Neetel Inside 文芸新都
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ポテンシャル

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●ポテンシャル

ポテンシャル【potential】

1.潜在的な力。可能性としての力。「事故の―を予測する」
2.重力場の中にある粒子がもつ位置エネルギーを、位置の関数で表したスカラー量。
3.電位

――

 フェンスを越えて忍び込んだ、乾いたコンクリートの上。
「馬鹿みたい」
 微笑する彼女の横、プールサイドに立ち尽くす。
冬の風はまるで僕らを甘やかすようで。
「この季節に…よく考えれば当たり前のことなのに」
 夏に溺れたプール。
「絶対泳いでやるって思ったのに」
 彼女は水着やらが入った鞄を放り出し、おもむろにプールサイドに座ってプールの中に両足を垂らした。
 無音である。
「馬鹿みたい、ほんと」
 涙声になる彼女。僕は後ろからそんな彼女を眺めた。
「あんたにはわかんないでしょうけどね、完璧な存在のあなたにはわからないでしょうけど、グズのあたしは感じてたのよ。今なら泳げるって。可能性とその能力を。だって、色々調べてまわって、それから……それから――」











 夏に溺れたプール。もう水はない。

       

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