Neetel Inside 文芸新都
表紙

Sweet Spot!
14th.Match 《にっくにくにしてやん…うわまてなにをs》

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 目の前に広がる鮮やかなピンク色に、飢えた野郎どもの瞳はギラギラ血走っている。辺りに漂う芳しい香りもまた、一層彼らの欲望を加速させるようだ。
「ま、まだですか先生? まだおあずけさせるんスか? もう我慢できません!」
「もう、アナタたちったら……。もうちょっと大人しく出来ないのぉ?」
「死にそうなんです! ってか死にます! あ、あれっ、マジでやばいかも……。」
「あら、死んじゃう? でもだーめ! こういうのはねえ、順序ってのが大切なの。」
 さながらルパンを弄ぶ峰富士子がごとき坂下先生の小悪魔的じらしプレイに、対面で胡坐を掻く足をせわしなく揺すっているゲンキや宮奥さん達のごきげんもみるみる悪くなってきている。今日は女の子たちも一緒だと言うのにこのがっつきっぷり。すこしは自制する気持ちはないのだろうか? 
 ……ないだろうね。
 というか、何だよこの妖しげな感じは。確かただの健全な焼肉パーティーだった筈だが?
 試合を終えた俺たちは一旦現地で解散した。そのまま家に帰って風呂を済ませ、星和駅に再集合。見事集合時間の5分遅刻を達成する。ただこれは決して俺のせいではなく、頭に”め”のつく名前のお姉さまがお召し物の選別に少々手間取ったのがその主たる要因。
 ま、誰も信じてくれなかったんだけど。
 どうせお前がチンタラしてたんだろ、言い訳すんな、男らしくない……そんな辛辣な言葉を投げつけられた俺を誰か慰めてくれたら今すぐ泣ける。
 その後駅からいくつか電車を乗り継いで目的地に到着、こうして今に至るという訳だ。
「うぅうー、まだるっこしいのは嫌いっス!」
「うふふ、そう言わないの。じゃあ岩崎くん、開始のひとことをおねがいねー。」
 なんともチャーミングなほほえみを携え、先生は開会挨拶の全権をひょいとキャプテンに託した。あいかわらずの見事な振りっぷりだ。
「え、自分ですか? はいわかりました。」
 しかしながらキャプテンは何とも冷静な口調でそれに応えると、口元に拳を当てて大きく1つ咳をして立ち上がり、ゆっくりと特設ステージへ向かっていく。
 この落ち着きはもう流石としか言えない。どこまでいってもキャプテンはキャプテンだ。テニスコートを離れても一切立ち振る舞いや表情にさしたる変化がない。ひょっとして毎日座禅とか組んで精神を統一させちゃってたりしているんじゃないだろうか。
 俺のくだらない推論をよそに、ステージに到着したキャプテンは眼鏡のポジションをスッとやや上方にシフトさせると開会の挨拶を始めた。
「えー、今日はお疲れ様でした。男女揃っての団体ベスト4入りは7年振りとの事で、これもみんなの不断の努力の賜物ではないかと私自身思う次第です。しかし明日こそが大事な勝負どころですので、今日はあまりハメを外さずに、でもゆっくり疲れを癒してもらいたいと思います。簡単ではありますが、これ以上長いと俺の話を一切聞かずに皿の肉に心を奪われているそこの宮奥やら鬼木やらに憎まれそうなのでこの辺で。ではコップを持ってください。乾杯!」
「「「くぁんぱーい!」」」
 岩下先輩の音頭で焼肉パーティーは幕を開けた。学生時代からの坂下先生行き着けというこの焼肉店は、ガイドブックに載らない名店で客も完全予約制という、いわゆる食通だけが知っている隠れ家的なお店だ。本来ならかなりの高額になるはずだったのに随分と融通を利かせてもらえたようで、経営している方と先生との古くからの縁あっての今回の企画実現に、本当に感謝せずにはいられない。
 はじめは男子と女子で分かれて食べていたのだが、そのうち思い思いに友達同士に分かれてみんなが散らばっていった。明日から始まる個人戦の展望を語ったり、学校の話をしたりとかなり和気藹々といった雰囲気になっている。
 俺はと言うと元々女子部との境にいて、しかも隣が恵姉だったので別に移動する必要もなく恵姉と適当に喋ってはひたすら肉に舌鼓を打っていた。
 空腹を満たす至高の肉たちが俺を魅了して止まない。地球に生まれて本当によかった。
 ……だと言うのに、俺の至福のひとときを邪魔する女が横にいやがった。
「ちょっと功、食べすぎじゃない? わ、それレアじゃん! ちゃんと火いれなさいって。」
 何言ってんだ。絶妙な炙りじゃないか。究極のレアに文句をつけられる筋合いはないぞ。
「うっさい。」
「はぁーっ……。あんたお腹弱いんだから、しっかり焼かなきゃ明日痛い目みるわよ。」
 恵姉はサラダバーで取ってきた小皿一杯に埋まったライチを食べながら、俺にそう諭した。やれやれ、これだから貴女はわかっちゃいないんだ。
「あのね、これは牛だよ。しかも新鮮なね。これくらいで悲鳴を上げるほど俺のお腹はヤワじゃないから。大丈夫、鶏と豚はちゃんと炙ってるし。それにこの牛は絶対に俺を裏切らない気がするんだ。多分絶対。」
「何それ。どっちよ。」
「心配すんなって。ほら、恵姉もフルーツばっか食ってないで肉、肉。こっちもいいから。」
「ちょっ、バカ何してんのよ!」
 もういらないからとライチの皮を剥きながら拒む恵姉を無視して、俺が無理やり焼けた肉たちを恵姉のトレイにどんどん投下させていると、向こうの方から寺岡先輩がやってきた。
「よっ、おふたりさーん。ずいぶん仲がよろしいようでー。」
「いづみ! ちょっと聞いてよ功ったらひどいんだから。」
「はいはい何ですかお嬢様っと。」
 恵姉の愚痴を聞きながら俺の右に座ると、先輩はいきなり俺のトレイを奪ってストックを食べ始めた。あれれ、先輩ってこんな横取りキャラだったっけ。というかその肉!
「俺のとっておき! 何すんだァ!!」
「へへ、ざーんねん。あ、超美味しー。功一くんは焼き方が上手上手。えらいぞ!」
「なっ……!」
 じっくり時間をかけて仕上げたウィンナーを小憎らしいほどの笑顔で頬張る寺岡先輩は、そのまま俺を通り越して恵姉とペチャクチャはじめてしまった。しかも俺が網から出来上がった肉を釣り上げるたびにささっと横取りして行きなさる。
 これ何てプレイ? 姦しい2人の間に挟まって焼肉奉行に昇進ってか?……傷心だっての。
 
