Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      

 エクセラ城内。兵たちがひざまずいている。
 先王であった愚物は殺した。これからはこの私が王だ。これからエクセラは生まれ変わる。私が変えてやる。
 すでに宮殿内は私の腹心で固め、新体制を築き上げていた。あとは、世を平定するだけだ。しかし、これが最大の難関だろう。反乱軍は絶望的とも言える兵力差を覆し、イドゥンにまで迫ってきたのだ。
 ここからは波乱だった。神王を殺して私が王となり、間髪入れずに戦場へと走った。イドゥンを落とされれば、エクセラは落ちる。死活問題だったのだ。だが、反乱軍・・・・・・いや、ラムサスはイドゥンで戦を仕掛けてこなかった。それ所か私を主殺しだと罵り、大義を掲げてきたのだ。あの戦馬鹿のラムサスがだ。最初は何を言っているのかと思ったが、寝返ってきた兵たちの心を一つにまとめるのが狙いだったのだろう。しばらく陣に留まった後、ラムサスは然るべき位置まで軍を下げた。
 ひとまず、これで状況は落ち着いた。イドゥンを境に両国が睨みあっている形だ。ここからは持久戦になる。互いに人を集め、兵を鍛え、将を育てる。エクセラの国力は一気に衰退したが、まだイドゥンがある。ここは速やかに、改革を終えることだった。
「ルース様、ドーガはどうなさいますか」
 ドーガ。こいつのせいで、エクセラは衰退した。火計を見破ることが出来ず、戦に敗れた屑だ。ある日、馬も無しに大やけどを負って帰ってきた。本来ならば生かしておく価値もない男だが、有能だった。そして、エクセラには有能な人間が少ない。牢獄にぶち込み、ラナクに監視させていたのだ。
「本人は何と言っている」
「命さえ助けてくれれば、身を粉にして働く、と」
「フン、下衆が。ラナク、お前はあのようにはなるなよ」
「はっ」
「まぁ、そこまで言うなら助けてやっても良いだろう。ラナク、お前の下につけようと思うが、どうだ?」
「王の仰せのままに」
 とにかく、今は一刻も早く改革を終えることだった。国中に触れを出し、身分を問わず人を登用するようにした。兵力も増強し、武具も次々と生産させている。
「ここからは睨み合いになる。ドーガのような間抜けでも、必要な時が来るかもしれんからな」
「はっ」
「兵の補充はどうなっている?」
「現在、十八万まで回復しております」
 少ない。反乱軍は二十万の兵力を擁している。いくらコチラにイドゥンがあるとしても、守るだけでは世を平定する事は出来ないのだ。
「二十五万だ。急げ」
「ですが、将軍がおりませぬ」
「登用しろ。能力があれば、身分は問わん」
「はっ」
「内政は私一人で十分だが、戦に関しては代役が欲しい所だな」
「ラムサス様がおられれば・・・・・」
 またこれだ。ラナクは心底、ラムサスを崇拝していた。師匠だから、という事もあるだろうが、軍神の名に畏怖の念を抱いている節もあった。
「あいつはすでに敵だ。現に、私を主殺しとして罵ってきた。すでに友人でも何でもない。お前も頭を切り替えろ」
「・・・・・・はっ」
 ラムサスがおらずとも、戦は出来る。私一人で、エクセラを天下へと導く。だからこそ、神王を殺して私が王となったのだ。
「まずは人だ。それを最優先事項とし、兵を鍛えろ」
「・・・・・・わかりました」
 ラナクの声に力は無かった。

       

表紙
Tweet

Neetsha