Neetel Inside 文芸新都
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ヤング作家が文ゲイに挑戦しましょう
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何事においても「知らないこと」ということ異常に嫌っていた。
私に属する世界、数式で言えば「私⊃世界」といったところか。
それは一種の宇宙観測論の様、それこそが私が落ち着ける思想だった。

だから私は、私の世界、とりあえず日本に存在する未知を排除し続けた。
国籍や生い立ちが不明である人間。片っ端から殺してきた。
言っていることや理論が破綻している人間。片っ端から殺してきた。
未知をどんどんと生み出す高い役職や身分の人間。片っ端から殺してきた。
彼らの未知は私によって「消失」という既知で上書きされるのだ。

私が求める定義、の定義はそれがこじつけであろうと構わなかった。
そこら辺に転がっている石でさえ人間によって名前が付けられているのだ。
結局定義など一般の多数の人間によるもので、それは正確には定義ではない。
定義とは完全な第三人者、例えば神にでも決めてもらわないといけないのだ。
なのでこの世界での定義と呼ばれるものはあまりアテにはしなかった。

ある日、未知の人間を排除する方法に失敗が生じてしまい
国の下の拘束され私自身が排除されることとなった。
私を排除するのに審議される時間は全く無いものに等しかった。
役員はいつもに比べさぞ楽な思いをしたことだろう。

階段を上らされ、目の前に現れる垂れ下がる縄。
世界とは「知られない方向」へ進むのがこの世の自然の摂理であり、
その事は自分も承知していた上で「知られる方向」へ進めていたのだから。

いつのまに自分が未知を消すことによって未知が増えるスピードが
上がっていたという本末転倒になっていたのに気付いたのは死ぬ2秒前だった。
それまではあまり自分が死ぬことをあまり素直に受けいられなかったが
その事実に気付いた後はひたすら気持ちが良かった。
それは、自分の思想によって得られる落ち着きを上回るものであった。

だから私は2秒間の間、心から悲しみ、死者に黙祷を捧げ、
あとはただただ楽に、垂れる縄に、自分の体を任せる。

       

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