Neetel Inside 文芸新都
表紙

マタギ短篇集
桜子ちゃん

見開き   最大化      

 私は桜子。高校四年生の女の子。正確には高校三年生。軽くひきこもってたらダブっちゃった(笑)そんな私は三度のメシより歌が好き。
 るーるーるるるー。夜が明けそう。まだ、スズメはチュンチュン鳴いてない。そろそろカラスはカーカー鳴きはじめるかもしれない。でも、今聞こえるのは私が歌う夜明けのスキャットだけ。身体に響く音と部屋の壁にはね返った音が私をドキドキさせる。こんなことばっかりやってたら社会に出て行けないよ。ドキドキ。また留年しちゃう。ドキドキ。でもわかってる、これは嘘のドキドキ。本当のドキドキはもっと切実で高尚なんだ。心の臓が締めつけられるようなドキドキ。味わってみたいな。
 
 今日は夜明け前の散歩に行けなかった。いつもヴォイスを連れて近所の河沿いを歩く。土手の上から河川敷を見渡すと、人がいるときといないときがある。当たり前だね。人がいるときはヴォイスと一緒に土手に座って高みの見物。人がいないときは? 人がいないときははりきっちゃう。なんてったって広いんだ、河川敷は。野球のグラウンドがあるんだもん。誰もいないグラウンド、バッターボックスで種田のマネをする。これはね、ちょっとドキドキする。乙女が大股開きでヴァーチャル・ベースボール。ピッチャーは時によって変わるけど、最近は茂野吾郎(旧姓本田)が多いかな。ジャイロジャイロ(笑)。浮き上がってくる球をバントする。走って走って、それでも走って、ときたまムーンウォーク。それでもヴァーチャルだから絶対可憐ホームランなんだけど。バントでホームランって、それなんて超人ウルトラベースボール(笑)。そんなときはヴォイスも横を走ってる。舌をヴェーロンって出して、息をはあはあ。抱きつかれると吐息がモロに鼻を直撃する。臭くって臭くって一回ゲロっちゃったこともあるな。でもヴォイスは基本キャワイイよ。……あっヴォイスの紹介が遅れちゃった! ヴォイスは我が家の飼い犬でシベリアンハスキー、私がまだ幼女だったころから飼ってるからそろそろ寿命かな……。息が臭いことに定評があるヴォイスには、今や私しか近づかないよ。パパもママもユウヤも薄情なんだから……。プン、プンスカ。
 
 もうすぐ朝ごはんの時間だ。今朝のおかずはナンダロなー。あっ、さっき「三度のメシより歌が好き」って言ったけど、あれは嘘(笑)。メシも捨てがたいよ。食べなかったら死んじゃうもんね。うちのママは料理上手だからごはんが楽しみなことこの上ない。ホント、うちに生まれてきてよかった。仕事の前にちゃちゃっと朝ごはんをつくるママ、ホント尊敬してる。ちなみにママは銀行員だよ。パパは貧乏人(笑)。パパはハローワークって会社に勤めてるみたいなんだけど、毎日なぜか家でごろごろしてる。会社にも色々あるんだねー。ユウヤは弟だよ。今は中学二年生、受験だ受験だって言ってるけど私はまだ早いと思うな。ユウヤはイケメンだから学生生活楽しまないとね。……私の分まで。でも、でもね、ひとこと言っておくけど私だって捨てたもんじゃないんだよ! この前だって、「私ってキャワイイ?」ってパパに聞いたら、「はいはいエロカワエロカワ」って言ってたし。私もそう思う。出会いがあればなー。モテるはずなんだけどなー。でも出会いなんてあるはずない。だって私は軽いひきこもりだっちゅーの(パイレーツ)。
 あっママが呼んでる。るーるーるるるー。テンション上がってきた! 暇で文章書きはじめたけど、これもちょっとドキドキの部類だね!  私はドキドキを求め続けるよ! 近いうちにドキドキが待ってる気がするんだ。うふふ。
「桜子ー、テラ牛丼冷めちゃうわよー」
 おっと、早くイカネバー! 今朝はスイーツあるかな~。

       

表紙

マタギ 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha