Neetel Inside 文芸新都
表紙

Sweet Spot!
10th.Match game3 《え、ダブルデート? え、暗闇!?》

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 で、翌朝。天気は……快晴。
 思いのほか寝覚めは良いものだった。
 あの”通告”の後、当然俺はどうして同行しなければならないのか恵姉にしつこく問いただしたのだが、恵姉は頑なにその理由を述べようとはせず、
「黙ってついて来れば解るから。」
の一点張りに終始。午後から出発だからね、と言い残すとさっさと部屋に戻ってしまった。
「はぁーっ……。」
 何故この会合に参加せにゃならんのか? い~ま~の~ボク~には、理解できな~い~↓
 予定ではゲンキへのアシストパスを出してハイそれまでよ、の筈だった。ゲンキがゴールを決めようがQBKでフルボッコになろうが一向に構わない。役目を果たした俺は数万の観客の大声援を浴びながらピッチを後にし、監督とハイタッチをして残りの時間はベンチから戦況をぼんやりと傍観する立場に回る――――そんな心構えだったのだ。
「ゲンキの奴、一体どんなカオすっかなー?」
 洗面所で顔を洗った後、水垢でやや不鮮明に映っている鏡の中の自分に問いかけた。
 おそらく、意味不明な状況を前にして両目にクエスチョン・マークを湛えた後、何故オマエは空気を読めない? とばかりに金魚のフン的存在の俺を蔑んだ瞳で見るだろう。それこそ、全身を嘗め回すように。
 妙な寝癖を携えた目の前の男は、見るに耐えない苦悶の表情を浮かべていたのだった。
「ま、とりあえずは今日の最優先事項からだな……。」
 映画なんかよりずっと深刻な問題が眼前に聳えている。
 その後、俺は漸く2階から降りてきて眠たそうに目をこすっている恵姉を尻目にさっさと朝食を済ませると、その目的を果たすべく家を飛び出した。

 家から歩いて大体10分程歩いたところに、中学時代からの行きつけのスポーツショップがある。店の開店時間に合わせて来たので、自動ドアをくぐると店内にはまだ誰もいなかった。
「いらっしゃっせぇー! おっ、何だ功坊か。こんな早くにどうしたよ?」
 新製品のシューズを並べていた無精ひげを生やしたおっちゃんは、俺を見るなり笑顔を浮かべ、後ろで縛ったロングヘアーを振り乱しながら歩いてきた。
 店主の伊達さんはリストバンドの良く似合う気さくなおっちゃんだ。プロテニス選手として活躍していたこともあって、その業界ではちょっとした有名人である。40歳を過ぎてもバリバリのアウトドア派で、ガッシリした体は年中日焼けして真っ黒だ。パリッとしたエプロンに身を包んだ伊達さんを見る度、カッコいい年の取り方をしてるなぁといつも思う。
「どーもです。急なトラブル発生っす。」
「トラブル……? お、ラケット持ってきたっつーことは……これか?」
 そう言って、伊達さんは握った左拳をボールに見立てて右手のひらで打ち、続けてキットカッ○をポキッと割るようなジェスチャーを披露して俺の反応を窺った。
「えーっと、多分合ってます。これを急ぎで直してほしくって。県の総体が水曜からなんで、出来れば今日中に何とかと思って……。」
 カバーを開けてラケットを渡す。伊達さんはラケットを手にとると、暫くクルクル回して切断面を見つめていた。
「うん、しっかり面の中心でボールを捕らえられてるな。切れたのもど真ん中! 功坊に切られてさぞかしガットも本望だったろうね。」
「ありがとうございます。でも出来れば大会までもってほしかったっす……。」
「はは、そりゃそうだな。」
 伊達さんは俺の急な要求を快く呑んでくれた。他のお客さんの手前もあるので、閉店後にまた来るようにとのコト。俺が感謝の意を伝えると、
「市長杯の功坊も直に見てたから、これまでよりももっと使いやすいラケットに仕上げられる自信があるぜ!! 試合に負けてもガットのせいに出来ない位『イイ具合』にしてやんよ。」
 と胸を張って応えてくれた。いつも頼りになります、ホント。

