Neetel Inside ニートノベル
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「嘘……でしょ?」
 顔は逸らしたまま目だけで彼女を見ると彼女は相変わらず目を大きく見開いたまま僕を見つめている。そこにはさっきまでの無表情はかけらものこっていない。
「嘘じゃないよ」
 なんとなくばつが悪くて、僕はもごもごと口の中だけで答える。対して、
「だって……だってだって、ボクはロボットだよ」
 早口にまくし立てる彼女に僕は一つため息を吐く。
「そんなの関係ないよ。少なくとも僕には人間にしか見えないし、君には感情だってあるじゃないか」
「見た目だって作られたものだし、感情だって、ボクが自分で考えてると思ってることも本当はプログラムされたもので、作り物かもしれないんだよ?」
 なぜだか一生懸命にしゃべる彼女に僕は小さく笑ってしまった。それからゆっくりと彼女の方を向いて、少し考えて答える。
「それは僕たちだって一緒だよ。本当に自分で考えてるかどうかなんて誰にもわかりやしないんだ。仮に誰かにインプットされた感情でもそれならそれでかまわない。
 僕はこれからもみんなと笑っていたいし、ずっと君と一緒にいたい」
 一瞬の沈黙があって、スイッチが入ったかのようにドラえもんが泣き始めた。両手で顔を覆い、溢れてくる声を押さえることもしなかった。
 僕は立ち上がり、本当に女の子にしか見えない彼女のそばに近づき、震えるその肩を抱きしめた。
「何でそんなこと言うの?」
震える声で、ドラえもんが尋ねる。
「卑怯だよ。そんなのせこいもん」
「ごめん」
 小さく謝ると、唐突に彼女も僕の背中に手を回し、力いっぱい抱きしめ返してくれた。
「謝らないでよ。嬉しいんだから。ボクだってずっと一緒にいたいんだから」
 あまりにも不意打ちなその言葉に僕が体を離し、その意味を尋ねようとした瞬間だった。
「だけど、」
 彼女が強く強く僕を抱きしめ、
「だからこそ、君のことが大好きだからこそ君を犯罪者には出来ないよ」
 そう言った。

       

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Neetsha