――ほうっ。
土管の上に腰掛けて、大きく息を吐いた。
体内から吐き出された水蒸気が白くたゆたって空に消えていく。
まったく、土地の再開発が進んでいるというのにこの空き地はまだあったのか。子供がここで遊ばなくなって久しいのに土地主は何を考えているんだろうね。そんなことを考えて僕は、これから、運が悪ければ死んでしまうかもしれないというのに思わず笑ってしまった。
思えば僕の小学生時代はこの場所と共にあったといっても良い。
よく野球をした。
それで窓ガラスを割って神成のおじさんに怒られもした。
ここで昼寝もした。
ママと喧嘩して家を飛び出したときも真っ先にここに来たものだ。
ジャイアンのリサイタルもここでよくやってたっけ。
全く、いつからだろう。
いつから、僕はここに来なくなっていたんだろう。
僕が遊びを断るようになってもジャイアンとスネ夫はここで遊んでいたんだろうか。安雄やはる夫とはクラスが変わってからとんと疎遠になってしまったけど元気かな。当時のことを考えながら目を閉じればその光景がまざまざと思い出されるから不思議だ。
そして、その思い出には必ずドラえもんの姿もあった。
価値観はどんどん変わっていくだろうし、何が大切かなんていまの僕にはまだよくわからない。
でも、この頃のことは胸を張って楽しかったといえるし、今でも僕の大切な思い出だ。
きっと、守るべきものだ。
この戦いが終わったらみんなとここでキャッチボールでもしよう。
あの頃みたいに楽しめるかはわからないけど、それでもきっと大事な何かを思い出せると思う。
僕は目を開け、空き地の入り口を睨みながら、彼らの到着を待った。
空には厚い雲が垂れ込めて、ぼんやりとした光だけが、月の存在を教えていた。
***