 美味しい時間は瞬く間に過ぎていく。
 2時間のパーティーは思った以上に短く感じた。「明日もガンバ!」と先生から締めの6文字を賜ると、決意も新たにみんなはそれぞれ帰宅の途へ着くことになった。
「楽しかったなー……。」
 不規則に揺れる電車の中、俺と恵姉は隣り合った吊り革に掴まっている。少し食べ過ぎてしまいお腹をさすっていると、誰に言うでもない小声で恵姉がぽつりとつぶやいた。何も確認できない真っ黒な窓の外に向かって薄ぼんやりとした眼を向ける恵姉を見ていると、なんだか心配になってしまった。
「どうしたの?」
 何て聞けばいいか分からず、とりあえずアバウトな質問を投げてみる。
「うん……。明日がヤマだなぁーって。まずリーグ戦でしょ? それがすんだら個人戦。ああこりゃ体力使うわー、って思ったらちょっと憂鬱にね。どの試合も全力で行かなきゃだし。」
 俺たちにはまだ時間が残されている。ここで負けてもまだ次がある。反省してリスタートできる。後悔しても、また笑えるチャンスが与えられるのだ。
 だけど、3年生はそうじゃない。
 1ポイントの重みが違ってくる。負けたら終わり。ラケットを置いて鉛筆を握らなきゃならなくなってしまう。後悔も反省もするだけで、決して次の試合に活かせない。高校での部活動生活から完全に足を洗わなきゃならないからだ。どんなに悔しくても、涙を流しても。
 だから。
「まあ自分の出来るプレーをやり切ってさ、少しでも先輩に笑っててもらえるよう頑張るだけだよな。とにかく、恵姉なりに精一杯やれば誰も文句は言わないよ。俺も応援するから。」
「功……。」
「それから今日はありがとな、苦しい時にリスバン投げてくれてさ。あれのお陰で試合勝てたようなもんだし。いやーマジで助かった。やっぱね、恵姉の声が一番力になるんだわ。ホント不思議なんだけどさ。姉パワーは絶大ってね。つーわけで、明日もいっちょ頼んだぜ!」
「……、オッケ。しょーがない、チキンな弟のためにアタシが応援してやんよ。」
 大げさにラケットを振り回す仕草を見て恵姉はやっと笑ってくれた。普段あれだけ怖くて強気な恵姉もここまで精神的に追い詰められるのが総体だ。俺も心してかからなきゃいけない。
 この時までは、そう思っていた。


