漂泊者
3.マレーシア「クアンタン」(2026/02/13更新)
目の前を歩くヒジャブを被った女性がトイレの入り口にある料金箱に手をかざし、お金を入れた振りをして腰ほどの回転式のゲートをすり抜けていく。どうやらトイレを利用するのに、0・5マレーシアリンギットかかるらしい。僕は日本円にして20円を支払った。
クアラルンプールから高速バスで約三時間。日本にあるものと遜色の無い階層構造になった近代的なバスターミナルから、日本の屋外野球場のコンコースのような無骨で巨大な屋根の下の、吹きさらしになったクアンタンのバスプールに降ろされた。乗客は片手で数えるぐらいだった。
むっとした自然の空調が皮膚にべったりと張り付く感覚。売店の店員もベンチでバスを待つ客もどこか億劫に見える。
市街地まで歩くには些か距離があったので、タクシーアプリからグラブを配車した。
7キロ300円で今日宿泊するホテルの横につけて貰う。
幹線道路沿いに立った商店の連なりの中にある小さなホテル。
ドミトリー、一泊千円。値段の割に設備は新しく綺麗だった。ほんのりと建材から出るケミカルな臭いがする。昼過ぎにチェックインしたからだろうか、誰もいない。結局、チェックアウトまで貸切状態だった。
荷物を置いて外に出る。
暑い日差しが容赦なくカッと肌を刺激する。島根県ほどの人口規模がありながら、人の姿をそれほど見ることがないのはこの暑さのせいなのだろうか。
クアラルンプールのマクドナルドでブブールアヤムという日本人の舌にも合うお粥を食べてから一切何も口をつけていなかったので、お腹が減ってきた。
メガモールやスタジアムの立ち並ぶ都心部の一角に、馴染みのある緑と青に白を挟んだ馴染みのあるコンビニが目に入った。
タイではセブンイレブンが圧倒的存在を放ち、そこから南に流れ着くと、ファミリーマートも顔を覗かせてくる。
パスタとスナックとスプライトを持ってレジに並んでいると、ヒジャブの女性が子供の手を引いて、カウンターにあるおでん鍋を指さして、店員の女性によそって欲しいものを伝えているようだ。
日本では冬に食べるものという印象深いおでんが常夏のマレーシアで食べられていることに驚いた。
定番の玉子や大根もあるが、トムヤムクンの出汁にイーミーなる麺まである。
英語表記の下に日本語も併記されていて、日本人の需要もあるのだろうか……?
お腹を満たすと、海の方へ向かうことにした。
クアンタンの市街地は川に面しており、思ったよりビーチへは歩くには遠かった。
テロッ・チェンペダという観光地化された有名なビーチがあってバスでそこに向かうした、が、市庁舎のすぐそばから乗ったそのバスは、一旦海の方へ向かったものの、そこから真逆の方向へと進路を取っていることをスマホの地図が教えてくれていて、慌てて降りることになった。
バスの心地の良い振動と安心感で気が遠くなった分、結構な距離を走っていて、見ず知らずのロードサイドに一人取り残されてしまった。
日本のように山が見えないので、空が高い。とりあえず海を見に行こう。どうせ逆側で待っていれば帰りのバスは来るのだから。
2キロほど歩いて、海浜公園のように丁寧に区画された植樹の向こうに、茶色のライトハウスのようなモニュメントが見え、ようやく海にたどり着いたことが分かった。
パンタイ・ケンパダン、という海岸らしい。
遠くまで続く砂浜と、風によって陸の方へなびいている椰子。沖縄やハワイのような青々とした海ではなく、浅瀬は茶色く濁り、沖の青黒さと対照的な色をしていた。
疲れたので、東屋にあるベンチに座る。
すると、ベンチの下から怪訝そうな顔をした痩せた茶色い猫が顔を覗かせて、隣に座ってきた。
海外の猫は狂犬病を持っているかもしれないので、ワクチンを打っているとはいえ、撫でたりといったこともできず、しばらくの間猫の好きなようにさせていた。
遥か遠くで遊んでいる人達以外は、ほぼ貸し切りといった感じで、人間より猫の方が多いのではと思うほどだった。