「ただいまー。」
「おかえりっ。じゃーん! どう、いつもより決まってる??」 
 家に帰ると、玄関に向かって恵姉がダッシュしてきた。
 見れば、既に恵姉は着替えを済ませており出撃態勢を完了している様子。
 朝は爆発していた髪もきれいに整えられ、薄いながらもお化粧・お化粧。
 花柄のワンピースも実に春らしい感じだ……たぶん。
「あ、ああ……いいんじゃない?」
「よっしゃ!」
 よっしゃ! って、別にただ映画観るだけじゃんか。何をそんなに張り切る必要がある?
 やっぱ女の子って外に出る時はおめかししたいんかなぁ。俺にはサッパリわかんねぇや。
 
 とまあそんなこんなで、時はちゃっちゃか経ちまして。

 ここは星和駅東口。集合時間10分前に到着した俺と恵姉は、ゲンキの登場を待っていた。
 そうだ、ここで1つ重大な情報を言わなければならないんだった。
 ゲンキの家と星和駅の2点を結んだ丁度中点の位置に、俺の居候先の神崎家はあります。
 ――――何が言いたいか、わかったかな??
 星和駅は集合地点に適しているとはまるで言えないってコトだ。あくまで推測だが、これはおそらく駅から電車を使って近場を避け、周囲にあまり知人のいない所を選んで映画を見ようという恵姉の思惑ではないかと思われる。渡瀬功一と神崎恵、幸田元気と神崎恵……いずれの組み合わせにしても、互いの知り合い多きこの街に姿を晒すのは危険と言えば危険だ。まあそれなりの言い訳を考えていないわけでもないんだけど。
 暫くすると、ニコニコいがぐり野郎がこっちに向かって駆けて来た。
「恵さーん! どーも俺ですゲンキでーす……って、あれ!? コーイチも??」
「……どーも。今日は1日たのしくいこうなー……。」
「よっす! 今日はおまねきどうもアリガトーっ。」
「ハ、ハイ……って、ちょ、コーイチ! こっち来い!!!」
 イエーイ思った通りのリアクション~。
「なんでオマエがここにいんだよ! バカ? バカなのか?」
「すまん、強制連行くらっちまって……俺には一切の拒否権が無かったんだ。」
「おい待てよぉ……せっかく俺の……。」
「? どしたー? 2人してコソコソしちゃって。」
「「いえ、別に!」」
 落胆の表情を浮かべるゲンキ。完全に名前負けの状況だ。いや、マジごめん。
 俺がうなだれたゲンキを見て憐れんでいると、恵姉の声が現実へと引き戻した。
「お! きたきた。オーイ!!」
 え? なんぞ?
 振り向くと、両手を挙げて恵姉は誰かに合図を送っていた。
 その方を見ると、駅の改札を抜けた女の子がこっちに走って来る。誰だろ……ん??
 なんだか見覚えが……あるような……って、あれっ!!??
「ごめーん、遅くなって。待った??」
 腰までかかったさらさらな黒髪に、柔らかな微笑み。
 やまと、なでしこ……。
「ぜーんぜん! はいみんな、さあやでーす。今日はこの4人で遊びに行きますよー。」
「「ええっ!!??」」
 晴天の霹靂ktkr。全く状況が把握できない。
「なぜに草原先輩がここに???」
「えっ? あれ、恵ちゃん昨日言ってくれなかったの!?」
「えっへへっ、サプライズサプライズ♪ どう功、びっくりした?」
 そりゃあ、びっくりだよ……。予測できたら神だっつの。
 恵姉から伝えられた真相はこうだ。昨夜俺が寺岡先輩と秘密裏通話をしているまさにその時に、恵姉にも2件目の着信が入っていたのだ。
 ゲンキとほとんど同じようなシチュエーションで”ノクターン”のチケットを入手した草原先輩だったのだが、あまり韓流に興味をお持ちでなかったコトもあって、常日頃より韓ドラの話を振りまいている恵姉に譲ろうと電話をしたのだった。しかしながら、電話した時は既に恵姉がゲンキと観る約束をした後。で、捨てるくらいなら俺と観れば? という流れになったらしい。
 なるほどなー。だから強制参加だったのか。
「でも俺なんかで良かったんですか? 他の人と行ったほうが――。」
「ううん。こないだ図書館で喋ってとっても楽しかったから、もう一度おはなししたいなぁーって思ってたところだったし。渡瀬くんは私じゃ嫌だった??」
「いえ、全然そんなこと無いです!!! いや、俺マジで全然韓流興味ないんで、一緒に見ててもすぐに寝ちゃうかもだし……。」
「あはっ。そんなの私もかもだよーww。」
 先輩の言葉に、俺は思わずぷっと笑ってしまった……が。
「コラコラ2人とも? 今のは聞き捨てならないわねぇー……。」
 ウフフ……と不気味な笑みを浮かべる恵姉。やっべ、禁句やったわ。
「ね、寝ませんよねぇ?」
「そ、そーよ。何言ってんの恵ちゃん!? しっかり観るってば!」
 2人で必死に『裏メグ』モードの解除に取り掛かっている横で、
「え……だ、誰っすかこの美女は??」
 完全に会話の蚊帳の外に追いやられてしまった傷心のゲンキは、つぶらな瞳を丸くしてさながら空気が如く立ち尽くしていたのだった。
 はぁーっ。一体どうなるんだろ、この変な集会。