「お前らちゃんと聞いてるか? ここはテストに出すからなー。いいか? ここが2重接線って言うんだよ、ぉーん。いいか? それからなァ、この点はでねェよ!!」
 時折女子に密かな卑猥視線を送るテクニックに定評のある数学担当の伊藤が板書されている摩訶不思議な図式やら数値を呪文のように唱えていたが、全く意識に届いてこなかった。
 そもそも聞く気がない。やる気なんか起こるはずがない。理由も単純。
 大会の幕切れ、それに尽きる。
 2日目のグループリーグ戦は先輩たちの必死の健闘も空しく3位に留まり、その後出場した個人戦では3回戦で第3シードペアの壁に跳ね返されてしまった。ベスト32を賭けた4回戦を勝ちあがって3日目に進んだのはキャプテンペアだけ。で、その試合を応援しに星和コートに行っているのは3年生メンバーのみ。
 そう。俺ら居残り組は、不運にも今こうして暗黒の金曜日を迎えてしまっているというわけなのだ。幸せ5連休計画はバリバリバリリと音を立てて砕け散ってしまった。
 それに俺には負けたことより落ち込む理由が他にある……と言うかこっちの方が全然凹む。
「イテテ……。畜生、またかよ……。」
 何とも不甲斐ないことに、勝負の2日目に食あたりを起こしてしまったのだ。
 
