Neetel Inside 文芸新都
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見つからない、離れない
見つからない、離れない 12

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 相馬香(そうま かおり)は、コーヒーを飲みながらテレビを見ることにした。
ワイドショーにチャンネルを合わせる。
自分の管理するアパートも、テレビに写ったりするのだろうか、と相馬は考える。
出来れば、そういったことは避けたい。
住居者が減るとか、評判が悪くなるとか、そういう問題ではない。
ただ、そうっとしておいて欲しい、と相馬は思った。

 昨日、このアパートに警察が来た。
302号室から、二つの死体が見つかったからだ。
警察に連絡したのは相馬自身だ。
しかし、本当のところ、相馬は警察など呼びたくは無かった。
永遠に、死体が見つからなければ良かったのに。
そんなことは有り得ない、と相馬は理解している。

 チャイムが鳴る。何度と無く聞いた音だ。
「はぁい」相馬は努めて明るい声を出す。

 レンズを覗く。昨日見た顔だ。名前はなんといったか・・・

 ドアを開ける。
「こんにちは。昨日は有難うございました」
「あら、今日はどうなすったの?」
「少し、お話を伺いたいのですが・・・」
相馬は悪い予感がする。しかし、追い返す訳にもいかない。
「そうですか、では、どうぞお上がりください」
「失礼致します」

「どうぞお掛けになって。あ、今コーヒーを入れますね」
「お気遣い無く」
「いえいえ」
相馬はキッチンで二人分のコーヒーの準備をする。

「随分、大きくて立派な冷蔵庫でございますね」
「・・・いえ、安物ですのよ」

 やはり、悪い予感は当たっていた。この人物はもう分かっているのだ。
仕方が無い。元々、隠し通せるなどとは思っていなかった。

「どうぞ」
相馬はテーブルに二つのコーヒーを置き、片方を相手側へスライドさせた。
「すみません、有難うございます」
「それで、お話というのは・・・?」
相馬は聞きたくなかったが、話を促した。

「昨日、このアパートで見つかった二つの遺体のことでございます」

「・・・」
「相生聡子様の、手首の切断面の近くに置かれていた手の事なのですが、別人のものだと判明致しました」
「そうでしたの・・・」

「この手は、誰のものでしょうか?」
睨みつけるような視線を送ってくる。
「さぁ・・・私に聞かれても、答えかねるわねぇ・・・」

「では、こう聞いたほうがよろしいでしょうか」
相馬は息を呑む。

「302号室で見つかった手首を切断された死体、あれは、一体誰なのですか?」

       

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