Neetel Inside 文芸新都
表紙

妄想ハニー
残党編-09【ダイヴ・イン・ブルー】

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次が、『女郎花』だったか。
予想通り、ゴシック・ヴィジュアル系バンドだった。
七弦ギターに五弦ベース、ツーバスと、やたら機材も豪華だった。
この手のジャンルにはあまり興味が無いのだが、俺はついメンバーの姿に目を走らせてしまった。
昨夜会ったユラ。
あいつは、もしかしたらこのバンドのメンバーではないかと訝しんだのだ。
しかし、その中にユラとおぼしき人物は発見できなかった。
ゴシック・ファッションで素顔こそ分からないものの、皆体格が違う。
ユラはもっと、女の子のような小柄だった。
俺は、それだけ確認すると控え室に戻る。
彼らの演奏自体に興味は持てなかった。
それより、アキラの演奏に対する衝撃の方が尾を引いていた。
そしてようやく気づいた。
俺は、それほどまでに、アキラのドラムに惹かれていたのだ。
「あ~、なんか“与党”って感じのバンドやったなー。」
と、トーヤが感想を漏らした。
想定通りの、最大公約数的な感想。
いつもならボキャブラリーが足りないなどと憎まれ口を叩くところだが、生憎そんな気分にさえなれなかった。
思い描いていた理想と現実の齟齬に、俺は形容しがたい虚脱感を抱いていた。
楽屋に入ると同時に、『ステロイド』の面子が目に入った。
軽く息を切らしたリュウジは、こちらに気がつくと、得意げに作り笑いを浮かべてきた。
ああ、確かに凄かっただろう。 技術的には。
「よぉ、見たかよ、残党。 俺達も伊達に軽音最強バンド名乗ってる訳じゃないんだぜ。」
よりによって、リュウジのヤツは俺に絡みに来やがった。
止してくれ、そんな気分じゃないってのに。
「ああ、終わってたな。」
煩わしさに、ついそんな言葉が口をついた。
途端、リュウジの顔の色が変わるのが目に見えた。
「ああ? 喧嘩売ってんのか、お前。」
万力のような力で、襟が捻じりあげられた。
ゴリラのように太い腕は飾り物ではないようだ。
本能的な暴力への恐怖は沸いたが、だが、それと同時に理解する。
さっきのこいつらの音楽に対する嫌悪感は、その音楽の根底にあるものが、腕力への依存と同じ類のものだったからなのだ。
こいつは、音楽を演っているのではない。
卓越した技術力を誇示しているだけなのだ。
腕力を披露して『どうだ、俺って強いだろう』と言うのと同じ次元で、『どうだ、俺って上手いだろう』と技術をひけらかしている。
それが、『マジック・マッシュルーム』との致命的な差違の正体だった。
こいつは、音楽が演りたいから技術を磨いているんじゃない。
技術をひけらかしたいから音楽をやってるのだ。
手段の為に目的が存在する。
だから、こいつの音楽は俺の心に到達しなかった。
デスヴォイスも韻を踏んだラップもくだらない。
そんなものは犬に食わせてしまえばいい。
音楽は世界共通語なのだ。
弱者や異端者を迫害したいのなら英語を覚えるべきだ。
「売ってるよ。 お前の音楽はくだらない。 お前のラップはオーディエンスが暴れる為のBGMだ。 音楽じゃない」
「知った風な口利くんじゃねぇか。 なら、当然お前らは俺ら以上に盛り上げてくれんだろうなぁ?」
一瞬言葉に詰まった。
しかし、俺は退くに退けなかった、
確かに技術的には雲泥の差がある。
ギターのジャガーも、ベースのエノケンも、ドラムのアキラも、高校生離れした技術を持っている。
だが、リュウジだけは別だ。
こいつは一人だけ毛色が違う。
おそらく、あの退廃的な音楽はリュウジという人間の属性に沿って作られたものなのだ。
こいつという人間の根底にある物は、他者への嘲りと蔑みだ。
そんなものを、自分よりも上だと認めたくなかった。
断じて認めたくなかった。
「当然だ。」
「ほぉ~。 なら、もし、お前らが俺達以上にオーディエンスを盛り上げられたら、俺達全員、全裸で校庭十周してやるよ。 もちろん、逆の結果なら、お前らに同じ事をして貰うけどな。」
「いいとも。 お前の真性カントンのアレを存分に女子に拝んで貰えよ。」
「殺されてぇのか、コラ!!」
リュウジが殴りかかってきた。
すんでのところで後ろからエノケンが取り押さえ、拳は俺の頬にかすっただけで終わる。
リュウジは顔を紅潮させてなおも俺に敵意を剥き出しにしていた。
プライドの高いリュウジは、俺達如き残党に噛み付かれるのが我慢ならないのだ。
この事態に、楽屋の視線が一気に俺達に集まった。
「止せ、リュウジ! せっかくの機会を棒に振る気か!」
「うるせぇ! こいつは『ステロイド』を侮辱したんだぞ! 俺達のバンドを!」
「頭冷やせっつってんだよ! 来い!」
エノケンはそのまま、人目を忍ぶようにしてリュウジを楽屋の外に連れ出した。
しかし、その去り際の射るような視線は、明らかに俺に向けられていた。
イベントに誘ってくれたアキラに唾を吐くような行為なのは分かっている。
しかし、リュウジの無神経な言動に、つい歯止めがかからなくなってしまったのだ。
これが、“社会性がない”ってヤツ、なんだろうな。
………クソ。
自分が苛立たしかった。
自分の立ち位置さえ分かっていないのに、口先だけは一丁前だ。
人の音楽をどうこう言える立場か、俺は。
そうだ、この後まだリハーサルもあるのだ。
全く見ず知らずの人間達の前でやる、初めての演奏が。
急に、自分の周りだけ空気の温度が下がったような気がした。
寒気にも煮た悪寒が、ぞわぞわと背中を昇ってくる。
それは錯覚ではなかった。
重圧。 プレッシャー。
今まで意識的に避けていたそれが、今まさに俺の身に顕現しつつあるのだ。
リュウジに構っている場合ではなかった。
俺には俺の、やるべき事があるのだ。