 その日の朝、悪寒と刺すような腹部の痛みで目を覚ました俺は、そのまますぐに臀部を手で押さえて千鳥足でトイレへ直行し、その後も下界とWCの悲惨な往復行動を繰り返した。もしおなかが痛くて目が覚めた経験が無かったなら、それだけで人として十分幸せな部類に入っているだろう。そう断言したくなるほど、強烈に猟奇的な痛みを伴う目覚めだった。
「ほら見なさい! だから言ったでしょうに! 何が『この牛は俺を裏切らない』よ。」
「くそ、何故だ……。炙りは完璧だったハズだ……っ!」
 いつもご飯は正座で食べるのが俺の流義なのだが、今日は無理だった。女の子座りが限界。
 妙な体勢のままご飯もまともに喉を通らない俺にあきれたのか、野菜味のふりかけが掛かったご飯をほおばっていた恵姉はピシャっと俺を叱りつけると、制服のポケットから徐にケータイを取り出し、何やらいそいそと指を動かし始めた。
「おい、いったい何を……してい…る……。」
「先生にオーダーの変更を伝えるの。功は応援に回ります、って。」
「バカ、やめっ……イテテ……らめぇ……ろ。」
「バカはアンタでしょ、バカ! そんな状態じゃチームに迷惑がかかるだけよ! 1試合目のオーダー提出まであまり時間ないんだし、とにかく送るだけ送らなきゃ。えーっと、宮奥さんには悪いけど今日は東さんと組んで出てもらったほうがいいと思います、と……。」
「うう……この鬼畜野郎め……アッー……! いかん、と、トイレ……!」
「あーあー……功のアホたれ。」
「功ちゃん、大丈夫? 今日試合出れそう? 無理はしてほしくないんだけど……。」
「は、はい何とか。ちょっと席外しますね。朝からどたばたしてすみま……アツツツ……。」
「こ、功ちゃん……。」
 向かいに座る希さんの表情はずっと曇りっぱなしだ。
 既にかなり厳しい腸内状況であることはわかっている。が、焦って動いて臨界点までお腹を怒らせないよう、慎重に体を水平移動させつつ今日ウン回目のトイレへ向かう。
 こうしてほとんどまともにご飯を食べられないまま、胃腸薬だけを飲んで俺は神崎家を出発したのだった。
 星和コートに着くと、恵姉の連絡を受けた坂下先生がまるで待っていたかのように駆け寄ってきた。一応俺の出来る限りの「おはようございます!」というカラ元気挨拶をして見せ、この窮地を乗り越えようとしてみたものの、あっさり演技は見破られてしまった。
 大根と言われても何も言い返せない。役者になる道はとりあえず無さそうだ。
「うん、駄目。団体の応援に回るのも禁止。個人戦も様子を見て出場させるかどうか判断するから、とりあえずお昼までは医務室で静かにしてることね。いい?」
「いくないっす! 全くいくないっす!」
「功!」
「い、いやもう全然痛くなくなってきてるし、団体も足を引っ張らない程度になら――。」
「い・い・わ・ね? んん?? 渡瀬くん、返事。」
「…………。」
 駄目だ。これ以上拒否したらどうなるか、先が何となーくわかる気がする。
 結局皆には先生から事情が説明されることになり、俺はベンチに向かうことさえ許されず医務室へと連行されてしまった。まだ試合も始まっていない中医務室のベッドにひとり取り残された我が身には、横になるという一択以外に選択肢があるはずも無い。
 俺は誰もいない場所で自らの昨夜の軽率な行動を省み続け、静かに泣いていたのだった。

