Neetel Inside 文芸新都
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虹のかけら
あじさい (2008/06/08)

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Blue Hydrangea on Flickr - Photo Sharing!
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一年を通して、雨がうっとおしくもそれでいて愛しく思えるのはこの季節だけだ。それはたぶん、己の内側へ内側へと意識を向けさせるちからがあるのだろう。そのようなことが、かの有名な作家の残した言葉にある。

「過去と思いは長雨に」

まさしく今の状態とこの天気を表している。次から次へと昔の情景が涌き出て、しっとりと心ににじんでいくのを感じる。



傘を忘れた学生の日、君は手を差し伸べてくれた。私の心は喜びにあふれ、こんな天気なのに晴れ上がった気分になった。そしてこの雨がずっとずっと降り続いてくれたらと願った。しかしその気持ちとは裏腹に口から出たのは、断りの言葉だった。

「だいじょうぶだから。」

思春期は自分の心さえ思い通りにさせないものだ。君はどんな気持ちだったのだろう。その時の顔は雨にさえぎられてよく思い出せない。でも今なら。



あの作家の本のから特に好きな一節を。
「暖かく淑やかな雨は窓ガラスを撫で、外の風景を柔らかく映し出す。思い返してみては景色にはあじさいがいつもあり、今、青紫と緑に窓は彩られ、長雨は明るい灰色の空より降り注ぎやさしく地面に染み入る。」

       

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