・・・)
助けたい気持ちと逃げたい気持ちが交差する
心が必死に言い訳を考える
(この傷じゃ、治療しても助からないかもしれないし・・・)
(そもそもどうやって動物病院まで連れて行くの?・・・)
ゆっくりとゆっくりと、猫から離れていく
(ごめんごめんごめんごめん)
心の中で謝り続ける
田んぼの畔から歩道に上がると猫が私に向かって鳴いた
背筋がぞっとして、猫を見捨てようとしている自分の残酷さに押しつぶされそうになる
この状況から逃げたくて
その場を去った
家に帰っても猫のことが頭から離れなかった
それとなく母親に話してみた
私 「さっき、田んぼにケガをした猫がいたんだけど・・」
母親「ん?猫?、、、車にでも轢かれたのかねー」
私 「うん、そうみたい・・・それで――」
母親「最近猫多くない?この間も轢かれてるの見たよ。」
私 「・・・・・あ、」
母親「それよりお風呂!お夕飯の前に入っちゃいなさいね」
私 「・・うん」
風呂に入って考える
(結局何もできなかった)
湯船につかると冷えた身体が温まり、猫のことが少しづつ頭から離れていく
さっきまであんなに辛かった気持ちが楽になってきていることに自分でも驚いた
(猫が車に轢かれることってよくあることで、それは私にはどうしようもないことなんだ)
(私が見たのはこの世界のどこにでも起こる仕方のない出来事・・・)
湯船からあがりシャワーを浴びる
落ち着いたはずの心、しかし、どこかすっきりとしない重苦しさが残った
次の日、猫のいた場所を通ることが怖かった
意を決して進み、恐る恐る田んぼのほうを見た
猫は、、、いなくなっていた
「え?」と思って周囲を見渡すが猫の姿は何処にもなかった
(・・・あの後、猫になにがあったんだろうか・・・)
不思議に思いつつ再び歩き出した
昨日のこともまるで嘘だったように思えた
私は歩く、一人ぼっちの通学路、周囲には談笑する生徒たち
この道の先には友達のいない学校が待っている
いつものように沈んだ表情で私は歩く
こんな空っぽな時間がいつまで続くのだろう
ふと、風呂場で感じた重苦しさが湧き上がってきた
(もしあの時、私が母に自分の気持ちを打ち明けられていたら・・・
猫に、いや、私自身に違う未来があったのかもしれない・・・)
自分の弱さにうんざりして
無力感だけが残った
おわり
