真っ暗になるまで公園でメイと遊んで、家に戻った。流石に広い園内をここぞとばかりに走り回ったので、来た時とはうってかわってメイの歩調は穏やかだった。
 玄関ドアを開けようとしてドアを捻る。捻る。開かない。
「いない? あ、そうか。送りにいったのか」
 流石にこの時間までともなると、女の子ひとりきりじゃ帰り道も危ない。3人でまとまればまあ安全だろうしな。見送った後の恵姉は……まあ大丈夫か。あの人モンスターだし。
「となれば、キーは……お、発見発見」
 郵便受けを開けて鍵を取り出し、脚の汚れたメイを抱えて家に入る。風呂場で脚を丁寧に洗って拭き、リビングへと送り出した。浴槽は既に綺麗になっている。恵姉は掃除を済ませてから両人を送りだしたようだ。待たせてんじゃねーっての。
「後は買い物だな。15分で済ませれば、帰ってくる頃にお湯が丁度溜まるから、と」
 想定外の事態も考え、いつもよりやや緩めに蛇口をひねって風呂場を後にする。
「さて、と。ご飯は……お、研いである。やるな」
 メニューをどうしようかと考えていたが、帰り道に嗅いだ懐かしい香りに心も体もくすぐられてしまった。あの匂いは反則だ。
「ルーもあるし、野菜と肉でおkだな。よし」
 いざ、華麗なる夕食を。再び玄関へ向かう。公園で石ころはきっちり取り除いたので、靴の状態は絶賛絶好調である。勢いよく履き、勢い勇んでドアを開け放つ。
 と、そこに。
「え?」
「「「ただいまー」」」
 3人のお出ましである。それぞれビニール袋を片手に何やらどっさり買い込んでいる。
「3人?」
「え、何? っていうかちょっと功、どきなよ。入れないでしょ」
「……」
 俺はまったくこの状況についていく事ができず、左手にドア、右手に財布を握ったまま、硬直してしまった。思考回路はショート寸前、今すぐ会いたいよ。誰に? フー?
「え? 何だ? 何だこの状況は? 恵姉、2人を送ったんじゃないの?」
「何言ってんの? 買い物に行ってきたのよ。見ればわかるでしょ? ねえ、いづみ」
「そうそう。今日はお泊りで勉強するんだし、腹ごしらえは大事だからね。ね、さあや」
「ね! 後花火もねー」
 はなびもねー? おっしゃっている、いみが、よく……!?
「ああっ!? と、泊まりだって!」
 聞いてないぞ。おい、今なんて言ったよ。泊まりだと? 冗談じゃない! 風呂は? 布団は? 部屋は? 俺は? 俺の身の安全は!?
「待て、それはやめたほうがいい。今日は希さんも猛さんも結婚記念旅行でいないじゃねーかよ……って、まさか――」
「そゆこと。2人じゃ面白くないっしょ」
「面白い面白くないって、そんな問題じゃ」
「そーれーに、もう2人とも了承もらってるしね。パジャマは私の貸せばいいし。布団だってスペアあるから大丈夫。功、ちょっと功! きーてんの? あ、お風呂入れてくれた?」
 
 
 全くの予定外だ。華麗なる夕食は? 俺の平和な時間はない?
 

 事態を飲み呑むまでに、俺はかなりの時間を要した。