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晴レノ日電車

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●晴レノ日電車

日差しが頬を撫でる。
朝の電車がたまらなくすきだ。通勤ラッシュであるが、そんなに乗客が多くはないこの私鉄電車の揺れとか、正面のひとの視線の先を探すのとか、そういうことが朝の電車の中ではすることができて。
こんなに柔らかい光があるのだから、車内の電灯はいらないのに。
ぼうっとそんなことを考えながら、目を閉じた。

がたん…たたん…

電車はリズムを刻みながら進んでゆく。

「小春?」

え。

「寝てんの」
視界が開けた。声をかけてきたのは見知らぬ男子高校生高校生。私は驚いて口の中でお前誰だよと呟いた。そしてようやくちゃんと言葉を発した。
「なに、だ、だれっ」
「誰、て!唯だよ…唯!」
「し、知らないよ!」
「はあ?じゃあお前誰だよ」
「こっちの台詞だ!」
「小春大丈夫か?どした?なんかあった?」
「小春じゃない!誰だよそれ!僕は小春じゃない!」
「僕?女の子だよね?」
「えっ、あっ…あー…癖なんだようるさいな!悪いかよ!」
「名前は?」
「唯」
「…今、なんて」
「唯だよ!Y・U・I!唯!」
「同じ、名前」
「…あ」

日差しが頬を撫でる。
朝の電車がたまらなくすきだ。通勤ラッシュであるが、そんなに乗客が多くはないこの私鉄電車の揺れとか、正面のひとの視線の先を探すのとか、そういうことが朝の電車の中ではすることができて。
―あとは、自分と同じ名前の少年に会うことができる、唯一の場所で。
ぼうっとそんなことを考えながら、目を閉じた。

「小春」

視界が広がる。

       

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