 
 電車に乗った俺たちは、マネージャーが住んでいるお隣の南星和市に向かった。で、駅に着いた後近くで軽く昼食をとり、その後街の中心へ移動。
 10分程歩いて映画館前に着くと、既に大勢の行列が出来ていた。うん、やはり人気作品だという噂に間違いは無さそうだ。見れば殆んどがカップルらしく、人目を憚らずイチャつくDQNもアリ、手を繋いで見つめ合って2人の世界に入っている者もアリ。
 まったく、目のやり場に困るったら無いぜ、こん畜生め。
「ふいーっ。」
「どうしたの? 疲れちゃった?」
 カチコチに緊張しているゲンキに向かって韓流の素晴らしさを切々と語り続けている恵姉の隣で、密かについた俺のため息に草原先輩が耳聡く反応した。
「いや、何つーか空気的にちょっと居づらいかなと……。」
「フフ、そだね。なんかちょっとこそばゆい感じだね。」 
 映画を2人で観る。
 俺にとって、実はこれが初体験だったりするのだ。勿論映画館で観た経験はこれまで何度かあったけれど、それは全て神崎家総出でのコトだったし。誰かと2人で、しかも異性と2人でなんて、妄想すらした試しの無い世界だったのだ。
 映画が俺にとってそれ位のモノでしか無かった、とも言えよう。スマン、寝ちゃうんだよ。
「先頭が動き出した! ホラみんな、行くわよ!」
 恵姉は漸くの開演に瞳をらんらんと輝かせ、列の前を覘いたりその場で足踏みしたりと、かなりせわしない感じになっている。キャストがイマイチね、と腕組みして批評していた面影は全くなくなっているコトをここで言わせて頂こう。
 そうこうしていると前の人が館内へ向かって歩き出した。俺たちはチョコチョコ歩いては立ち止まりながら、ゆっくり映画館に入っていったのだった。
「アタシ達は席こっちだね。よし、じゃあまた後でね。」
「はーい♪」
「オウ。出来るだけ起きとくよ。」
「はぁーっ……2時間ちょっと位なんだから寝るな!! だいたい功はいつも冒頭で――。」
「恵さん、早く座りましょう! 始まっちゃいますって!」
「だ、だってあのバカが……。」
「いーから! バカはほっといてですね……。あ、席は向こうの……。」
 ゲンキに急かされて、恵姉は渋々席の方に向かっていった。って、バカバカ言うなっつの!
「ったく……。じゃ、俺たちも座りましょうか。」
「は、はいっ!」
 俺たちの席は中央やや後方よりの、なかなか観やすい場所だった。恵姉たちは右前方の席に陣取っている。ゲンキはと言うと、パンフレットを眺める恵姉の隣でピーンと背中を伸ばして真っ直ぐスクリーンを見つめていた。おいおい、別にお見合いとかそんな大層なモンじゃないんだから、そこまで緊張してカタくならなくてもいいってのに。
 席に着いて荷物を置くと、草原先輩はトイレに行きがてら何か食べ物を買ってくるから、と立ち上がって駆けて行った。ナルホド映画館にはポップコーンとかだよなー、などと腕を組んで下らない思案に耽っていた俺を、気の利かないバカ乙、と蔑むなら蔑んでくれ。


