沈黙。その間に、静ちゃんの表情から笑顔がスッと消える。
「そう。それがかっこいいとか思ってるわけ?」
「そんなんじゃなくて、介抱してくれたのは有難いけどこれ以上迷惑はかけられないから」
「迷惑、迷惑ねぇ。受験前の夜中にこうやって貴方の相手をしなきゃいけないこと以上の迷惑があるのなら教えてほしいものだわ」
「だからごめんって。もう行くよ。邪魔して、ごめん」
――フゥ。
 立ち上がった僕に静ちゃんが大きく溜め息を吐く。
「のび太さん。あなたは昔はおバカで何をやってもどん臭い人だったわよね」
「だから、何?」
 ぶっきらぼうに返すと彼女は嘲笑うかのような表情で僕を見る。実際さいには見上げられているのに見下されているような錯覚を覚えた。
「いつだってたけしさんにいじめられて、都合が悪くなるとドラちゃんに泣き付いて、本当に情けなくてつまらない人だったわ」
「……」
ここで彼女はもう一つ大きな溜め息を吐いた。そして、
「だけど友達を信じて仲間に助けを求めて頼ってくれる人だった。少なくとも今の貴方より素敵だった」
 言った。
 僕は答える言葉を見付けられず、ただ立ちすくむ。
 不意に、涙が頬を伝った。
 唇がぷるぷると震えている。
――ポン、と立ち上がった静ちゃんが僕の頭に手を乗せ、
「かっこつけるのなんて貴方には似合わないわよ。話してみなさい」
 言われた瞬間に堰を切ったように涙が、想いが溢れだし、僕はまるで子どものように泣いた。
「親が集中できるようにって家をあけてくれてて良かったわ。男の子を泣かしたなんてお母様にバレたら殺されちゃう」
 困ったように言いながら、彼女はぽんぽんと僕の背中を叩いてくれた。

 ***

 僕の説明は感情が昂ぶっていたためか、要領を得なくて、たどたどしくて、へたっぴだったけど、それでも静ちゃんは無言でちゃんと聞いてくれた。
 説明の途中で、また馬鹿みたいに涙がでてきて、僕はみっともなく泣いてしまったけど、それでも彼女は笑わなかった。
 大まかな説明を終え、彼女のリアクションを待つ。
 しばしの沈黙の後、彼女はハンッと鼻で笑うように息を吐くと、
「卑怯だなぁ」
 言いながらあさっての方を向き、ソファにもたれた。
「え?」
 わけがわからず尋ねると、
「こっちのハナシ」
 そう言って彼女は立ち上がった。
「たけしさんとスネ夫さんを呼ぶわ。二人は私立志望だし今は暇してるでしょ」