Neetel Inside 文芸新都
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下暗灯記(しもあんとうき)
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  仄暗い月の明かりが、私を包んでいた。ぼぉーッと光る夜の下、私はたばこをふかしていた。煙が赤くぼぉと燃える。いい加減な雪が、ぽつらぽつらと肩へ舞い降りる。
 私は今日、母のお葬式に来た。お葬式の設営やらなんやらは兄弟がやってくれた。こんな親不孝な兄で、申し訳ないと思っているが、私は何もしゃべれないし、何も行動できない。そんないい加減な私が私は嫌いだ。
 母親の死ぬ間際も居れなかった。いや、行きたくなかった。たぶん、もうあの兄を見たくないと言っているだろう。しかし、兄であるという自覚は少なからず持ち合わせており、私は勇気も大したあれもいらずしてその葬儀会場へ足を運んだ。
 暗い光が、私を包んでいる。この時は、安心できた。葬儀会場のドアが目の真ん前にある。しかし、私には開けれん。母を見たくないし、私を悲観へ追い込むだけである。その意地汚い保守心が、私を邪魔している。
 たばこでも吸って、安心しよう。
 私はたばこに火をつけた。またぼぉと燃える。くそっ、沁みる。くそ。私は無価値な人間だ。なににでもなれず、何者でもないという精神もプライドというあほで封じている。価値無野郎。馬鹿野郎。俺は人を殺したんだ。ああ! 人を殺したんだ! こんくそ。
 抱く女もいない、子もいない。自分を認める人もいない。ない物ねだりも甚だしい。ないない言って、ありもしない幻想を求めて、ないない言う。ないないうるせぇぞ。
 ああ、あの月を見たくない。月は、もう勘弁だ。
 ああ、山田。山田君に会いたい。あの月に居る山田君に、会いたい……。
 月がぼぉと光る頃、私らは二人で雪降る道を踏み固めていた。山田君は、優しい心の持ち主であった。こんな甲斐性無の私にも、優しい顔で接してくれた。
「山田、来週受験だろ? そっちは進んでんのか? 」
「順調だよ。でも、緊張で目の前が真っ暗だ。人生が決まっちゃうわけだし……」
「んだよ、そんなんで決まるわけないだろう。」
太陽が沈んでいた。私らを包んでいた。
 私は小道へ入った。そこからすうと通るところが家である。
山田君はトランペットの達人であり、私も聞いたことあるが、耳を突き通すほどの繊細な美しさであった。
「山田君。今日、家で遊ばないか?」
「いいよ、受験が近いし、受験がおわったらでいいだろう? 」
「いいからさ、さ! 入って入って。」
氷が張っている斜面。私の腕が山田君に嚙みついた。
「離せよー。は・な・せって。」
冗談が行き過ぎていた。しかし、私の心は、力の入っている山田君の手を急に離し、どう滑るか見たかった。
つるん!! 
山田君は見事に滑った。その道に車が一気に通りすぎ、そのまま轢ききってしまった。
私という人間は愚かだ。なににもなれず、後悔も背負えない。自分を叱っても、そこにはナルシズムが多分に含まれていた。なににいてもなににもなれぬのだから月になりたい。。
絶えてしまえ。絶えてしまえ。山田が死ぬんなら俺が死んだほうがよかった。灰と共になくなってしまえ。
私は、雪道を、希望を持ち歩けていけるだろうか。

       

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