Neetel Inside 文芸新都
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「だからぁ、何度も言うように、僕は全然やってないんですよ」
「あのねぇ、こちも何度も言うがね、被害者の女性の方が、確かにあなただって言ってるんですよ」

ここは地獄の駅員室。俺は、痴漢の疑いをかけられた挙句、電車を降ろされた。
俺の旅が、こんな形で終わりを告げようとは思わなかった。
電車を降ろされるときのあの乗客たちの視線……
よもや車内で「でらべっぴん」を読んでるようなハゲ親父にまで軽蔑の視線を浴びせられようとは……

「とにかく、僕はやっていません。その証拠に、僕は彼女のパンツの色さえ知らない」
「……いいですか、お客さん。満員電車の中でどうやってパンツを見ながら痴漢するんです?」
「ハッ。知りませんよそんなの。それこそ、痴漢に聞いてください。
僕にもね、好みのパンツってものがあるんです。それすら知らない人のパンツなんて、
とてもじゃないが触れませんよ」
「あなたも強情ですね。被害者の女性は、あなたに胸も揉まれたとも訴えているんですよ」
「僕は彼女の乳頭の色だって知らない」
「……どうも貴方の発言を聞いていますと、失礼ながら痴漢以外にも余罪がありそうですね」

なんと失礼な駅員だ。性の乱れが問題視されている今日、
俺ほど貞操観念を確立した若者はいないというのに。

「まっ、後は警察にでも言って話してくださいよ」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!俺には旅を続けなければならない理由があるんだ!」

終わった…もはやこれまでか。俺は犯罪者の烙印を押され、自分が何なのかさえわからないまま刑務所へ移送され、
でもって身体検査の時に改造人間であることがばれて、危険視とかされて死刑にされてしまうんだ。

健二が自分の人生の終わりを見たその時だった。

「駅長、本当の犯人を捕まえたというお客様が、お見えになられました」
「なっなに?マジでか!?」


神様は、哀れな僕を見捨てていなかった。

       

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