三◯度を超える気温だが、海から心地のよい風が流れてくる。
或る人が薦めていた、なぜクアンタンなのか、少し分かったような気がした。
クアラルンプールから高速バスで約三時間。日本にあるものと遜色の無い階層構造になった近代的なバスターミナルから、日本の屋外野球場のコンコースのような無骨で巨大な屋根の下の、吹きさらしになったクアンタンのバスプールに降ろされた。乗客は片手で数えるぐらいだった。
むっとした自然の空調が皮膚にべったりと張り付く感覚。売店の店員もベンチでバスを待つ客もどこか億劫に見える。
市街地まで歩くには些か距離があったので、タクシーアプリからグラブを配車した。
7キロ300円で今日宿泊するホテルの横につけて貰う。
幹線道路沿いに立った商店の連なりの中にある小さなホテル。
ドミトリー、一泊千円。値段の割に設備は新しく綺麗だった。ほんのりと建材から出るケミカルな臭いがする。昼過ぎにチェックインしたからだろうか、誰もいない。結局、チェックアウトまで貸切状態だった。
荷物を置いて外に出る。
暑い日差しが容赦なくカッと肌を刺激する。島根県ほどの人口規模がありながら、人の姿をそれほど見ることがないのはこの暑さのせいなのだろうか。
クアラルンプールのマクドナルドでブブールアヤムという日本人の舌にも合うお粥を食べてから一切何も口をつけていなかったので、お腹が減ってきた。
メガモールやスタジアムの立ち並ぶ都心部の一角に、馴染みのある緑と青に白を挟んだ馴染みのあるコンビニが目に入った。
タイではセブンイレブンが圧倒的存在を放ち、そこから南に流れ着くと、ファミリーマートも顔を覗かせてくる。
パスタとスナックとスプライトを持ってレジに並んでいると、ヒジャブの女性が子供の手を引いて、カウンターにあるおでん鍋を指さして、店員の女性によそって欲しいものを伝えているようだ。
日本では冬に食べるものという印象深いおでんが常夏のマレーシアで食べられていることに驚いた。
定番の玉子や大根もあるが、トムヤムクンの出汁にイーミーなる麺まである。
英語表記の下に日本語も併記されていて、日本人の需要もあるのだろうか……?
お腹を満たすと、海の方へ向かうことにした。
クアンタンの市街地は川に面しており、思ったよりビーチへは歩くには遠かった。
テロッ・チェンペダという観光地化された有名なビーチがあってバスでそこに向かうした、が、市庁舎のすぐそばから乗ったそのバスは、一旦海の方へ向かったものの、そこから真逆の方向へと進路を取っていることをスマホの地図が教えてくれていて、慌てて降りることになった。
バスの心地の良い振動と安心感で気が遠くなった分、結構な距離を走っていて、見ず知らずのロードサイドに一人取り残されてしまった。
日本のように山が見えないので、空が高い。とりあえず海を見に行こう。どうせ逆側で待っていれば帰りのバスは来るのだから。
2キロほど歩いて、海浜公園のように丁寧に区画された植樹の向こうに、茶色のライトハウスのようなモニュメントが見え、ようやく海にたどり着いたことが分かった。
パンタイ・ケンパダン、という海岸らしい。
遠くまで続く砂浜と、風によって陸の方へなびいている椰子。沖縄やハワイのような青々とした海ではなく、浅瀬は茶色く濁り、沖の青黒さと対照的な色をしていた。
疲れたので、東屋にあるベンチに座る。
すると、ベンチの下から怪訝そうな顔をした痩せた茶色い猫が顔を覗かせて、隣に座ってきた。
海外の猫は狂犬病を持っているかもしれないので、ワクチンを打っているとはいえ、撫でたりといったこともできず、しばらくの間猫の好きなようにさせていた。
遥か遠くで遊んでいる人達以外は、ほぼ貸し切りといった感じで、人間より猫の方が多いのではと思うほどだった。
三◯度を超える気温だが、海から心地のよい風が流れてくる。
或る人が薦めていた、なぜクアンタンなのか、少し分かったような気がした。