Neetel Inside 文芸新都
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第二話「Bad Mouth」


 私はときどき人に対して口が悪すぎる時がある。それは私自身は人に理解されるためだと思っている。本当に私自身を理解している人であればそういった表面上の悪口とかは気にしないだろうし、そうでない人ならばその悪口によって関係が切れてしまっても良いと思っている。そして私はときどきそれによって友人から叱責を受け、そして柄にもなくそれによって傷ついたりする。それならば最初からそんな口の悪さなんて捨ててしまえばよかったと思う。そう思いながらいつも通りに歯を磨いていた。


 私は以前から少し唇が厚いのが気になっていたから丁度良かったと思っている。そのせいで口紅を塗ると唇が目立ちすぎてよくなかったのだが、その日始めて口紅を塗って外へ出た。

 学校へ着くと一限からの授業は無いのでホールへと向かう。いつもならそこへ友人の誰かがいるのだけど今日はまだ誰も来ていなかった。私は2限目の予習をしているとそこへ真美が来た。

 「おはよう」

と声をかけたところ真美は挨拶もなしに私の顔を見て驚いて言った。

 「あれー?口紅付けてる?珍しいじゃんあれ?ちょっと整形とかした?」

いつもだったら私はこれに対して皮肉の一つくらい言ってみるつもりだったはずだ。しかし口から出た言葉はちがった。

 「そんなわけないじゃん。ちょっと痩せただけだよー」

と、言った後で私は驚いた。いつもの自分とは違いこんな軽快な調子で応える自分自身に驚いた。

 「マジで?ありえなくない?というか凄いイメチェンじゃない?」

 私はいつもならこんな風に尻上がりな調子ばかりで言われるとだいたい対応をしきれなくなってくるのだがこの時はそれに全て応えていた。私は飛び出してくる私自身のことばに追いつけないまましばらくその様子を見守っていた。だんだんと登校して来た友人が増えてきてめずらしく私はたくさんの友人に囲まれていたが私はその狂乱さながらの様子に一人冷めていた。しかし今この口を出ている言葉は誰のものなのだろうか。

 その時の話題は真美に彼氏ができたとか今日の授業の先生が悪いとかそういった話だった。私はこの話だけよく憶えていたのはその彼氏がそこに居たからと、次の授業がその悪い先生だったからだ。その先生は生徒の欠点を見つけるたびにそれについて皆の前で話す。そして更に悪いところが以前見つけた欠点と新たな欠点を無理矢理こじつける。私は毎回のように「それだから君はよく口答えするんだよね」と言われる。その日の授業では私が当てられた問題がわからなかったのに対して

 「そんなこともわからないの?」

と言われた。普段の私だったら絶対に何か言い返していたと思うがこのときは素直に謝っていた。先生はその後は何も言わなかった。

 私はこうやって自分の口が何か騙っている間にいろいろなことを考えていた。もしかしたらこういう風に生きたほうが生き易いのではないかと、そしてこうしている方が当たり前で人間として普通なのではないかと考えた。

 昼休みの時はまた同じようにホールで友人たちと昼食をとった。いつもと違うところは真美の彼氏がその中に入っていることだった、そして彼は早くも私の友人達とうち解けていた。私も彼と何か話していた、あまり近くに寄られるのが嫌だったが口は私の考えをよそに彼を引きつけているように感じた。

 その後の授業はディベートだった。いつもはディベートは得意だったが今日はなぜかあまり話すことは無かった。他人の意見に賛同しているばかりであまり自分のことは口にしなかった。

 放課後になり、友人達と別れて帰路を歩んでいると真美の彼氏の姿があった。彼が言うには真美を捜していたというのだが、私と話しながらいっしょに歩き続けている。私は彼に対して聞きたいことがたくさんあったがそれに対して口は他のどうでもいい話をしつづける。そのうち彼は私に向かって立ち止まり私の唇へと彼の唇を近づける。それがくっついた時にも私は口のやっている事は私のしていることではないと考えていた。やはり口が他の口を引きつけているんだと思った。


 帰ってすぐ真美から電話があり、彼と何かあったのかと聞いてくる。私の口は最初は否定していたがそのうち事実を認め始めた。そして真美は怒りながら電話を切った。私はたぶん今の友人達との仲が無くなってしまうのではないかと思った。

電話を切った後の静寂を破るように口が独りでに語り出した。

 「私のやっていることはあなたと同じだよ。私だって人に理解してほしい時もあるしそうじゃない時もある。だってこの状況ってあなたが望んだことじゃない?」

       

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