Neetel Inside 文芸新都
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冷静になれ俺。こんな天然アフロを生かした髪型なんて存在しない。
やはりアイロンを使ってストレートにした上で髪型を考えるべきだ。
そう思った俺がまず行った所は薬局だ。何をしにってもちろんワックスを買いにだ。
やはり人の力だけでは髪形を作るのは難しいようだ。水なんか使えんし。
「らっしゃっせー」なんともやる気のない店員だ。若い男の店員、という時点で俺の心は半分折れてしまった。
しかし俺は諦めない!そもそもきもい奴は挙動がきもいんだ。それも容姿と同時進行で改めなくては。
コスメコーナーになんとかやってきた俺は並べられた整髪料達を見て悩み始める。そういえば何買うか決めてなかったっけ。
このまま悩み続けて店員に声をかけられるのだけは避けたい……薬局の店員は客に声なんかかけないと帰ってから気付いたが。
俺はコマーシャルなどでよく見かけるギャツビーのワックスに決めた。第一関門突破だな。
そして俺の第二関門……レジに持ってく、だ。
まずレジが混んでる時は避けたい。ワックス片手にレジに並んで下手に俺の後ろに並ばれてしまったら
「え?こいつワックス買うの?きめぇwww」なんて思われてしまうかもしれないからだ。
まず店内の確認。よし、閑散としている。レジの確認。おばちゃんが特売品のティッシュを抱えうろうろとしていた。
おばちゃんが買い終わったら行こう。そこしかない!俺はそう決め込んだ。
そう思い1,2分経ったか?おばちゃんがレジへ向かった。よし、早く終われ。
「あーとーざーまぁす」抑揚のない声が聞こえた。行くしかない。俺は小走りでレジに向かった。
店員にワックスを差し出す俺。万一にも店員以外に見せてはいけない。
俺と店員だけの秘密、というわけだ。……ぜんぜん嬉しくないな、これ。
バーコードを読み込み、「ポイントカードはお持ちですかぁ?」と聞いてくる。
まずい、このセリフは想定外だ。俺みたいな奴はとかく機転がきかない。ピンチに弱いともいう。
「ぁ、い、いいです」キョドりながら答えた。うん。きもいな俺。
そこで俺と店員の会話は終了。俺は急いで家に帰る、そういう流れになればよかったのになぁ……
「カードお作りいたしますかぁ?」これは本当に想定外。お前やる気ないんじゃなかったのかよ。
俺は考える。キョドった声で拒否するのはどう考えてもきもい。どうにかして拒否を示すことはできないだろうか。
……ボディーランゲージ。すなわち首を振ればいいんだ!俺に一筋の閃光が走った!
フルフルフルフル……首を振り続ける。何秒かたってやっと気付いてくれたのか店員は「660円になりまぁす」と言ってくれた。
俺は金を支払いレシート要りますか?という声を振りきって全力で店を後にした。きめぇ。

       

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