「………ん、わ……くん、渡瀬くん。おーい。オイ、きたろうっ!」
「んん……。」
 ツンツンと頬っぺたに指が当たる感触がして目が覚めると、マネージャーが様子を見に来ていた。
 泣きつかれてなのか薬の影響なのかわからないが、俺は眠ってしまっていた。コートで駆け回る選手たちや建物の影からして日がかなり高くなってきているらしく、結構な時間を眠りに捧げていたようだ。
「体はどう? 今団体戦が終わったトコなんだけど……。」
「え? ああ……今の――。」
 声が掠れているし視界が妙に霞んでいる――――そっか、俺泣いてたんだっけ。
 そこまで声に出して初めて、俺は自分の先の行動を思い返す余裕が出てきたのだった。
「い、今のところは薬が利いてるみたいだ。痛くなくなった。ホントに大丈夫。」
 マネージャーに気づかれないように、かがんで大げさに咳払いをすると同時にシャツで顔をごしごし擦って、恥ずかしい証拠の隠滅を計った。
「そっか。とりあえず一安心だけど、無茶は禁物ですからね。」
「お、おう。」
 マネージャーは俺の顔を見ても特に気にする様子もなく、体調の回復を喜んでいる。とりあえずは危機回避に成功したようだ。
「そうだ、団体だ。結果はどうだったの?」
「あーっと、ねぇ……惜しかったけど、3位入賞でした。私立の壁はやっぱ高かったよー。」
 首を降ってポニーテールをひらひら左右に動かし、マネージャーは唇をかんだ。優勝は市長杯同様城西で、準優勝の氷川とともに私立勢でワン・ツーを占める結果だったらしい。
「みんなのとこに戻ってもいいかな?」
「うーんと……。渡瀬くんが良いって言うなら戻っていいと思うんだけどね。ちょっと待ってて、先生連れてくるから。」
 医務室からの脱出を許可されたのは、その後しばらく経ってからだった。各校が昼食時間に入り、俺も少しばかりお腹が空いてきた頃に先生がやってきて、OKを出してくれたのだ。
 ベンチに戻るとブルーシートでみんなが輪になって弁当を食べていた。みんなお腹がすいているのか、真剣に首を下げて赤やら黄やら緑やらのおかずに熱中し、箸をつついている。
「ふーっ……。」
 うわー、どんな顔して入っていけばいいのかわからないぞ……。
「おお渡瀬! もういいのか?」
 そんなことを思いあぐねてベンチの前でしばらく臆病風を吹かせていると、真っ先に俺に気づいたキャプテンが明るく声を掛けてくれた。キャプテンの声に弁当に向かって視線を下げていたみんなもばっと顔を上げる。
 おいおい、どんだけ瞬間”功”視聴率だよ、なんつって……サーセン。
「は、はい。お陰でなんとか復活できました……。」
「「「おおーっ……!!」」」
 途端、何とも不思議な歓声が上がった。『おおーっ……!!』って、以降を埋める台詞は何でしょうか!? 気になるじゃないスか。
「渡瀬ちゃーん!! おかえり。待ってたんだぜこんちくしょーっ!!」
 それに続いて耳慣れた低い声が届いてくる。昨日勝利の喜びを一番に分かち合った人の声。
「すみませんでした。迷惑掛けました。」
「はいはい気にしない! これから個人戦なんだし、気持ち切り替えてこうさあ!」
 相変わらずのテンションで、から揚げを咥えた宮奥さんはそう言ってのけてくれた。
 その後、俺はまず急遽団体戦のバトンを引き受けてくれた東さんに感謝の気持ちを伝えに向かい、先輩から試合の話を聞かせてもらって強豪との健闘を労い、昼食をとった。
 お腹に影響が出ないよう質・量を加減乗除しながらモノを摂取し、なんとか午後からの試合に出れたところまではよかったのだけれども――――。


 初めに言ったとおりの結果になったわけで。
「先生、すみませんがトイレに行ってきてもいいですか?」
「ん、ああ。けど今大事なトコだからさっさと戻らなきゃ痛い目見るぞー。」
 ……はーい。
 席を立つと、教室内の雰囲気がわずかに変化した。どうやら笑われてしまっているらしく、クスクスと言った類の音たちがこちらに向かって漏れてくる。
 まーこれで本日3回目だもんな。いい加減うんこ自重しろって言いたいわけだ。
 でもだからといって席を立つのを我慢できるほど、このマイ・ストマック・エイクは生易しいもんじゃあないんだよ、わかってくれろ。 
 とまあそんな思考を生み出せるくらいに、みんなから受ける粘りつくような視線に俺はもう免疫がついてしまっていたのだった。
 別に日に何回便座に座ったっていいじゃない、人間(ry。

 長い長い1日の授業が終わった。
 今日は3年生もいない為練習は休みだ。コートへ向かって応援したいのも山々だったが、既に日の傾いたこの時間からだと会場へ行ってもコート整備をしている姿くらいしか見れる景色がないだろう。すべては明日のミーティングで明らかになるということだ。
「ハライタ人はおとなしく帰るとしますかね。」
 折角の部活オフを満喫しない手はないから、とゲンキは言い残してさっさと帰ってしまったし、こうして教室でボケッとしていても仕方ない。いつもなら恵姉たちと帰るところだけど、部活が無い以上それも無理だ。
 カバンを手にとって椅子から立ち上がる。
 と、ふと俺の頭の中に先日の件についての記憶がフラッシュバックしてきたのだった。
「あー……思い出した。」
 
 
 ……やまと、なでしこ。

       

表紙

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Neetsha