『女郎花』の面子が控え室に戻ってきた。
次の、次が出番か。
そろそろウォーミング・アップに入った方がいい。
ドラムは全身運動だ。
筋繊維をほぐしておくだけで大分動きが違うと、カナメにも言われた。
両手でスティックの両端を持った状態で腕を捻り、背中に伸ばしてゆく。
柔軟体操のコツは、全身の筋肉に空気を含ませるつもりで呼吸をする事、だそうだ。
深呼吸によって、硬直した筋肉が弛緩し、余計な力みを抜ける。
特に、手首関節は念入りに柔軟する必要がある。
ドラム運動の最基盤を司る部分だからだ。
殊更に速いビートは手首の返し無くしては叩けない。
まぁ、手首の柔軟ってのは要するに手首をブラブラさせる事だ。
見た目はちょっとアレっぽいが、一番確実な方法らしい。
ステージから音出しが聴こえる。
順番的に、次は『自爆マシーン』か。
どんな音楽だか、興味をそそられた。
少し覗くぐらいなら、次に支障はきたさないだろう。


ステージングは、ギターが二本に、ベース、ドラム、キーボ、ヴォーカルという六人編成だった。
そのほとんどが、社会人らしい様相をしている。
赤井カナメ曰く、今回のイベントの最高齢バンドらしい。
ギターはどちらも三十代のウェスタン風のオッサンだ。
リズム隊は比較的若かったが、それでも二十代後半なのは確定的だろう。
キーボディストの女性だけが、何故かOL風だった。
そこに、あの松田優作ファッションのユウイチが加わるのだ。
どう見ても、見た目は社会人の趣味バンドだ。
「すいませーん、ヴォーカルの音くださーい」
PAから声がかかった。
すかさずユウイチは、マイクを下から覗き込むようにして歌う。
「ちゃーらー! へっちゃらー! なぁにーが起ぉきてもー気分はぁ~~~~! へのへのカァッッパァ~~~!!」
またこれが影山ヒロノブばりの太いハイトーン・ヴォイスだったので、場内は爆笑の渦に包まれた。
これは三味線なのか、と俺は訝しんだ。
『ニトロ・グリセリン』の名は俺も知っている。
スマッシュ・ヒットを出したシングル曲は、確かに一瞬とはいえ世間を風靡したのだ。
彼はそのまま本当に凋落してしまったのか。
それとも、内に秘めた野心を隠して道化に徹しているのか。
全ては聴けば分かる事だ。
「ハーイ、行くよ~。 自爆マッシーン。 よろしくおんしゃーす。」
ユウイチが片手を挙げた。
SEが消える。
同時に、ドラムとキーボが音を挙げた。
これは―――――――
マジック・マッシュルームとは違う。
アナボリック・ステロイドとも違う。
勿論、女郎花とも全然違う。
コミカルで、ポップで、しかしどことなくオーケストラのような荘厳さを秘めたキーボード。
ダサい。
正直ダサいが、元はやはりメロコア畑の人間だけあって、音楽に疾走感がある。
確かに、これを音楽のジャンルに分類するとなると、「分類不可能」という結論に導くしかないだろう。
あえて。 あえて言うならJ-POPと断ずる以外にない。
だが―――――
こんな楽しそうに演奏する人達を、俺は初めて見た。
なんとなく、彼らを見ていて俺の中に浮かんできた言葉がある。
それは、“音楽隊”だ。
“ブレーメンの音楽隊”とかの、アレだ。
すでに死語に近いその表現が、彼らにはぴったりなのだ。
彼らは、『音』を『楽しんで』いる。
本当の意味で音楽を楽しんでいるのだ。
ユウイチさんのヴォーカルが始まった。
予想通り、歌詞もダサい。
その歌詞はあまりにも稚拙で、修飾の欠片もない。
二十歳を超えたら恥ずかしくて口に出せないような青臭い妄想の産物だった。
しかし、その内容は底抜けにポジティブで、心に響く。
そして、何より俺を驚愕させたのはその音域の広さだった。
一度でもメジャーを経験したという触れ込みはハッタリでも何でもなかったらしい。
今日の5バンドの中で、ベスト・ヴォーカリストを一人挙げるとすれば間違いなく彼だろう。
男とは思えないような高音域に達して、全くブレる事のない抜群の安定感。
ステージの上における圧倒的な存在感、カリスマ性。
やってる音楽も歌詞も確実にダサいのに、その存在は観てる者を惹きつけてやまないのだ。
確かに、若さと勢いではアナボリック・ステロイドの方が遥かに上だろう。
だがこの『自爆マシーン』には、老獪さと安定感がある。
それは、メンバーがベテランの音楽経験者で構成されているからに他ならない。
競馬に例えるなら、これからクラシックに挑む駿馬達と、それを迎え撃つ古馬といったところか。
ステロイドやマッシュルームの前座というだけじゃない。
俺達はこんなバンドの前座も務めなければならないのだ。
さっき引きかけた冷や汗が、またどっと肌に押し寄せてきた。




