Neetel Inside 文芸新都
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「どけぇッ」
 一人目。首を飛ばす。ドーガ軍、八万。だが、怯むな。俺の騎馬隊は、いや、グロリアス軍は勇猛果敢だという事を、エクセラに見せ付けろ。
 偃月の陣を組んだ騎馬隊が、敵と押し合う。天は矢で覆いつくされていた。万単位となれば、前衛でも分厚い壁だ。奥の方の敵を、矢で減らす。俺の軍の後方は歩兵で固めてある。盾で矢を防ぐためだ。
 剣。はじき返し、首を斬り飛ばす。次々と敵が群がってくる。血が騒いでるのがはっきりと分かった。やはり俺は。
「戦が好きだッ」
 目の前の敵の心蔵を貫いた。剣が抜けない。
「構うものかッ」
 そのまま力で敵の死体ごと振り回す。死体で敵をなぎ払う内に、剣が抜けた。返しざまに敵の首を飛ばす。急所を貫く。
 戦況を確認する。ドーガは横陣だ。大軍でもある。逆V字型の偃月を、囲うように迫ってきていた。
「前衛陣、下がれッ。陣形を変える、鶴翼(かくよく)だッ」
 旗を振らせる。兵たちが敵をさばきながら、陣を変えていく。
 鶴翼。偃月とは逆に、V字型の陣形だ。総大将が最奥に行くため、守りに強い。そしてV字型の穴に、敵が入り込んでくる。そこを両脇から締め上げるのだ。
 下がる。背は見せない。デンコウがまだ戦えると言わんばかりに、気迫を漲らせているのだ。敵が迫ってきた。矢を射て、馬から落とす。
 鶴翼の陣。間髪入れず、敵が入り込んできた。
「両脇から締め上げろッ」
 騎馬が入り乱れた。敵が混乱している。
「ドーガ、こんなものかッ。数だけで戦には勝てんぞッ」
 剣を構える。乱戦から抜けてきた敵を、一人、二人と斬り殺した。すでに鎧は返り血で真っ赤だ。戦をしている。心が燃え盛っている。
 敵の動きが明らかに乱れていた。好機。攻め上げる。
「突撃だッ」
 剣を天に振り上げ、一気に振り下ろした。
「死にたくなければ、道を空けろッ」
 デンコウが駆ける。側に迫り来る敵の首を次々と飛ばす。だが、出過ぎない事だ。敵は大軍なのだ。飲み込まれる。士気をもぎ取る程度に食い込めば良い。
「何をやってる、反乱軍ごときに怯むなッ」
 ドーガの声。近くに居る。
 アイオンが今、内通の機を作っているはずだ。それまで、戦い抜く。ここで敵を完膚なきまで叩きのめせば、内通も成功しやすくなる。劣勢では、見えるものも見えなくなるのだ。
 槍。頬を掠めた。すかさず首を飛ばす。続いて矢が三連。二連は首をひねってかわし、最後の一矢を手掴みして射返した。
「偃月の陣、ラムサスを踏み潰せぇッ」
 ドーガが陣形を変える。
 逆V字型だ。ドーガが先頭で突撃を仕掛けてくる。
「前衛陣、一旦下がるぞッ」
 固まる。反転。駆ける。土煙が舞い上がった。ドーガが偃月の陣で突撃を仕掛けてくる。
「歩兵・槍隊、槍を前へ突き出せッ」
 歩兵の背後まで駆け抜ける。槍兵が真っ直ぐに槍を突き出した。これで騎馬が怯む。
「騎馬隊、陣を組み直せッ。偃月だッ」
 旗を振らせる。即座に陣を組んだ。敵がわざわざ前に出てきた。各個撃破のチャンスだ。確実に潰す。敵は歩兵の槍で勢いが半分死んでいる。臆病者が。そんな兵で、戦に勝てるものか。
「突撃ッ」
 駆ける。歩兵の脇を駆け抜けた。先頭。ドーガの顔がはっきりと見えた。
「ラムサァスッ」
「ドーガッ」
 剣と戟がぶつかり合った。

       

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