 そして、映画が始まった。
 前情報やコマーシャルも1回も観ていないという正に白紙の状態で挑んだ俺に、冒頭から優しいショパンのノクターンがさらさらと降り注いできた。
 舞台は韓国戦争の時代。温もりに満ちたそれぞれの街。そこで育まれる友情に愛情。慎ましいながらも活気に満ちた世界が展開されていく。
 しかし南北の対立が次第に激化して行く中で、それぞれの地においてそれまで送れていた幸せな日々が脆くも崩れ去る。理不尽に、突然に大切な恋人や家族を失う悲しみや悔しさ……そういった出来事を切々と描いていく作品で、凄惨な戦闘終結後のラストシーン、親を失った子供達の浮かべた涙交じりの必死の笑顔に、ずしりと心にくるものがあった。
 
 
 時間を忘れて、見入っていた。眠気の訪れる暇など在りはしなかった。
 
 
 以上が、『初夏のノクターン』を観た今の俺の率直な、率直な……感想。
 ……で、だ。
 ココからはちょいと幾つかのイベントについて話を戻そう。
「わ、渡瀬くん、ちょっと手伝ってぇ!!」
「え? うわっ!?」
 まず上映前、お手洗いからトテトテとお戻りになられた草原先輩は、ポップコーン1つとジュースを2つお抱えなさっていた。なんとまあ今にも落っことしそうな危うい体勢!!
 すぐに応援に駆けつけ、何とかジュースたちは無事に着陸に成功。席に着くなり俺は数々の気の利かなさ振りを陳謝した。
「すみません、俺も行くべきでした。つい予告に意識を全部かっさらわれちゃって……。」
「いいのいいの。無事だったんだし! お、暗くなってきたぞ。そろそろみたい。ホラ、ゆっくり食べながら観よーっ♪」
 草原先輩は足をプラプラさせて美味しそうにポップコーンを摘みながら笑っている。
 な、なんて素晴らしい性格してんだこの方は……! もしこれが恵姉なら、今間違いなくマシンガン口撃が行われている最中だろうに。
 映画が始まると、先輩はポップコーンをお互いの席の真ん中に置いた。1つのポップコーンを2人で分け合って食べるのは、正直かなり照れくさかった。
 いや、勿論平静を装ったけどね。
 それにしても映画館のヤツって、何気にビッグサイズだからひとつ丸々食べるのは難しかったりするよね。あれって何故だろう?
 その後、互いに互いの邪魔にならないようにそっと摘み取ろうとして、何度かカップの中で2人の指が触れてしまったりなんかして、その都度顔を見合わせては苦笑いし合ってしまったのだった。いや、やっぱ観る気より食(ryww。そんなもんだよ、人間って。
 そして中盤。ストーリーが進行して戦闘描写の激しいパートに入ると、先輩は怖さからかスクリーンから顔を横に背けてこっちを見る回数が増えた。暗闇でも気配で動きが分かって、
「だいじょぶですかー?」
 と何度か小さな声で尋ねたのだが、先輩は首をブンブンと縦に振るだけ。何も話さず仕舞いだった。
 その内一層凄惨な場面に入ると、先輩はもうずっと下を向いたきりだった。
 やっぱ女の子にはちょいキツ目だよな、ここは。
 と思った次の瞬間――――。
「んぐっ!!!???」
 突然、先輩の右手が俺のシャツの左の袖をぎゅっと掴んだ。
 不意に訪れた衝撃的な展開に俺の頭は真っ白になり、息が止まりそうになった……いや、軽く止まったと思う。俺はスクリーンを直視したまま動くことが出来ず、ひたすらに硬直し、そして困惑した。瞳からの情報は一切合切シャットアウトされ、微妙に引っ張られている左半身の触覚に全ての感覚が集中していたのだった。
 程無くして場面が切り替わると軟らかな拘束は解かれたものの、俺はその後一切先輩の座る左側を向くことが出来ず、ただただ映画を眺めるコトで精一杯だった。
 でも、終盤は落ち着いて観る事が出来た。先輩が眠りについたのだ。
 中盤以降ストーリーが進むにつれて俺の意識は再び画面へ集中し、周りの状況をすっ飛ばす位に集中して見入っていたのだが、
「すぅー……、すぅー……。」
 次第に隣から規則的な音が聞こえてきたのだった。もしや……と徐に先輩の方を覘くと、先輩は心持ち体をこちらの方に傾けて俯き、静かな寝息を立てていた。
 綺麗なお姉さんの寝顔は、好きですか――――?
 ……こんなん見ちゃって眠くなるワケ無くね?
 
