Neetel Inside 文芸新都
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にわか文学掌編集
天国(1)

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すごい・・・

今日もまた、そう呟く人が一人。ここは、桃源郷といっても過言ではないような、天空の楽園。まさに、天国。町の外れの泉からは、綺麗な水が湧き、遠くに見える滝は、とても高いところから流れ落ちて、まさにこの世の果てというような言葉が似合います。新鮮な空気であふれ、便利とはいえないけれど、その分とても美しい。町の住人たちはいつも笑顔。ここは、誰もがあこがれる、天国なのです。

私は、数年前からここに住んでいます。前まで住んでいたところは、便利な場所でしたが、汚かったのです。空気も水も、人々も。そんな町に耐え切れず、私はここに引っ越してきました。すごい・・・。こに地に足を踏み入れたとき、真っ先に出てきた言葉です。後でこの町の案内人から聞いたことですが、初めてここに来た人は、みんな私と同じことを言うそうなのです。

この町に住み始めてから、自分の生活は変わりました。この国には、電気もガスも、水道も通っていません。交通手段は、徒歩。初めは戸惑いましたし、疲れました。でも、一年もたてば、自分の中では、それが当たり前となっていました。この国の人々は、とてもすばらしい人たちです。町をいつも自分から進んで綺麗にしようとごみ拾いをする人、普段はすこしつんつんしていても、困っている人を見つけたら真っ先に助けてあげる人。この町の人たちは、みんな協力し合って生きているのです。そうした中で私は、昔の自分とはいつの間にか変わっていました。前まで住んでいたところは、地獄でした。何もかも、ドロドロしていました。でもここは、天国です。なにもかも透き通っているのです。

ここに住み始めてからしばらくたったある日、町を歩いていると、見知らぬ人が尋ねてきました。そのひとは、どうやら新しく引っ越してきた人らしく、
「ここに来たのは初めてだから、いろいろ教えてくれませんか。」
と私に言ってきました。私は、
「実を言うと私もここに引っ越してきてからまだそんなにたってないのです。」
と、その人に言いました。そうしたらその人は、
「それなら都合がいいです。じゃあ、これから私をあなたの家に住まわせてくれませんか。ほら、慣れない土地で一人って言うのもさびしいですし・・・」
確かにそのとおりでした。自分はここに来てから、まだ親しい人がいなかったのです。ですから、その人の提案を受け入れ、一緒に住むことになりました。

一緒に住み始めた人の名前は、景といって私と同じ町から来た人でした。ここは、いろいろなところから人がやってくるのです。同じ町からやってきた人はそういなかったので、少し安心しました。それはどうやら、むこうも同じでした。
「いや、助かりました。ここに来てから、あなたと会うまで私と同じ人種のひとが見つからなくて・・・。やっぱり、見慣れた人と一緒にいたほうが落ち着きますね。」
この町には、私たちと同じ町から来た人はあまりいませんでした。安心したのは、あなたと一緒ですよ。

それからしばらくして、私と景は仲良くなりました。景は女の人なので結構ハプニングもありました。たとえば、私がお風呂に入ろうとしたとき・・・

「ぇ、あ、あぁぁ、え、ぁぁぁ・・・」
「え、あ、ご、ごめん・・・」
「こ、こちらこそ・・・」
訳が分かりません。私が風呂に入ろうとしたら、景が先に入っていました。鉢合わせ。ごめんなさい。みちゃいました。
次の日の朝食はおいしくありませんでした。とても、気まずかったです。

透き通った、美しい世界。
お話は、まだまだ続きます。

       

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