Neetel Inside ニートノベル
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「そっちはうまくいったかい?」
――プッという微かな音でもって回線が繋がるなり、電話の向こうの相手に向かってスネ夫はそう切り出した。相手はジャイアンだ。
「あぁ、たぶんな。見えないからよくわかんないけど」
「うーん、だよねぇ。一応念のためにもう一度試しておいて。僕のほうもたぶんうまく行ったと思う」
 言いながら、うろんげな瞳で空を見上げると、僅かに雲が切れて、そこから満月が覗いていた。
「けど、これでよかったのかな?」
 電話の向こうで心配そうにジャイアンが言うのを、彼は鼻で笑う。
「これで良いのさ」
「けどこれじゃ二人との約束を破ったことになるんじゃないのか? なんだか不安になってきたぜ」
 月光に照らされながら、スネ夫はさらに笑う。
「意外に小心者だよね、君って。さっきも言ったけどこれでよかったんだよ。のび太のためを思えばこそさ」
「そうなのかなぁ……」
「じゃあそろそろ電話切るね。安全かどうかもわからないし」
「おう」
 そして電話を切るなり、彼は大きくため息を吐く。と、同時に月は再び厚い雲に覆われ、小さく俯いた表情は伺えなかった。
「皆が一緒にいられたら、か」
 嘲笑めいた笑いとともに、誰にともなく吐き出されたその言葉は、白い呼気にのってほどけ、夜の闇に溶けていった。

       

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