 結果として、先に挙げた感想に繋がるというワケです。


 映画館の暗がりから外に出ると、4時を過ぎたというのに太陽の光はかなり眩しかった。この後どうするかなんて全く考えていないモンだから、映画館の前で俺たちは暫くグダグダと談笑したのだった。
「それじゃあ、私はココでお暇するとしようかな。犬の散歩に行かなきゃだし。」
「そういや、さあやのトコも犬飼ってたんだっけ? 確か芝犬だよね?」
「うん。フフ、散歩の時間になると早く連れてけーって鳴くのよ。」
 はは、メイと同じだな。
 あいつもウルセーんだ、オイ空気嫁、バカ野郎! ってさ。
 結局、今日の『リフレッシュ会』はこれにて解散することになった。帰りの電車の中でゲンキが女性陣にハイテンションで喋りまくっているのを尻目に、俺はウトウトしていた。
 星和について俺たち3人が電車を降りようと席を立とうとすると、草原先輩が言った。
「今日は楽しかったー。恵のお陰だね。アリガトね♪ みんなでまた遊ぼうね!」
「『うん!』 『『ハイ!!』』」
 そして最後に、
「ありがとね。」
 俺に向かって一言、先輩はお礼を言ったのだった。

 その後名残惜しげなゲンキと別れた俺と恵姉は、家に向かって歩みを進めていた。
 今日は色々あって、ホントに疲れた。
 変に緊張してマトモに飯もノドを……。
「ぐぅーーっ♪」
 わー、まるで自我があるみたいな反応の速さ。
「…………。」
「えーっと、コロンブス寄らねェ? 何か1日中食事がノド通んなくてさ。腹へったわ。」
 恵姉は俺の言葉に若干不機嫌そうな眼差しをこちらに向けた後、ぼそりと零した。
「いーよ。アンタのおごりならね。」
「ええーっ、ワリカンにしようぜー。って言っても絶対恵姉俺より高いの頼むんだからさ。」
「ふん、そんなの当たり前でしょが。」
「はぁーっ……。」
 ったく、かなわねぇや。

 ちなみに、ゲンキは映画館ではほぼ寝ていたらしい。コロンブスで聞いた話によると、初めの方から既にイビキを掻いて寝ていたようだ。ケーキを食べたら途端に機嫌が戻った恵姉だったのだが、多分恵姉がイラついてたのもそれが原因じゃないかと思われる。ま、大方昨日の夜テンションが上がって眠れなかったんだろうけどね。
 つくづくイタイ奴だよ、まったく。 

       

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Neetsha