次だ。 次だ。
俺の心臓の高鳴りは最高潮に達しようとしていた。
視界が急激に狭くなったような気がする。
ペダルを運ぶ手が震えた。
「おぅ、チバ、お前ちゃんとアレのとこに前張り貼ったかぁ?」
「当たり前だし。 俺も逮捕されたくねーし」
そこは突っ込むべきところだったのかもしれないが、今の俺にはそれさえ耳に入っていなかった。
チバとトーヤが横で顔を見合わせている。
「おい、あかんぞ。 このチキン、完全にビビっとるわぁ」
「チキン、走ってもいいけど構成は飛ばすなよ」
俺は頭の中で構成を反芻する。
大丈夫、大丈夫だ。
あれだけ練習したんだ。
仮に頭で忘れても、身体が覚えているはずだ。
赤井のムスメも言ってたじゃないか。
ドラムにとって何よりも大切なのは自信だって。
大丈夫。 きっと大丈夫。
「オイッ!」
その時だった。
チバの罵声と共に、いきなり俺の股間の逸物が握られた。
「うぐ……っっ」
「落ち着け、チキン。 ビビんなって、三十路の老体の後やぞ。 現役高校生の力見せつけたれって」
「ちょ、おま……え…」
分かってる、分かっているのだ。
こいつがこいつなりに俺の緊張をほぐそうとしてくれている事は。
だが、緊張してはいけないと思うほどに、俺の脆弱なメンタルは軋みをあげるのだ。





ステージに立つ。
ステージから見た風景はまだ閑散としていて、PA席がやけに遠く見えた。
いつもと違うドラム。
いつも、俺はどういう風にセッティングしていたっけ。
ハイハット・シンバルはもっと高めだったような。
スネア・ドラムは傾けていたか、水平だったか。
椅子はいつもより低くないか。 というか、いつもより柔らかすぎないか。
あれ、タムのネジってこんなに硬かったっけ。
適当にセッティングが整うと、8ビートを叩いてみた。
違う。
いつもと全然感覚が違う。
タムとフロアの音がいつもと違う。
シンバルの感触がいつもと違う。
バスドラを踏んだ感覚がいつもと違う。
ドラムから見える光景がいつもと違う。
いやむしろ。
叩いてる俺自身が、いつもと違う。
まるで俺は、知らない異国に突然一人放り出されたようにテンパっていた。
こんな―――――
こんなに違うのか――――――――
全身の毛穴が開いたように、汗が止まらなかった。
怖い。 怖い。 怖い。 怖い。
出来るのか。
出来る………のか。
ああ。
何故俺はこんな所にいるのだろう。
こんな、場違いな空間に。
あれ、トーヤがベースの音を出している。
ボーン、ボーン。
ちょ、待てよ。
もう帰らないか?
無理だ、こんな状態で、演奏、なんて。
だって、スティックを握る手が、震えて、震えて、グリップ、出来ないんだ。
薬中じゃないかってくらい、震えてる。
え、ちょ。
PAが、手を挙げて、「本番」、「行きます」って。
意味も分からず、俺は、シンバルカウントをしていた。



ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!
まるで、それは咆哮の様だった。
冬眠から覚めた熊が、自分の覚醒を確かめる為にあげた鳴き声のようだった。
そうだ、それは断じてメロディーなどとかいう人間的なものではなく。
動物が本能のままにあげた唸り声のように何の知性の欠片もない、身も蓋もなく言えば頭の悪い音だった。
それがユゲの――――――弓削鷹生のギターの音なのだと、その場にいた全員が思い知った。
それを個性と言い張るにはどれだけの図太さが必要とされるのか。
鼓膜を破壊するかのような常軌を逸した爆音に、大半の者が耳をやられる。
俺も、その一人だった。
だが、その返しを通じて伝わってきた爆音の衝撃が、まるで冷水を浴びせかけたかのように、俺の平静さを取り戻すのに一役買っていた。
トーヤのベースが乗っかる。
相変わらず音作りがひどかったが、こいつのリズムは妙に安心感がある。
イントロはグシャグシャだったが、なんとか俺は体勢を立て直した。
集中。 集中だ。
ハイハットの質感、スネアの返り、バスドアの感覚。
ああ、なんとなく思い出してきた。
五感を塞がれていたようだった俺の感覚が、徐々に覚醒しだしてきた。
そうだ、脱力だった。
ドラムの基本は、脱力なのだ。
ガチガチに筋肉を硬直させた状態では、爆音は出せない。
脱力の仕方を忘れたらまず基本のフォームを思い出せと、赤井のムスメにアレだけ教わったじゃないか。
俺は、両腕の脇を締めた。
不恰好だが、これがもっとも効率よく力をスティックに伝えられるフォームなのだ。 と、カナメが言っていた。
そして、すっと俺は肩の力が抜けるのを感じた。
オープン・ハイハット。
重なった二枚のシンバルが、右手のスティックを通じてスタンドの上で泳ぐ。
瞬間、抜けるような8ビートの音が響き渡った。
ああ――――――――――噛み合った。
さっきまで、不協和音を奏でていた歯車が、今、ビシリと噛み合った様な気がした。
トーヤのベースラインが、俺のバスドラムの音とシンクロする。
この一体感。
これが、俺がこの一週間で得たものだ。
今まで、俺が求めて叶わなかったもの。
音の海に漕ぎ出すようなこの感覚を、人に伝染し、浸透させ、蔓延させる事。
それが音楽なのだ。
そして、空間を支配するビートを自らの手で派生させる。
それが、ドラムを叩く、という事なのだ。
いいぞ。
俺の中のギアが、ローを抜け、セカンドに入った。
このままのテンションを維持し、サビに向けてトップに持っていく。
クラッシュ・シンバルの破砕音。
いつものスタジオの耐久性重視のモデルとは感覚からして違う。
研ぎ澄まされたボクシングのストレートのように、鋭い衝撃がライブハウスを突き抜ける。
赤井カナメに伝授された、爆音の8ビート。
ロックン・ロールの要。
これで、『ステロイド』の面々の度肝を抜いてやる。
余裕の出てきた俺は、ふと客席の方向に、目を向けた。
「―――――――」
アキラが、見ていた。
アキラとその目が合った瞬間、俺の中で何かがぐらり、とするような感覚があった。
あれ?
俺はふと、我に返ってしまっていた。
急激にテンションが引いてゆくのがわかった。
一人妄想に耽っていた状態から、突然現実に返されたような――――
あのアキラが、俺のドラムを見ていた。
あの、アキラが。
突如として、俺の中に不安感が生まれた。
たった今噛み合い始めた、根拠なき自信が崩れていくのを感じた。
人に見られる自分を、今、俺はあり得ない位にありありと意識していた。
今まで自己満足だった俺のドラムに、今アキラは正当な評価を下そうとしている。
怖かった。
元々、俺のドラムに自信の根拠などありはしないのだ。
一週間『も』練習した?
一週間『しか』練習してないのだ。
付け焼刃だ。
そんな姑息さが、アキラに見抜かれているような気がした。
いや。 事実、昨日サリナの口から聞いたじゃないか。
アキラは、俺が赤井楽器で練習している事を知ってると。
アキラは―――――
アキラは、俺の事をどう思ってるのか?
俺のドラムを見て、どう思ってるのか?
怖い。 恐ろしい。
人の気持ちが分からない事が、これほど怖いと思った事はない。
俺は、人に認めて欲しかったんじゃない。
アキラに、認めて欲しかったんだ。
あれ―――――――ちょっと待てよ。
なんで、チバが、俺の方を見ているんだ?
ブレイクが終わったら、サビだろう?
いや――――て言うか、待てよ。
なんで、トーヤも、ユゲも、俺の方を見ているんだ?
なんで、この光景が、停まってるんだ?
何故、奴らはピックを動かしていないんだ?
何故、奴らは運指を停めているんだ?
時間の流れているはずのこの光景が、まるでデジタルカメラの一映像のように、停滞していた。
チバが停まっていた。
ユゲが停まっていた。
トーヤが停まっていた。
客席のカナメが停まっていた。
ユウイチが停まっていた。
アキラが、リュウジが、ジャガーが、エノケンが停まっていた。
時間が、停止していた。
いや――――――――停滞しているのは、時間ではなかった。




曲が―――――停まっていた。










       

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牧根句郎 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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Neetsha